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黒炎の魔剣士は勇者になりたい!  作者: 福田 なる
深淵の果てで大樹に誓った約束を
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やはり女はゴミだ

「何があった!? 魔物か?」


 すぐに駆け付けきたのは父だった。それに続いてゾロゾロとメイドが集まってきた。


「何ですか……これは?」


「いや……分からない」


 メイド達は困惑している様子だ。一方で父は困惑しているように見えるが冷静に当たりを確認している。

 魔物か?と父は言っていた。それに魔術も使えた。やはりここは地球ではないどこかで間違いないらしい。

 だとしたら"異世界転生"じゃなくて"異世界召喚"が良かった。勇者として召喚され、最強の力を見せつけ、チヤホヤされるのは僕の憧れだ。


 父は「まさか」と呟き炎系統魔術の本を手に取り、目線を合わせるようにしゃがんだ。


「お前まさか……」


 僕は父の目を見て小さく頷いて見せた。

 僕は褒められるんじやないか、どやんな褒め言葉を言われるのだろうと期待していたが実際は違った。

 父は頭を抱え重い表情だ。


 なぜそんな顔をするのか理解出来なかった。メイド達も僕に軽蔑の眼差しを向けていた。


「えーと……父さん?」


「化け物め……」


「え?」


 そうだ、勇者のように力を見せつけて称賛されるのは物語だけなんだ……



 父は建築士に依頼し、壁を修理させていた。

 僕は色々な感情が混ざっていた。褒められるわけでもなく、叱られるわけでもない。ただただ軽蔑されるだけだった。

 もうこの暁月家に居場所はないのだろうか。


「自由になったし、精々するぜ」


 強がってみたがあまり傷は癒えなかった。

 なぜ殺したり、追い出したりしないのかが不思議だった。戦争の道具にでもされるのだろうか。

 まぁ魔術は続けるけどね。

 少しだけやり返しも考えたがまだ小さな子供なので飯を提供してくれる人が必要だ。それに父が死ぬとここの領地経営は僕が継がなければならないが間違いなく無理だ。大人しくしておくのが賢明だろう。



 今日もまた魔術を練習する。

 魔術や剣術などあらゆるものには段階があることが分かった。

 初級、中級、上級、聖級、神級の五段階に分けられ、初級、中級は冒険者をやる上で問題ないレベル。上級は上位数パーセントしかいない高レベル。聖級は国が扱うレベル。神級はもはや人間じゃないレベルらしい。

 まだ僕は初級魔術しか使えないので初級に値するのだろう。

 初級なのになんで軽蔑されるんだ?



---



 それから三年が経ち、母が帰って来た。普通の親子なら三年ぶりの再会を喜ぶのだろうが僕はこいつを母親だと認めていない。



 そして魔力測定する時期になった。

 この国では五歳になると魔力測定が義務付けられている。


「次の方どーぞ」


 父と教会に来ていたが父はずっと無言だった。


「はい僕、ここに手をかざしてね」


 教会の方が水晶を指しながら言った。魔力量を数値できるらしい。


「はい、魔力量0ですね」


「は? そんなわけないでしょ! この子は魔術が使えるんですよ!」


「夢でも見たんじゃないですか?」


「いや……私も結花も魔力なしでそれで……え?」


 父は困惑している様だ。

 そして僕は軽蔑されている理由をやっと理解した。

 おそらくこの世界には、魔力持ち(マジオン)と魔力なし(ノーマジ)の人間がいるらしい。

 そして僕は魔力なし(ノーマジ)の間に生まれた子供なのに魔術が使える。

 魔力なし(ノーマジ)の間に生まれた子供が魔術を使えると禁忌に触れるとか、呪われるとか、もしくは、僕が呪われた子供とかそういうことなのかもしれない。


 帰りの馬車ではより鋭い軽蔑の眼差しを父にずっと向けられた。



 五歳になって魔術を頻繁に練習するようになった。

 ある日いつも以上に魔力を使い過ぎてしまい、体に力が入らなくなってしまった。貧血のような感覚だった。

 一日寝ても和らいではいるが治ることはなく、魔力不足の症状ではなく、本当に貧血では?と思った。

 フラフラの状態で壁を伝いながら歩くと路地裏で人が殺されている現場を見てしまった。

 不思議とその光景に何も思わない、むしろ体がその死体へと引き寄せられた。

 流れている血に手をかざすと掌から血が吸い込まれ、貧血の症状は改善された。

 いったい……なんなんだ?


 屋敷を自由に出入り出来るようになり、庭で魔術を試す。

 広い場所で魔術を使って見たかったのでワクワクしていた。


 「すぅぅふぅぅ」と呼吸を整え森の方に向けて手を伸ばした。

 そして魔力を掌に集中させたその瞬間。


「……いたいっ」


 掌に燃えるような痛みが走った。かなりの激痛だった。例えるなら夏の猛暑日の100日間分の日焼けを一気に喰らった感じだ。

 そうか日光か……。

 急いで屋敷に戻ると痛みがゆっくり引いていった。



 町を散歩していると庭で魔術を練習する僕と同じくらいの年の平民の子供がいた。

 やめといた方がいいぞ〜


 魔力と日光は何かしらの反応を起こす物だと考えたが……


「炎の精霊よ、我が声に応じ敵を焼き付くせ! 火球(ファイアーボール)


 小さく弱々しい火の玉が壁に当たりポンっと消えた。

 え、火球(ファイアーボール)って普通あんななの?! いやそんなことよりあの子の手は焼けていない?!


 黒い炎と日の下で魔術が使えないのは僕が特別らしい。

 結構不便だな……

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