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あなたと生きて  作者: 口羽龍
第5章 中学校(下)
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 浩一はその後も車窓を見ていた。この先は全く行った事がないので、ここも見飽きない。静岡駅を過ぎると、大きな山が見えてきた。富士山だ。富士山は日本一高い山で、静岡どころか、日本のシンボルだ。だが、まだまだよく見えない。その先に行けば、見えるんだろうか? 浩一は富士山を生で見た事がない。とても楽しみだな。


 興津駅付近から、東海道本線は海沿いを走っていく。この辺りはさった峠で、東海道の難所として知られているが、同時に富士山の絶景が見られる名所としても知られる。浩一はもちろん、ほとんどの生徒は知らなかった。列車は海沿いを進んでいく。とても風光明媚な場所だ。浩一は車窓から見える海を見ていた。その先を見ると、富士山が見える。これが富士山なのか。浩一は生で富士山を見て、興奮していた。これだけでも興奮するのに、東京はもっと興奮する場所なんだろうな。とても楽しみだな。


 富士駅に近づくと、左手の車窓に富士山が大きく見えてきた。富士山の大きさがわかる。富士山はやっぱり日本一の山なんだな。そう思わせる風景だ。誰もがそれに見とれていた。


 函南駅を出ると、長いトンネルに入る。丹那トンネルだ。それまで東海道線は、御殿場経由だったが、丹那トンネルが開通したことによって、こっちが東海道本線になり、御殿場経由の線路は御殿場線となった。昔は複線だったが、今は単線だ。浩一はトンネルを見ていた。その先を出ると、温泉で有名な熱海だ。ここを生で見るのも楽しみだな。熱海の温泉にも行ってみたいな。できれば、誰かと結婚したら行きたいな。


 その先には平野が広がっている。いよいよ関東平野には行ったのだ。そう思うと、東京が近づいてきたと思える。そう思うと、浩一の気持ちは高ぶった。きっとその先には素晴らしい東京の光景が見えるんだろうな。どんな感動が待ち受けているんだろう。わからないけれど、忘れらないんだろうな。


 しばらく走っていると、いくつもの線路が見えてきた。それを見て、生徒は東京に来たんだと実感した。東京はすぐそこだ。その先はどうしよう。まだ決めていないな。


 夕方、列車は東京駅に侵入した。彼らは客車から降り、空気を吸った。これが東京の空気なのか。決してよくないけれど、これが都会の香りなんだと思った。


「ここが東京か」

「すごいなー」


 みんな、東京に興奮していた。そして、ここに住みたいと思う人もいた。浩一もまたその1人である。

 千沙は思った。これが浩一の憧れていた東京なのか。なかなかいい場所だな。どんな夢があるんだろうか?


「これがあこがれていた都会なんか」

「すごいなー」


 浩一は、ここに住み、豊かさを手に入れる自分を思い浮かべた。そして、多くの子供や孫に囲まれたいな。


「いつかここに住みたいと思っとるよ」

「そっか。じゃあ、頑張らんとな」

「そやね」


 浩一は笑みを浮かべている。そこまで言うのなら、もっと頑張っちゃおうかな? そしてもっとレベルの高い進学校に行くんだ。そして、東京の大学を目指すんだ。


「とりあえず、東京に来たって事を喜ばんと」


 浩一はそれ以上に、東京に来た事、そして何より、一緒に修学旅行を楽しんでいる事を喜ばないと。小学校の頃の修学旅行とは違って、今回はちゃんと来れた。誰も邪魔なんかしていない。まっすぐ行けたのだ。そして、この修学旅行で大きな目標を見つけ、それを将来の糧にするだろう。


 生徒はみんな、考えていた。判別行動でどこに行こうか? だいたいは決めてあるけれど、行きたい場所がどんどん思いつく。ここも行きたいな。あそこも行きたいな。行きたい所がいっぱいだ。浩一もまたそうだ。浅草寺や渋谷に行こうと思っていたけれど、上野動物園もいいな。


「うん! これからどこに行こうか、考えんと」

「浅草寺に行きたいと思わん?」

「うん! 行きたいね!」


 生徒の一部は、浩一と同じく浅草寺に行こうと思っている人もいる。彼らは楽しそうだ。きっと、自分たち同様いい思い出を作るんだろうな。


 中学生たちは、赤レンガの東京駅を進んでいた。その先は都電に乗って旅館に向かう。都電はかつて、都内に網の目のように走っていた。だが、次々と廃止され、現在は早稲田と三ノ輪橋を結ぶ通称・荒川線のみとなってしまった。そして、東京にはそれに代わって、地下鉄が網の目のように張り巡らされている。だが、その頃はそんな未来が想像できなかった。そして、さらに宅地化が進み、都会がこんなに広くなるなんて、予想していなかっただろう。


「俺は上野動物園やね」

「そこもええね!」


 浩一は、上野動物園もいいなと思っていた。だが、だいたい考えてある。もう変更はできない。もし東京に住む事になったら、上野動物園に行ってみようかな? そして、いろんな動物を見るんだ。天王寺動物園よりも多くの動物がいるんだろうな。もっと楽しいんだろうな。


 生徒たちは東京駅を出た。目の前には都電がある。


「とりあえず、旅館に行こう」

「そやね!」


 みんな楽しそうだ。これからの東京の修学旅行を思い浮かべている。


「行こう行こう!」

「うん!」


 生徒たちは、臨時の都電に乗って、宿泊する旅館に向かった。

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