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ロージイの話。〜ずっとあなたが好きでした。だけど卒業式の日にお別れですか。のスピンオフ。  作者: 雷鳥文庫


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少女は語り続けた。そして気がつく。

「限界って?何だよそれ!?」

セピアさんが叫ぶ。

少しずつ、少しずつ、少女の姿から金色の粒のようなものが落ちて行くのがわかる。

そして下の?メアリアンさんの服の色が見えてくる。


「…ちょっとね、長くいすぎちゃったの。この世に。

そろそろ行かなくっちゃ。」

淡く微笑む少女。

「行くなよっ!…俺を置いて行くなよ、チル!

ずっと側にいてくれよおおおっ!」

泣くセピアさんの姿に私の胸も痛む。

可哀想で。彼が可哀想で。

あんなに会いたがっていたのに。やっと会えたのに。


「セピア君、わかってるんだろう?こんなに長い間、悪霊にもならずにとどまっていた事が奇跡なんだよ。

…そろそろ彼女を行かせてあげなくては。」


ネモ様の言葉は正論だろうが、容赦がない。


「そんな!」

ラージイ兄もいたましげにセピアさんを見ている。

「幼馴染を思う気持ちは私にも…わかります。」

ヤマシロさんは誰に言うともなく呟いた。


「チル!わ、わたしに取り憑いたらどうかしら?

ね、何か、…そう、この世に留まるなら、チカラが必要なら私から、吸い取っていいのよッ!」

マージが必死の形相になる。

幼い妹を手放したくないんだ。

「おねえちゃん…」

チルさんが泣きそうな顔になる。


「マージ、いや、ミハルか?

どっちでもいいけどなあ。自分の命だって、これから罰せられるから…当てにならねえことを忘れてねえか?」

アンディ様の言葉は容赦がない。

そういえばそうか。大罪人なんだ、彼女は。


「…そ、そうか。じゃあ、どっちにしろすぐ会えるって事ね。」

マージは微笑した。吹っ切れたような笑いだ。

「あなたに会えるなら、死刑も怖くないわ。」


「ううん?違うよ。」

そこに少女の声が響く。心底不思議そうに。


「何言ってるの?何もしていない良い子の私と、悪者のおねえちゃんが同じところに行けるわけがないでしょ。」


えっ。


「ち、チル…」

マージは絶句した。


「あーはっはっは!オメエみたいな悪人は地獄行きだア!

チルはな!天国にいけるって決まってるじゃねえか!」


「ん?何言ってるの?セピア。セピアだって地獄行きだと思うけど。」


そういえば言ってたわ。

"王家の影が善人なわけないでしょ。任務だから神獣様から目こぼしされているだけですよ…“

と。


「チ、チル。」

セピアさんはベソをかいている。


「そ、そんな事言うなよ…オレ、会いたかったんだよ。

本気で好きになったのはオマエだけなんだ…ずっとずっと、忘れられなかったんだよ…。

いつも、意地張って、憎まれ口ばかり叩いていて、ごめん、後悔してるんだ…」



そうなの?

本気で好きになったのは、この子だけなの?

わかっていた事だけど、重い石を飲み込んだような気持ちになって行く。


「憎まれ口?フフ、私にあっちいけ!とか、好きじゃねえよっ!って言ったこと?」


そんな事言ったのか。好きな子をいじめる子供だったのね。


「そんな事言ったのか!セピアっ!テメェ、死んで詫びろ、このくそがっ!」

マージが暴れる。椅子をガタガタいわせて。


「やだわ!照れ隠しだってちゃんとわかってたよっ!

セピアが私のことを大好きだってこともね!」


ふふふと微笑む少女。


「チル…。」

「だから私はね、最後にお話しができて嬉しいの。」

「やっぱり…行ってしまうのかよ、畜生、どうしてだよ…死んでもオマエに会えないのか…くそっ。」


二人のキズナと世界を見せつけられているのか。


「うん、会えないよ。それに近くにいたのにさ、私に気がつかなかったのはセピアじゃん。

…おねえちゃんもだよ。」


「「チル…」」

セピアさんとマージが泣いている。


チルさん。あなたは夭折して不幸だったけど、こんなに二人に愛されているじゃないの。


私は…。

そうね、私も兄達には愛されてきたわ。

…彼女を羨むのはお門違いね。


「あのさあ。セピア。ちゃんと選ばなけりゃいけないよ。どっちも選ばないってのはナシだよ。」


え?何を言ってるの?


「へ?」


「こんな…良い人達。両方とも美人で情が深くってさあ。

これ以上のひとはねえ、コレからセピアの人生には現れないよ。保証する。

ま、アンタにはどっちのひとも勿体ないけどね。」


どう言うこと?良いひと()ですって?

()()()()()


まわりを見る。


茶色の目と髪をした彼女。下を向いてため息をついている。


その隣でボディガードみたいな大男が怒りを露わにしているわ。


ヤマシロさんとロンドさんが顔を見合わせている。

アンディ様は無表情になってる。

そして私やセピアさんと目を合わさないようにしている?


という事は?まさか?

両方って?私とこの人の事を言っていたの?



