最弱スキル“掃除”で世界を支配する ~ゴミを集めたら神になってた件~
よろしくお願いいたします。
「おい、ユウト。お前のスキル……“掃除”だってよ。ははっ、マジかよ、ゴミ拾い?」
召喚された異世界「アステリア」の大広間。
神官の声に続いて、俺のステータスが読み上げられると、場の空気が凍りついた──というより、笑いに変わった。
勇者として召喚された俺たちクラスの面々は、それぞれ【炎神の剣】とか【魔神の祝福】とか、いかにも強そうなスキルを授かっていた。そんな中、俺だけ“掃除”。
「はは……いいじゃん。世界をキレイにするのも、大事なことだよね?」
無理して笑ってみたけど、誰も笑い返してはくれなかった。
数日後、俺は城から追放された。理由は簡単、「役に立たない」からだ。
彷徨ってたどり着いたのは、王都から離れた辺境の「廃棄区画」。そこは、魔物の死体、壊れた武具、封印された呪物──あらゆる“ゴミ”が積み上げられた谷だった。
(せっかくの異世界。どうせなら、ここを徹底的に掃除してやるよ)
俺はスキル【掃除】を発動する。すると、目の前の金属片に、青い光が宿った。
【魔鋼の欠片を吸収しました。素材変換が可能です。】
えっ?
【呪われた刃の残骸を浄化中──浄化完了。再構築可能。】
まさか、これ……ただの掃除じゃない。
“世界のゴミ”を吸収し、再構築して、新たな「力」を生み出す。
このスキル、ヤバいぞ。
掃除を続けるうちに、俺の“倉庫スキル”内には膨大な素材がたまっていった。
そして、ある程度集めた段階で、新たなメッセージが表示される。
【一定量の素材を確認。自動錬成を開始します】
【《神骸装・クリーンブレード》が完成しました】
俺の手に現れたのは、透き通るように輝く剣。その切っ先には、魔素を分解する機能が備わっていた。
つまり、魔法障壁だろうが、呪いだろうが、この剣で“掃除”すれば、全部無力化できる。
おまけに、防具も完成した。毒、病、呪い、すべて無効。もうラスボスでも怖くない。
「……俺、なんか、とんでもないことになってない?」
掃除を進めるうちに、廃棄区画の最深部で“何か”に呼ばれた。
たどり着いたのは、巨大な神の死骸。その上で眠る、白い衣をまとった少女。
「あなた……この神の汚れを、感じることができますか?」
少女の名はリーシア。不死の巫女。神の穢れを鎮めるため、千年間ここにいたという。
「……無理ですよ、もう。誰も浄化なんてできない……この神は、汚れすぎた」
「やってみるよ。俺の掃除で、やれるかもしれない」
俺は神骸に手をかざし、スキルを発動した。
──眩い光が空を裂き、神の死骸から腐臭と瘴気が消える。
【神骸の浄化に成功しました】
【“神の祝福”を獲得──新スキル《完全浄化》が開放されました】
リーシアの瞳に、涙が浮かんでいた。
その後、俺の掃除スキルは国家を救い、病を癒し、呪われた村を復興し、ついには“戦争”すら止めた。
なぜなら、俺が行くだけで、毒も武器も魔法も全部“無力化”されるから。
戦争を仕掛けた隣国の王が言った。
「貴様……なぜ戦わぬ!?」 「掃除してただけだけど?」
俺の前では、誰もが武器を捨てる。なぜなら、汚れた心も、嘘も、殺意も、すべて“見える”し“洗い流せる”から。
「お前の存在自体が、チートじゃないか……!」
気づいたら、世界の宗教のトップに祭り上げられていた。
「ねえ、ユウト。これからどこへ行くの?」
リーシアが俺に尋ねる。
「まだ“世界の果てのゴミ山”が残ってるんだ。そこ、どうしても掃除したいんだよね」
「ふふ、相変わらず、変な人」
「変じゃないよ、俺はただ──世界をキレイにしたいだけなんだ」
俺の旅は終わらない。
世界のすべての穢れを掃除し、綺麗にして、誰もが安心して眠れるように。
それが、最強の“掃除屋”ユウトの使命だから。
「──俺たちの掃除はこれからだ!」
完
ありがとうございました。