ひとつの恋の終わり。
それから何日か経った。
「ラージイ兄がセピアさんのお見舞いに行こうと言うんだ。ヤッキー、ガリー、行くよな。
もちろんロージイも。」
「ええ。」
「今日ホテルは臨時休業にする。すぐ戻ってくるつもりだが、人手が足りないからな。」
ケイジ兄の一言でホテルは休みになった。
「久しぶりでやんすよね。」
「早く顔が見たいでがす。お調子ものだけど憎めないお人だ。」
ヤッキーとガリーが馬車の中でにこやかに話しているが、ラージイ兄の表情は硬い。
「あの二人はもう処分されたよな。もう危険は無いんだよな…」
「そうね、多分。」
マージとロッキー。
マージいや、ミハルは妹さんの隣で眠っているのだろうか。
病院に着く。入り口に待っていたのは。
「リーリエさん?」
「ふふふ。お久しぶり。ロージイさん。相変わらず美人ねえ。」
「おおっ、あの色っぽいクノイチ姉さんじゃないでがんすか?」
「むほっ、相変わらずお色気ムンムンすね。」
「ガリー、ヤッキー、何を言うんだ。」
ケイジ兄が嗜める。
「お久しぶりです。今日はこちらにお仕事で?」
「ええ、まあ。ラージイさんもこんにちは。」
「…はい。リーリエさん。」
硬くなるラージイ兄。
「ラージイ兄さん、リーリエさんに会ったことあるの?」
「…ああ、まあな。」
「そうね、ラージイさんはそこそこ王宮勤めが長いですものね。
私が昔は高位の貴族令嬢で王の従姉妹が義理の母で、ハニトラを王族にしかけようとして失敗して。
それに白鬼と呼ばれたアンディ様の腹違いの兄と、因縁があった事を知ってるだけですわよね?」
「ええっ!」
「そして貴女はハニトラ専門のクノイチになった。
どうしてここに?」
「ふふふ。アラン様がこちらに来るようにおっしゃったのですわ。」
「アラン様が?」
「ええ。」
「さ、セピアさんが待っていますわよ。」
「…。」
ロビーに入る。
「……ロージイさん!」
「ジークさん?まだ入院してらしたの?」
思いきり眉を顰める。
長身の騎士が私を見る目は、相変わらず熱い。
「うふふ。まだジークさんはロージイさんに未練がありますのね?だからとうとうフリーゼさんも貴方を見限ってブルーウォーターに帰るのですわ。」
コツン。
立ち止まる足音。
そこにはトランクを持ったフリーゼさんがいた。
「ジーク…いえ、ジーク義兄さん。」
「フリーゼ…」
「私、ブルーウォーターに帰りますわ。もうだいたいのことは1人で出来るでしょ?後はリハビリ専門の病院に通ってくださいな。」
「そう…だな。
いつまでもオマエに甘えていては行けないな…」
あら。まともな事も言えるじゃないの。
「フリーゼさん、貴女はよくやりましたわ。ブルーウォーターにお送りしますわね?
エリーフラワー様が貴女を首を長くして待ってますわよ。」
そうか。フリーゼさんの護衛とお迎えに来たのか。
腕のいい宝石職人だとは聞いた事がある。
「リーリエさん。」
「あんなどうしようもない男のことはお忘れなさいな。」
チラリとジークさんを見るリーリエさん。
「さっき私がわざと胸を強調するポーズを取ったら、ジロジロ見てきましたわよ。
フン、ただの巨乳好きのスケベ野郎じゃないの。」
「なんだと!リーリエ。アンタこそ素行が悪くてハニトラ専門のクノイチになる事でクビの皮一枚繋がってるくせに!」
「そうね、それがどうしたの?私はそれからは真面目に任務を果たしているだけ。
今日だってアラン様にフリーゼさんの護衛の事を頼まれたのは本当。」
そしてセクシーなポーズを取る。
胸の下で腕を組んで強調する。そして腰をくねらせた。
「うおっ♡」
喜ぶヤッキー。ガリー。
「うふふ。こんなに素直に喜ぶ方が毒がないわよね。
」
ジークさんは横目でしっかりと見ている。
ラージイ兄は眉間に皺を寄せている。
あら?ケイジ兄さん。…あなたもガン見してるわけ?
「そしてもうひとつ。アンタがただの巨乳好きで、フリーゼさんが好みじゃなかったから。
ただそれだけで蔑ろにしたと、彼女に知ってもらう為に来たのよ。未練を切り捨てて貰うためにね。
……ふふ。もちろん紅の美魔女様にも。
私の胸を見てダラシない顔をしてる、アンタを軽蔑して貰うために。」
「なんだと!この売女がっ!」
「ホホホ。それが私のお仕事ですもの。
それにアンタにそんな事が言えるの?
……バレバレなんだよ!病院に居座ってりゃセピアの見舞いに来るロージイさんに会えるかもって思ってたんだろ!」
最後は乱暴な口調になってジークさんを怒鳴りつけるリーリエさんだった。




