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ロージイの話。〜ずっとあなたが好きでした。だけど卒業式の日にお別れですか。のスピンオフ。  作者: 雷鳥文庫


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語られる言葉。

誤字報告ありがとうございます。

 魂下ろし。噂は聞いた事があるけれど見るのは初めてだ。

メアリアン様は死者の声を聞くと言うけれど。

物凄くチカラを使うと言う。


「メアリアンさん、こちらのソファを使ってください。それからみんな椅子を持ってきて囲め。

そう、テーブルを動かして場所を作ってな。」

アンディ様がテキパキと仕切っていく。


メアリアンさんの前に二つ椅子が並べられて、ひとつにセピアさんが座り、そしてもうひとつにマージが座っている。ヘビでくくりつけられて。


「この野郎!生きていたのか!けったいな石に包まれたかと思ったら、光に攫われて!」

マージがセピアさんに噛み付く。

「先に手を出したのはお前だろう!」

セピアさんがにらみかえす。

その通りだ。

「うるせえぞ、この女狸めだぬきが!」

アンディ様が一喝して大人しくなった。



「スネちゃま、口を覆っておやり。…そうそう。」

ネモ様の目が光る。ヘビがマージの口に巻きつき鎌首を上げた。

…怖い。


「ではネモ様。私の手を取って下さい。そして反対側にはレイカさん。座って下さいね?」

「アッハイ?」

戸惑うレイカさんだ。メアリアンさんが手招きをする。

「ふふ。私の精神安定になりますわ。善良なレイカさんと手を繋いでいれば死霊の強い想いや、ネモ様の人ならぬお力に引きずられなくてすみます。」



三人並んでソファに座っていく。

メアリアンさんを真ん中にして。手を片方ずつネモ様とレイカさんが握る。


「ヤダ、危なくないでしょうね。」

「大丈夫ですよ、アンディ様。」

あのアンディ様がオロオロとしてレイカさんを気遣っている。愛妻家というのは本当なのね。


ネモ様から出た緑色の光。メアリアンさんを包む。優しいチカラだ。

これが土地神さまのチカラ。大地のチカラか。


「さあ、私の身体に降りてきて。『チル』さん…いいえ、『レイチェル』さん!」


メアリアンさんが目を瞑る。


更に光が彼女を包む。

いや?彼女からも金色の光が出ているようだ。


カッ!