ラージイ兄がみるみる顔を強張らせる。

やはり気がついたのね。


あの茶色の髪の、控えめな感じの女の人。

多分…王家の影で、セピアさんの同僚で……きっと。

とても親しいひとなんだわ。


だって…私はやっと今日、見舞いを許されたのに…!

彼女は先にここにいた。

もしかして…世話をずっとしていたの?


足元がぐらつく感じがする。


どうして。


私が婚約者でしょう?



「チル…それは。」

セピアさんは肩を落としてがっくりしている。


何故、あなたが傷ついた顔をするの?


「多分、私がくっついていたから。無意識にブレーキがかかってたんだね。本気の恋人を作るのに。

それでついヘラヘラ、フラフラしちゃったんだな。」


「いやあ、彼の本質だと思うよ。そのヘラヘラさんは。」


レイカさんが言い放った。


「レイカちゃん、言うねえ。」

アンディ様がニヤリとした。

「レイカさん、あんまりっすよ。」

セピアさんが泣き言を言う。


「アハハ!そうかもね。」

チルさんは笑い飛ばした。


「じゃあ、そろそろ行くから。ネモ様、お願いします。」

後半はメアリアンさんの声になっている。

二重に重なっているのがわかる。そろそろ分離しかかっているんだ。


「うん、じゃあキューちゃんと龍太郎くんからもチカラを預かってきたからね!

最後に一分だけくっきりと形をとらせてあげるよ!

そうれっ!」


メアリアンさんからチルさんの形の金色の光が離れていく。


そして、くっきりと少女の形を取る。

セピア色の髪。輝く茶色の目。服装は白いワンピース。

いたいけな少女だ。10歳くらいの。


「セピアっ!」

そしてそのままセピアさんに抱きつく。

「チル…」

抱き合う二人。

「セピア、私より随分大きくなったね。仕方ないか。私はずっと10歳のまんま。あなたは21かな?

こうしてるとお父さんと娘みたいだね?」

「うん…いや。む、娘にしたらでかいけどな。」


マージがつぶやく。

「…そうなの。私よりその男を選ぶのね。」

「ごめんね、おねえちゃん。だってセピアとは七年間の付き合いなのよ。

おねえちゃんだってロッキー・ロック王子をそれなりに大事に思っていたでしょ?」

それを聞いたマージは泣きそうな顔になる。


「あったかいじゃないか。チル。これが幻なのかよ。」

目をあわせて見つめあい、そして手と手を取り合う。

「そうなの。この光はネモ様のおかげなの。

御礼にちゃんと尽くすんだよ、神獣様達にも。」

「…うん、うん。」

泣きながら頷くセピアさん。


そしてチルさんはセピアさんの胸元に手を突っ込んで何かを取り出した。


コハク色に輝く光だ。良く見ると?小さな少年の姿をしている。


「ウフフ、コレを貰っていくわ。」

「何を?」

「これはね、セピアの少年の心よ。私の事が好きでつい意地悪ばっかりいってた、意地っ張りの。」

「えっ!」

「それからねえ、いつも思ってたんだけど。」


そこでチルさんはセピアさんに顔を近づける。



「私の目の色はね、コハク色なの!トパーズ色じゃないのよっ!間違えないでっ?」


「えっ、そうなの?」


「トパーズはね、別のひとでしょ。まったく。」

私のほうを見るチルさん。

その瞳は優しい。その優しさに泣きたくなる。


そしてセピアさんのおでこを指ではたいた。



「いてて?ちゃんと痛いよ、チル…」

顔を寄せていくチルさん。頬ずりをしているように見える。

子犬が飼い主を慰めるように。


「……愛してたわ!大好きだったよ、セピア!」

満面の微笑み。

そして消えた。黄金色の光になる。

「チルっ!」


ネモ様が立ち上がる。そして窓を開け放った。


さあっ!さらさらさら。


風が吹いてきた。中庭の木の葉っぱが揺れる音がする。

そして青空の中をまるで黄金色の風船のように、キラキラと輝いて昇っていく、金色の光の粒。


「…今、天に昇って行きましたわ。」

メアリアンさんが手をあわせる。


「チ、チル…」


セピアさんとマージはがっくりと肩を落として、静かに泣き続ける。


…疲れた。

近くの椅子に座り込む。

「大丈夫か?ロージイ。」

「…ラージイ兄さん。私…色々気がついたの。」


さっきのジークさんのお連れさんは、

「あの…ショ…は。」と言っていた。


きっと、

「あの…ショコラさんは?」

と言いたかったのではないか。

兄が私をセピアさんの婚約者だと言ったから、驚いたのね。

ジークさんのお連れの女性は、ショコラさんがセピアさんの彼女だと思っていたのではないか。


辻褄が合う。

頭がガンガンと痛くなる。


チラリと目をやる。ガタイがいい男性。

腕組みをして私を睨みつけている。

ブラッキーと呼ばれていたわ。


その隣の女性は私をじっと見ている。

無表情に。


アンディ様は、

「ブラッキー、ショコラを連れてこい。」

と言っていた。


では、あの人がショコラさんなのね…。





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― 新着の感想 ―
これは・・・哀しい。 そして、ショコラさんはある程度の知識があり覚悟もあったと思うけど、いきなりいろいろ知らされたらねえ。 この短い時間の中で、ロージイの気持ちは何度もひっかきまわされた感じでしょうね…
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