それぞれの道。
誤字報告ありがとうございます。
「ネモさま、ロッキーはどこで処分されても構わないですが…確かに病院じゃダメだけど。
マージはチルの近くで…チルが最後を迎えたあの里で……どうでしょうか?」
セピアさんが口を開いた。
「セピア君…キミね。そうか、うん。」
ネモ様は腕組みをする。
「オマエ、ひとがいいな。」
アンディ様は苦笑した。
「ハンゾーから聞きました。神獣様のお力でそこは清められて。花に溢れていると。」
ポツリとヤマシロさんが言う。
「そうだ。村の真ん中には大きな桜の木があって墓標みたいになっている。
オレの家があったところには炭焼き窯の跡があって、そこにチルが眠ってる。
…アンタが望めばそこで終わったらどうだ。」
「…どうせチルの魂はそこにはいない。」
「ああ。」
「私は死んでもあの子の近くには行けない。」
「まあそうだな。」
泣きながら言葉を絞り出すマージと、優しく頷くセピアさん。
「…だけど感謝する。あの子の体が花溢れるところで眠っているのなら。」
「そうか。」
「コレがアンタとコイツの違いだよ、ロッキー。
…どうかお願いします。私をそこに連れて行ってください。」
マージは頭を下げた。顔をくしゃくしゃにして泣きながら。
「何のことだ!マージ?私から離れていくのか?
え、どうしてだ。紅の魔女様との縁がなくなったんだ。
オマエと結婚してシードラゴンでしあわせに暮らすよ!」
叫ぶロッキー王子。
その姿をヘビたちが覆っていく。ぐるぐる巻きにして。
「もうその段階じゃないんだよ。」
アンディ様がため息をつく。
「や、やめてくれっ!なあ、マージ。せめて最後までオマエと一緒に…」
「私をマージと呼ぶなっ!私はコハク国のミハルだ!
その名前は捨てる!ミハルとして、死んでいく!」
マーズいや、ミハルの言葉が私の耳を打つ。
「さア、ロージイさん。そしてラージイくん。」
ネモ様が私達を見て微笑む。
恐ろしい。
「この先の展開はキミ達に見せるのは酷だと思う。
ホテルまでお送りするよ。」
「は、はい。」
私の身体からセピアさんの手が離れた。
膝から降りる。
「大丈夫?痺れてない?足。」
「いいや?貴女は羽のように軽いですよ。ああ…もっと抱きしめていたかった…いてっ。
ブラッキーさん、痛いなあ。」
「コイツに気を使うことないぞ。心底スケベ野郎だからな!
この後はオレがみっちり世話とリハビリの指導をしてやるからな!」
「ええ…怖い。」
大男のブラッキーさんを身をよじってさけるセピアさんだ。
ラージイ兄が寄っていってセピアさんと握手をする。
「セピアさん、今度ケイジの奴とヤッキーやガリーを連れて見舞いに来るからなっ!」
「ありがとう、ラージイさん。気をつけてね。
多分、帰りはケンちゃん馬車だから。」
「…え?」
「ケンちゃんって?」
嫌な予感がして兄と顔を見合わせる。
「そうだよ、ラージイくん。特別にケンタウロスの馬車を使わせてあげようね?」
ネモ様の慈愛に満ちた微笑みがとても恐ろしい。
「ケンタウロスの馬車な。さっきレイカさん達が乗っていた奴が戻って来たんだよ。」
アンディ様もにこやかに言う。
「滅多にない機会だ。良かったなラージイくん。
お友達に自慢できるぜ。ククク。」
面白そうに笑う黒い悪魔。
「い、いえ、そんな。勿体ない。」
「さア、ヤマシロ。お連れしろ。
二人ともお疲れ様。セピアをコレから頼むぞ。
傷が治ったらそちらにやるからな。
住み込みの護衛として使ってやれ。」
「アンディ様!」
セピアさんの目が輝く。
「それは願ってもないことです。が、本当に宜しいので?」
「フン。婚約者なんだろ。ま、連絡係はしてもらうがな。」
アンディ様が後ろを向いて手を振る。
「さア、こちらへ。」
ヤマシロさんから連れられて病院を出ると、そこには
ケンタウロス!!
「うわあっ。」
「きゃああっ。」
「そんなに驚くとケンちゃんがへこみますよ。」
ヤマシロさんが苦笑した。
「ケンちゃん。この女の人はね、レイカさんが気にかけている人なんだ。
それから男の人はアンディ様の仕事仲間なんだよ。
宜しく頼むね?」
「レイカだんの?わがっだ!」
喋れるの?
「レイカだん、いいびと。オレにばらまぎぐれだ。」
虎の皮の腹巻きを手で指し示すケンタウロス。
「ま、まあ、そうなの?」
「あの人すげえな。流石アンディ様の奥方だ。」
そしてウチのホテルまであっという間だった。
「じゃ、ごれで。」
「ああ、ありがとう…」
ホテルからケイジ兄とヤッキー達が飛び出してきた。
「兄さん?ロージイ?俺夢を見てるのかい?
あれって…伝説の生き物?」
「ケンちゃんだよ、ケイジ。」
疲れきって返事をするラージイ兄。
「姐さん!すごいでやんす!UMAに引かれてお帰りたァ、流石ッス!」
「ヤッキー…ネモ様の心遣いなの。とにかく中でお話しするわ…」
そしてブランさんのお茶でやっとひと息ついたのだった。




