この世界は狂ってる
僕は高校二年生の青春の真っ只中だ。
そう僕は恋をしている。
僕は勇気を出して「一緒に帰りませんか?」と声をかけると応じてくれた。
会話はかなり弾んだ方だと思った。
陰キャでジミな僕にしては頑張った方だと思う。
僕は陰キャな上に頭も運動も普通だ。
実際は彼女のコミュ力が高く、自分はそれに乗っかっていただけに過ぎないが広げようと努力した。
もっと仲良くなりたいしこれはいい感じなのでは?と思った。
「あの……今度遊び行きませんか?」
「おー!いいね! どこに行くの?」
彼女は高校三年生、つまり僕の先輩にあたるわけだ。名前は大島 莉央。
ちなみに彼女との接点は体育祭だ。
この高校には体育祭に男子は応援団、女子はチアを自由参加ですることができる。
一年生の時もしたが二年目もやって良かった!と思った。
彼女は頼りになる先輩だが、見た目が大人っぽいわけじゃない。
小柄な体型で言葉遣いも可愛らしい。
身長なんて145センチ……145センチだぞ!
168センチの低身長の僕からしたら良物件でしかないし、何よりギャップが魅力的すぎる。
「行きたい場所とかあります?」
「勇くんとならどこでもいいよ!」
勢いでデートに誘ってしまったのであまりデートコースは決めていない。
僕は彼女を幸せにしたいし彼女と幸せになりたいと思っている。
まぁ彼女の笑顔が僕の幸せなんだけどね。
「考えときます」
僕は最高のデートにしたいと思いこの一言を放った。
「うん! またね!」
彼女は手を振りながら改札へ向かった。
この場合って送るべき……なのかな?
僕は恋愛経験はあまりないし、ここまで人を好きになったことはなかった。
"本物の好き"を見つけたんだな、と思った。
また、僕も彼女に好かれている、と改めて思った。
彼女の期待に答えたい。
彼女の理想の彼氏になりたい。
彼女を……幸せにしたい。
そう思った。
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僕は部活終わりに彼女と連絡を取っていた。
彼女は受験勉強で学校に残っていることを知っていたので『今日も帰りませんか?』と勇気をふり絞り、親指に込めて送信ボタンを押した。
すると返事は『今日は用事があって早く帰らないといけないからごめん!』だった。
確かに高校三年生の先輩を頻繁に誘うのはよくないのだろうと反省した。
「今日俺も一緒に帰るわ!」
「あ! 女に振られたな〜?」
「振られてないな! てかまだ告ってねーし……」
僕はいつも一緒に帰っていたメンバーと帰ることにしたがその中の一人が今日は女と帰るらしい。
いいな〜僕も一緒に帰りたかったな。
そいつは福永 洸人と言って割といいやつだ。
複数人でいる時は一人をネタにして場を盛り上げるちょっとだるいやつだが一対一の時は真剣に話を聞いてくれるし、してくれる。
僕らは買い食いをしながら駅のホームに屯いゲームをしていた。
「不死鳥スキンかっけー!」
不死鳥じゃね?と思ったがこのゲームでは不死鳥なのかもしれないと思い、ツッコむのはやめておいた。
僕はゲームの一戦を終え、辺りを見た渡した。
そこには僕の視線を釘付けにする光景があった。
莉央先輩と洸人が並んで歩いていた。
一瞬の出来事だったが何十秒もその映像がスロー再生したように感じた。
全身の力が抜けるような感覚に襲われた。
友達の肩によりかかる。
「おい!やめろよ暁月!」
微かに聞こえてはいるが聞く気はない。
「おい……大丈夫か?」
友達の声色が心配に変わるのを感じた。
「あいつらって付き合ってたのか……?」
「あぁ付き会ってたな、前から」
「は……はは」
もうダメだ……。
何も考えれない……。
どうしたら……
どうしたらよかったんだ……
過去に戻りたい。でも戻ってどうするんだ?
どうしたらいいのか分からない。
どうしたらよかったのか分からない。
誰か助けて……助けて?
誰かに助けを求められることか?
自分が悪い……?
いや……あいつが悪い……
あの女が……
女によって男もおかしくなるのか……
僕に向けた優しさも……笑顔も……言葉さえも……嘘だったんだな。
「ゔぁあああああああああああ!! 死ねぇええええええええええ!!」
思いっ切り叫んでやった。
あいつらに届いただろうか。
表向きにはただふざけて叫んでいる頭のおかしいやつに見えるように笑顔で振る舞った。
本気で悲しんでいるとは思われたくなかったから。
「おい頭おかしいぞ……離れとこーぜ」
あれ?
そういえばこいつらにも先輩と僕の関係は言ったはずだ。
楽しんでる?
いや洸人とも友達だから関与しないようにしたのか……
けど……本当か?
今はそれより悲しい。
友達と別れた後、僕は涙を堪えらなかった。
真夜中に川沿いに座り僕は缶ジュースを飲みながら涙を流して流して流しまくった。
顔の水分を絞り尽くすまで……
頭が痛くなるまで……
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