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黒炎の魔剣士は勇者になりたい!  作者: 福田 なる
深淵の果てで大樹に誓った約束を
3/40

僕の死は無駄だった?

 僕は、漫画やラノベにある勇者というものに憧れている。異世界転移して、「勇者様、どうかこの国をお救い下さいってね。



 僕はアニメを観すぎて受験に落ちた。勉強のコツを掴んだところで勉強をしないと意味はない。中くらいの私立なら余裕で受かる学力はあったが、私立は金がかかりすぎる。浪人して国立に行った方がマシだ。そこで僕は1年間、浪人生(ニート)になることにした。


 うちの妹は中学1年生になったが、どうやら反抗期らしい。毎日、親といがみ合い、毎日のように二人の怒鳴り声が聞こえる。もちろんそんな中で勉強など出来るはずもない。

 机に向かおうと思っても怒鳴り声で集中出来ない。イヤホンをしても貫通してくる。

 そんな日々が続いた。

 

 ある日の夕飯時のリビング。静かな家庭に不穏な火種が燻っていた。


「なんであんたは毎日毎日、遅刻遅刻サボりサボりって!何のつもり!」


「お母さんには分からないの遠距離通学の辛さが!」


 妹は中学受験をし、見事に合格して見せた秀才だ。僕も6年前に同じところを受けたが見事に落ちた。僕だったら毎日張り切って学校行けるのにな……。


「あんたが選んだんでしょ!」


「お母さんが起こしてくれないんでしょ!」


「起こしてるわよ毎日毎日!」


 毎日こんな調子だ。聞かされるこっちはたまったもんじゃない。間に入って止めたいが、僕が入ったところで火に油を注ぐだけだ。


「このクソニートなんか学校にも行ってないんだよ?」


 妹に指をさされ、なぜか矛先をこちらに向ける。


「今勇は関係ないでしょ! それに勇は学生時代は毎日ちゃんと行ってたでしょ?!」


「それは今関係ない!」


 なんだこいつは……なぜ僕を巻き込もうとする?


「学生時代、女と遊びまくったから大学落ちるんしょ!」


「は?」


 それは僕にとってNGワードだ。

 僕の中で抑えておいた紐の切れ目がプツンと切れた。気づくと手には無意識に力が入り、箸は折れて、掌からは血が流れる。


「上等だ!ごらぁ!ぶっ殺してやる!」


 キレすぎて頭がはち切れそうだった。

 僕は机を倒し、乗り越え、妹の頰めがけて右拳をぶっ放した。

 妹は1メートルくらいぶっ飛び、口から血が出ている。

 一瞬やり過ぎかな?と思ったがそんなことはない。まだ死んでない。

 もう一撃お見舞いしてやると思ったが、さすがに母に止められた。


「落ちついて勇!」


「分かった……」


 僕は怒りを抑えるため、深く息を吸った。すぅぅぅぅ……

 次の瞬間……


 ん?胸の辺りから違和感が……なんだろう。

 状況を確認しようと下を向くとそこには包丁で妹が自分の胸に刺しているのが見えた。

 どういうことだ?理解出来ない。

 自分の脳がこの状況を拒否する。

 脳が理解したくないと拒否しても体は反応する。

 体が包丁が刺さっている胸の辺りから段々熱くなってくる。

 熱い……。空気が冷たい……。

 体が熱くなり、周りの空気が冷たく感じる。


 僕はなんでこうなったんだっけ……思考が出来ない。あぁそうだ……妹に女遊びって…………は?ふざけんな僕が女遊びするわけないだろ! だいたい、僕はこんなことでキレないぞ! そうだ……あの女が悪い。あいつだ……すべての元凶はあいつだぁぁああ!!

 りぃぃいいおおおお!!(莉央)



 だんだんと周りの人の声が聞こえなくなる。

 でももしかしたら、これで異世界に勇者として召喚される?……。




 期待して目を開ける。


 そこには二人の男女が僕を覗いていた。

 二人は巨人のように大きかった。

 自分の手を見ると毛穴一つない小さい手だった。

 一瞬怯えたが二人が自分の両親だとすぐに理解した。



 二人と何人かのメイドは意味の分からない言語で喋っていて何一つ理解できない。


 両親やメイドから何か不思議な目線を感じる。

 あ……泣いてないからか。まぁいいや。

 とりあえず僕は、この人生では適当に気ままに生きよう。

 真面目に生きても大切な物を失う。

 それと……女には気を付けろ! これ大事。



---



 生まれて半年が過ぎた。

 父親の名前は暁月(あかつき) (しゅう)。母親は結花(ゆか)だ。

 なんで一歳でこんなことを理解出来るかは意味不明だ。

 転生というのはこんな物なのかな。


 暁月家は貴族らしい。

 暁月家にはたくさんのメイドがいてすべて女だ。

 毎日のようにメイドが話しかけてくるのである程度の言葉は理解出来るようになった。

 ただ喋ることができない。

 よくメイドが口を揃えて言っていたことがある。


「泣かない子」


 赤ちゃんってどうやって泣くんだ?


 そして一番気に入らないのはこの母親だ。

 僕の持ち方明らかにおかしくないか。片手で荷物のように持っている。

 間違いなく僕じゃなかったら死んでるね。

 紙一枚を手に持ち、ニヤついている様子。何が書かれた物なのか検討もつかない。

 その以前にここは地球なのだろうか。


「抱き方そんなんじゃ駄目だろ?」


 話しかけてきたのは父親だった。


「じゃああんたが抱いてみなさいよ」


「はいはい」


 母は父に雑に渡したが父は優しく両腕を使って抱いてくれた。

 首に力を入れなくていいってこんなに楽なのか。

 てかなんでこの女と結婚したんだよ。チェンジで!


 現実的には経済や親関係で結婚しなくてはならなかった、とかそういうこともあるかもしれない。

 二人の結婚に口出しを出来る立場ではない。

 それでも僕の扱いはちゃんとしで欲しい……。

お読みくださりありがとうございます。もしお気に召しましたら、感想や評価を頂けますと幸です。

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