胸の中にあるもの。
腹をくくろう。
セピアさんに向き直る。
「セピアさん。私はもう余計な事は考えません。
……貴方を看病していた人の事とか。
………そしてロッキー王子と対決しましょう。」
「ロージイさん?」
目をパチパチする、セピアさんだ。
彼の近くによる。
椅子の横に立つ。
肩に手をやり、じっと見つめる。
「私は、貴方が行方不明になった、半死半生になったと聞いた時、心配でたまらなかった。
それは本当なんですよ。」
「ロージイ姐さん…ありがとう。」
頬を染めている。
ロンドさんやブラッキーさんが私達を横目で見ているようだ。
「…あの時、任務に出かける前に立ち寄ったとき…貴方の言葉はオレの心の弱い部分を突きました。
蓋をしていたものを剥がされて暴かれて、これは参ったな。と。」
彼の目は真剣だ。
「…真剣に貴方と向き合おうと思います。
アンディ様が証人だ。」
セピアさんの目はどこまでも澄んでいた。
ラージイ兄が目をむく。
ロンドさんは笑みを浮かべた。
うんうん!と人のよい笑顔を浮かべている。
ネモ様は腕組みをして目を閉じた。
「ハッ!言うじゃねえか、セピア。勝手に人の名前を使うんじゃねえよ。」
アンディ様は口元を片方だけ上げた。
「…さっき、チルさんはキミの胸に手を突っ込んだよね。」
「ネモ様。」
ブルーウォーターの支配者はゆっくりと目を開けた。
その薄荷色の目を煌めかせて。
「それで何か変わった気がしたかい?」
「…少し胸に穴が空いたような。泣きたいような気持ちになりましたけど、でも、少しホッとしたのです。」
「そうか、そうだな。私はメアリアンさんみたいに専門ではないがね。確かにキミの魂の一部がちぎられていたよ。
少年の心というものかな。そしてね、チルさんと一緒に昇華して行った。
幼い二人の恋が結ばれた、とも言えるね。」
え…そんなことが。
ガタン!
椅子を揺らしたのはマージだ。
「そうなのですか?あ、あの子は報われたのですか?」
目が潤んでいる。
「私がもらった神獣様たちのおチカラが粋な事をしたようだね。」
「ああ…チル。」
泣き崩れるマージをじっと見ていた。
その時、セピアさんが椅子の上で居住まいを正す。
「ん?そうだ、ロージイさん、俺の膝の上に乗って?」
「エッ?」
いきなりセピアさんに抱き抱えられるように彼の膝の上に座った。
「ちょっと!セピアくん!」
「ラージイさん、ヤツが来ますから。」
ガチャリ。
その時、ドアが開いてヤマシロさんがロッキー王子を連れて来た。
やつれている。髪はボサボサだ。
言われなければどこの浮浪者かと思っただろう。
「よう、色男。オマエの大事なマージだ。
見つけてやったぞ?」
アンディ様が煽る。
「マージ!」
ふらふらした足取りでマージに寄っていく。
「ど、どうして!縛られてるんだ!アンタらがやったのか?
グランディの忍びどもが!」
吠える。
「キミねえ。私が誰だかわかるかい?」
ネモ様が立ち上がる。
「私はネモ・ブルーウォーター。他国の王族をなのるならちゃんと礼を尽くしたまえよ。
シードラゴンの王子、ロッキー・ロック君。
その女にまとわりついているのは私のヘビだ。
……私の話を聞いた事があるだろう?
この女をいじめていた男たちは私の動物達が粛正した。
感謝はされても非難される覚えはないがね。」
ネモ様の言葉と威厳に膝をつくロッキー王子。
「…そ、それは。失礼を致しました。」
「砂漠の国で倒れていたのを保護したのはグランディの影、アンディさん達だ。キミ、恩知らずだね?」
ネモ様は追い詰めていく。
「…はっ、気がついたらこの病院にいて…そうだったんですか。…すまなかった。」
まわりを見回して頭を下げるロッキー王子。
ふん、素直なところがあるのね?
そして私を見て目を見開く。
「ろ、ロージイさん?なんでそんな男の膝の上に乗って…抱かれてるんだっ!」
「婚約者ですもの。当然ですわ。」
見せつけるように彼の背中に手を回す。
「へえ?まだキミはロージイに未練があるのか?」
セピアさんもニヤリとして煽った。




