それから。
その後、馬車に乗って帰ることになった。
勿体なくもエドワード様が馬にのって付き添ってくださる。
そしてブラッキーさんも。
「セピアの世話と護衛の為にいたから、まあ退院したらお役ごめんだな。
みんなが自宅兼職場のホテルに行くまで見届けるよ。」
との事だ。
「とりあえずな、セピア君。ホテルに着いたら君は私と同室だ。いいな?」
ケイジ兄が言う。
「ええー、ロージイさんと同室にしてくださいよ、婚約者なんですから…いてて!やめて、ラージイさん、ケイジさん。二人で叩くのは。」
「それで別館が出来ればラージイ様とリラ様が住んで、ガーデン夫妻も住み込むのでがすね?」
「そうだな。結婚してからのことになるけど。あの家は引き払うか。」
「あっしらのどちらかのひとりが別館のガードをするでやんすよ。
セピアの旦那が住み込めば、そっちの護衛は万全でやす。」
「ガリー、ヤッキー。別館のガードマンになってくれるの?」
みんな色々考えてるのね。
「ロージイ姐さん。本当はあっしらも姐さんのガードがいいでやんすが。」
「別館も守らなきゃいけないでがんしょ。ガーデン夫妻は騎士上がりでしょうが、ホテルの中の仕事もおありでしょうし。」
「わかった。その線でお願いするよ。」
ケイジ兄も頷く。
そしてホテルについた。
「セピアさん!まあ良くぞ無事で!」
「ビルさん!ブランさん!お会いしたかった。」
涙ぐんだ二人と交互に抱き合うセピアさん。
「セピアさん、助かって良かったわ。みんなで心配してましたの…」
「リラさん!帰ってきましたよ!」
駆け寄るセピアさんを羽交い締めにするラージイ兄。
「こらあっ、リラさんには抱き付かなくてよろしい!」
「本当にオマエ、好かれてるんだな。」
ブラッキーさんがポツリと言う。
「やだな。ブラッキーさん。疑ってたんですか?」
「うむ。セピア君はひとたらしなところがあるな!
ここは彼の居場所である。」
「エドワード様…ショコラにはそもそも見込みが無かったって事ですね。」
ブラッキーさんはため息をついた。
「とにかくお疲れ様。皆様お茶をどうぞ。」
ブランさんが招きいれる。
「是非!エドワード様!ゆっくりなさってくださいませ。」
エドワード様を大好きなケイジ兄が満面の笑みで言う。
「ブラッキーさんも。」
ラージイ兄が微笑む。
「セピアさんがお世話になりましたね。ウチのリラ嬢のパイは最高ですよ。是非食べていって下さい。」
ホテルの食堂へとみんな入る。
そこにリラさんが、香り高い紅茶とミートパイを持ってきた。
「ああ、リラ嬢か。お城で顔を合わせたことがある。ラージイさんとご婚約なさって仕事をお辞めになったと聞きました。」
「ええ、ブラッキー様。貴女は王様と王妃様の護衛でいらっしゃいましたね。まさかここでお会いするとは。」
なごやかに話は進んで行く。
「それではこれで二人は本当の婚約者と言うことでいいんだね?」
ラージイ兄が口火をきった。
ええ、一応仮の婚約者だったけれど(ジーク様の前では言えなかったが)、もう今日からは本当の婚約者でいいだろう。
頬に熱が集まった。
チラリとセピアさんを見る。
「はい。私の気持ちは決まっています。コハク国に立つ前、ロージイさんに会った時から。」
そして私に向き直る。
「貴女の言葉は私の心の奥底に届きました、
やられた、という気がした。
何もかもお見通しで、ずけずけと忖度なしで私の心の武装を引っ剥がして切り刻んだ。
ねえ、私達はどこか似たもの同士だ。
手を離せる気がしません。貴女以上の人はもう、現れないと思います。」
「セピアさん…」
胸が苦しくなってきた。
そこに、声が響いた。
「良く言った、セピア。」
「アンディ殿!やはり来たでござるか?」
エドワード様は笑った。
「ああ。神獣様達へのご機嫌伺いが済んだからな。」
ドアの向こうから黒い影が入ってきた。




