会いに行く。
さて、ウチのホテルは基本的にお昼は出さない。
連泊のお客様は外食をしてもらっている。
朝は簡単な卵料理を出すし、夜は希望者には日替わりの料理を出す。
ソテーとかグラタンとかシチューとか。
女性客が外で食事をして絡まれないようにと言う配慮からだ。
アルコールもビールとワインなら置いてある。
ブランさんが料理上手で助かっているし、リラさんもなかなかの腕だ。
私も簡単なものなら作れる。
それで、昼はスタッフのみの食事なのだ。
二月八日。
昼食が済んだ頃、見計らったように、ラージイ兄とヤマシロさんとロンドさんが連れ立って入ってきた。
「ロージイ。急なんだがセピア君の見舞いの許可が出たんだ。コレから行けるかい?」
ラージイ兄が眉間にシワを寄せながら言う。
「ええ、もちろん。やっとなのね…回復するまで長かったのね…」
安心した。
胸にあったかいものが広がるのを感じる。
「うん、少し前に話が出来るまで回復はしたんだけどね、シードラゴンの残党狩りがあったでしょう。
それでまあ、警備の面もあって伸びたんだよ。
心配をかけてしまったね。」
ロンドさんが眉尻を下げながら言う。
やはり大きな犬がベソをかいてるみたいで可愛げがある。
「すぐ用意しますわ。」
「ねえ、アニキ。ロージイだけかい?」
「ケイジ。今回はね、取り急ぎでロージイだけだそうだ。セピア君が会いたがって…御礼を言いたがっているみたいなんだ。」
「そうでやんすか。」
「仕方ないでがすね、姐さん。あっしらが心配してたとお伝えくだせえ。」
「わかったわ。ヤッキー、ガリー。」
「……うん、やはりセピア君はここのみんなに愛されているね。」
ロンドさんがニコニコしている。
「…そうだな。」
ヤマシロさんも同意する。少し複雑な表情が浮かんでいる。
みんなで馬車に乗り込む。
「兄さん、もうシードラゴンの残党は捕まったの。」
「ああ、まあね。ロージイおまえの占いが役に立ったようだよ。
元砂漠の国の廃墟。そこをな、ネモ様が重点的に調べたのさ。
それで全部で五人だったか。捕まった。」
そしてヤマシロさんをチラリとみる。
「一昨日の深夜まで取り調べが続いていたようですね?」
「そうです。アンディ様がアラン様の指示でね…。
マージって娘はともかく、男性四人はかなり痛めつけられています。
そのうちのひとりはシードラゴン島の元宰相で、マージの父親役だった者ですよ。」
「本当の親ではなかったの?」
ヤマシロさんは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「…ロージイさん、あの時「チル」って娘が来たそうですね?メアリアンさんに導かれて。
アンディ様に聞きました。」
「ええ。」
「そこで自分の姉は「マージ」だと言ったんでしょ。」
「その通りよ。」
「うーん、チルとマージの本当の両親は、まだ三歳のチルをつれて、グランディに潜入した。
無害な親子連れを装ってね。
だけど、セピアが住んでいた忍びの里に侵入する前に、命を落としてチルだけが残ってたのです。」
「えっ。」
「多分、侵入者を阻むワナにかかったのでしょう。
泣いていたチルだけが保護されて、セピアと一緒に育てられた。自分の出自を知らないチルはそこで普通に暮らしていたのです。そしてセピアの許嫁になった?のかな。」
ヤマシロさんの言葉は歯切れが悪かった。
「…そしてチルさんが亡くなったのね?」
「ええ。姉のマージは五歳歳上で、妹を可愛がっていたし覚えていた。
妹と両親はグランディでお仕事をしている。
自分もシードラゴンで頑張ればそのうち会える、と言われていたそうです。
そして偽物の父親とシードラゴンに侵入した。」
「…酷い話よね。」
「忍びなんて、王家の影なんてそんなものです。
アンディ様がその実力で成り上がって、アラン様に認められたから。
奥方のレイカさんが王妃様のお気に入りで私達にも気を使ってくださるから、最近はなかなか人間らしく生きてますけどね。」
そこでため息をつく。
「アンディ様のお母さんだって草だった。バレて殺されたのです。ギガントの手のものに。」
「そんな。」
「マージはグランディを恨んでる。
特にセピアを。後味が悪いことになりそうですな。」
ヤマシロさんの顔は強張っていた。
「とにかく、セピアは貴女に会いたがってますよ。
顔を見せてやって下さいな。」
ロンドさんが明るい声を出す。
「ええ、私達も会いたいですよ。心配でたまりませんでした。なあ、ロージイ。」
「ええ。兄さん。」
そして馬車は病院についた。




