【第5章:Piのトークノミクスを解剖する】 第5節:Piの供給構造は“どうやって”作られているのか?
これまで、「売らない文化」や「価格の安定構造」といった側面から、
Piがなぜ1ドル前後で安定しているのかを見てきた。
だが、その裏にはもう一つの重要な要素がある。
それが、**「供給の設計」**だ。
この節では、Piがどのように発行・配布されているのか、
そして、どのようにして供給が管理されているのかを深掘りする。
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● Piは“いくら”発行されているのか?
Piの総供給量(発行上限)は、**1000億Pi(100B Pi)**と設定されている。
これは、ビットコイン(BTC)の2100万枚に比べると、桁違いの量だ。
だが重要なのは、「総供給量」ではなく、**「いつ・どのように流通するか」**だ。
Piは、一気に100B Piを市場に放出するのではなく、
段階的かつ分散的に供給される設計になっている。
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● 段階的な供給とは?
Pi Networkの供給構造は、おおまかに以下のように構成されている。
1.マイニングによる分配
- 毎日、アクティブなユーザーがスマホでPiを採掘する
- 初期は高いレートで配布されていたが、現在は低下しており、新規発行ペースは鈍化している
2.Mainnet移行に伴うトークン配布
- KYCを通過したユーザーに対して、マイニング報酬がMainnetへ移行される
- このとき、自動的にロックアップの選択肢が提示され、多くが3年・5年を選択
3.リファラル報酬やエコシステムインセンティブ
- 他ユーザーの招待や、エコシステムへの貢献に対する報酬として配布されるPiも存在する
このように、Piは“ゆっくりと”かつ“特定の行動に対して”供給されるトークンであり、
短期的に大量流通する設計ではないのが最大のポイントだ。
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● 「発行=流通」ではない設計
仮に、発行済みのPiが50Bに達していたとしても、
実際に市場で売買可能なPiは、せいぜい10B〜15B程度と推定されている。
なぜなら、その多くがロックされていたり、KYC未通過で移行されていなかったりするからだ。
•KYC未通過ユーザー:PiはMainnetに移行できず、売買不可
•ロックアップされたPi:期間中は売却できず、流通に含まれない
•未移行アカウント:そもそもまだブロックチェーン上に存在していない
つまり、Piは**「発行されても流通しない」設計**によって、
供給過多を防いでいるわけだ。
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● この設計は、何を生むのか?
このような供給構造が生む効果は、大きく3つある。
① 価格の下支え
売るPiが少なければ、価格は下がりにくい。
特に、短期的な暴落を防ぐ“安全弁”として機能している。
② ホルダー意識の形成
ロックアップによって、ユーザーは自然と“保有者”としてのマインドを持つ。
「売らずに持っておこう」という意識が強まる。
③ エコシステム育成の猶予
一気に通貨が流通せず、時間をかけてユースケースを整備できる。
“ゆっくり流通・ゆっくり成長”がPiのスタイルだ。
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● 一方でのリスク:タイムラグによる“熱の冷却”
この供給構造には、当然リスクも存在する。
•ユーザーの熱量が落ちる前に、使い道が整わなければ、Piは“眠った資産”になる
•ロック解除時期に供給が集中すれば、一時的な“売り圧ショック”が発生する可能性がある
つまり、「時間をかけすぎること」そのものがリスクになるという構造でもあるのだ。
この点を理解しておくことは、Piの将来を考える上で重要だ。
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● 結論:供給は「遅く・慎重に・戦略的に」
Piの供給構造は、従来の仮想通貨と比べて異常なまでに“慎重”だ。
それは、「爆発的成長」を狙うのではなく、**“持続可能なエコシステム”**を作るための設計思想に基づいている。
だが、その慎重さは、同時に「スピード勝負の世界」においては弱点にもなる。
次節では、この供給構造に対する実需の育て方、
つまり「使う場所をどうやって作っていくか」について掘り下げていこう。