目を見開く巫女姫・メアリアンさん。



ああ。彼女の上に女の子が重なる。

「「…おねえちゃん。セピア。ああ!やっとおはなしできる!」」

二人分の声がする。

だんだんとメアリアンさんより女の子の姿が濃くなる。

セピアさんと同じセピア色の髪。そしてトパーズ色の瞳。


…マージに似ているわ。丸顔で、ショートカット。

髪も目の色も同じ。

だけどその表情には邪気はない。



「チル!チルなのか!」

叫ぶセピアさん。

「……!」

ヘビの猿轡のせいで声を出さないが、椅子を動かして暴れるマージ。


「そうだよ、セピア。ずっと側にいたのに。

全然気がついてくれないんだもの。ひどいよ。」


「そ、そうなのか?」


「時々はおねえちゃんのところにいったんだけど。

ほとんどセピアのとこにいたんだよ。

髪の毛を引っ張ったりしたのに。

気がつかないんだもん。女の人に声ばっかりかけてさ。」

メアリアンさんのほっぺがぷうっとふくらむ。


「え、いや。そんな。」

慌てるセピアさん。それを見るマージの目は冷たい。


これが魂下ろしか。ちゃんと死者と会話が出来るんだ。


「だからね、寝てる間に髪の毛をぐちゃぐちゃにしてやったんだよ。へへへ、寝癖が時々ひどいなぁって困ってたよね。」

その口調は幼い女の子そのものだわ。


「そうなのか。お茶目な奴め。ううっ。」 

セピアさんは鼻声になっている。


「しょっちゅう靴下のかたっぽを隠したのもわたしだよ。こまってたよね。」

「ぐすん。そうだよなあ。お前はそんなイタズラが好きだったよなあ!」

「うふふ。靴下のかたっぽはね、ベッドの下にあるよ。」

「今度さがすよ、困ってたんだよ。」

「ウフフ。」


少女の霊は語る。あどかけない表情と声で。

セピアさんは嬉しそうに切なそうに受け答えをする。

その表情にいつもの人を煙に巻くようなところも、警戒して心を隠してる感じもない。


素なんだ。これが彼の本質なんだ。



「…何をやっても私が側にいるって。伝わられないんだもん。寂しかったよ。」


「チル…ごめんなあ、オレに霊感が無いばかりになあ。」


セピアさんはポタポタと涙を落としていく。

その姿に私の胸も締め付けられる。


…可哀想だ。セピアさんも。チルさんも。


「時々ねえ、ハチに刺されないように、蚊にも刺されないように追い払ってあげてたんだよ、気がついて無かったでしょ。セピア。」


「うん、うん!本当にお前は良い子だな。うわああん。」

とうとうセピアさんは号泣してしまった。

子供のように声をあげて。


「ぐすん。」

ロンドさんか。もらい泣きをしているのね。

「……。」

ブラッキーという男性とその隣の女性も目が赤い。


レイカさんも泣きそうな顔をしている。


「いい子だね、キミは。」

ネモ様が感じ言ったようにいう。



白いハンカチを目に当てているのはアンディ様か。

「こう言う健気さに弱いのよ、ワタシ。」


後ろをむいているのはラージイ兄だ。

「ロージイ、あまり死霊に同情するのは危険だぞ。

お力があるネモ様や、人が良いロンドさんやレイカさんなら悪影響はないと思うが。」

「……。」


ヤマシロさんにも兄の言葉が聞こえたようだ。

軽く頷いている。


「うん。だからね、エライ人。おねえちゃんからヘビさんを取ってあげてよ。」

チルさんはネモ様に手を合わせた。


「そうか。じゃ足だけ拘束するね。」

ネモ様の合図で口と手のヘビが解けていく。

そして壁側に張り付いた。


ぷはっ!




「…はあはあっ!本当に『チル』なの?」


目と眉を吊り上げて叫ぶマージ。


「うん、でもさ、私の本名は『レイチェル』なんでしょ、おねえちゃん。

あの時、私が亡くなったって聞いて泣いてくれたよね、『レイチェルが!』って。

それで思い出したの。本名は『レイチェル』で、小さいから『チル』っていってたって。」


「そんな、急に言われても信じられるわけが!」 


「そしてね、おねえちゃん。マージは仮名でしょ。

思いだしたの。小さいころやっぱり難しくって『ハル』ねえちゃんっていってたって。

…本当は『ミハル』って名前だよね、マージねえちゃん。」


その言葉を聞いたマージは固まった。


「…えっ。なんでそれを…」


「おねえちゃん……お仕事でおなまえを変えたの?」


「どうしてその名前を…『ミハル』の名前は…捨てたのに…シードラゴンに潜ってからは…マージで生きて来たのに…」


マージまたは「ミハル」は震え出した。

「ほ、本当に?『チル』なのね?騙りじゃなくて?」


「ウン。おねえちゃんと別れたときはまだ小さかったけど、お父さんとお母さんがね、おねえちゃんはうちが貧乏だから、親戚に引き取られるって言ったの。

だから私たちはよそで働いてお金を貯めて迎えに行くんだって。バラバラになって寂しかったの。」


メアリアンさんに憑依した少女は涙を流していた。


「私も同じことを言われたわ。私が働いてお金を貯めればいっしょに暮らせるって。

お父さんやお母さんはどうして亡くなったの?

セピアの親に殺されたんでしょ?」


「なんだと!」

セピアさんは叫んだ。

「ちがうよ?」

キョトンとする『チル』。


「セピアの住んでるところに行く途中でね、二人とも動けなくなったの。それで泣いていたらセピアのお父さんが助けてくれたんだよ。」


そんな事があったのか。それで引き取られたのね。


「…オレと髪の色が似ていたから、最初オレだと思ったらしいんだ。オレが森の中で迷っていたと。」

セピアさんがポツリという。


「おねえちゃん。セピアをイジメるなんてひどいよ。

私はセピアのせいで死んだんじゃないんだから。」


口を尖らせるメアリアンさん。いや、チルだ。

少女の顔がピッタリと重なっている。


「『チル』うーー!」


セピアさんは泣きながら立ちあがり、メアリアンさんにでを伸ばして抱きつこうとした。



「あ、ダメだよ。セピア君。おさわり禁止。本体はメアリアンさんだし。触ったら解けてしまうよ。」


ネモ様がメアリアンさんを庇う。


「うううっ。ネモ様。」


「『ハル』ねえちゃん!私はね、本当にセピアの事が好きだったの。ずっと後ろをついて歩いていたし。

「じゃまだ。」なんて言ってもちゃあんと、待っていてくれたんだよ?

それにね、セピアのお父さんが私をセピアのお嫁さんにしてくれるっていったんだ。

とってもうれしかったの。」


「『チル』…」

マージの目は見開かれた。


「でも良かった。そろそろ限界だったの。最後にお話しできて嬉しかったよ。」


えっ、それはどう言うことなの?

メアリアンさんの身体に重なった『チル』。

その手の先はブレてかすんでいる。


…姿を取るのも限界が近いんだ。



本編の「ブルーウォーター物語」と同時進行です。

あちらものぞいて見てください。

ヒロインの違いで視点が違います。

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― 新着の感想 ―
台詞回しが読者を惹きつける。 テンポの良さ。 台詞をテンポよくしたいとき、描写は挟まない。 逆に、ゆっくりさせたいとき。描写が与えられる。 著者は、巧妙かつ巧みに、描写を用いて、時間の流れを上手く…
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