彼を救ったもの。
「わかった!」
病院名を聞いてアンディ様は風の様に走りさった。
「石に包まれたとは?どう言うことでござる?」
エドワード様も私達も顔を見合わせた。
「ええ、不思議な話なんです。
命の危険が近づいたセピアを石?ガラス?が覆っていたのです。巨大な卵状の殻の中でセピアは敵の攻撃から守られていた。
その殻の色はトパーズ色でしたよ。
それを海竜様と神龍様が運んでくださった。
レイカさんの頼みに応じて。」
「え、レイカの。」
ランドさんが目を見開く。
「ええ。海竜様ことグラッシーの名付け親ですからね、レイカさんは。懐かれておられる。」
「加護の金貨を貰えたのもレイカさんのおかげですものね。」
メアリアンさんは微笑んだ。
「殻を作って守る…そんなことがあるのですか?!」
兄が声をあげた。
「実際この目で見るまでは信じられなかったですよ。海竜様のおっしゃるには、自分の金貨の加護と、祈りがこもったトパーズのおかげだと。
…そう、貴女のおかげですよ、ロージイさん。
いやはや、凄いチカラだ。」
ヤマシロさんはじっと私を見る。
「まさか。私のトパーズにそんなチカラが?」
手が震える。
「ええ。黄色い光となってセピアを守っていました。」
「セピアさんを守った…?私が?」
信じられない。
「その石を神獣様が割り、中のセピアは病院に運ばれました。まだ意識は戻ってませんが、命の危機は脱した、と。
手も折れて満身創痍ですけどね。」
「そうか!これでひと安心でござるな。拙者殿も引き上げるでごわす。
ケイジ殿、リラさん。邪魔をしたでごわすな。ロージイさん、チカラを貸してくれてありがとうでごわす。」
「い、いいえ。」
私とリラさんは頭を下げる。
「エドワード様、いつでもまたお越し下さいませ。
…その、セピアさんの病院はどこか教えていただいても?」
「グランディ王立病院です。グラン湖から1番近いところです。」
ヤマシロさんが答えた。
兄の申し出に、にこやかに笑うエドワード様。
「うむ。しばらくは面会謝絶でござろうが、落ち着いたら、是非見舞いに行ってやってくだされ。特にロージイ嬢。
貴女がいけばセピアも喜ぶでござろう。」
「そ、そんな。私なんかが。」
すっ…と私の手を取るのはメアリアン様だ。
「何をおっしゃるの。貴女が彼を救ったのよ。」
「ええ。アイツに代わってお礼を申し上げます。大事な仕事仲間なんだ。長い付き合いなんですよ。」
頭を深く下げるヤマシロさん。
そして頭をあげて外に出て行こうとする。
「それでは私はアンディ様を追いかけますので。」
「ヤマシロ、後で拙者も行くでござるよ。お互いに情報を擦り合わせるでごわす。
さ、メアリアンさん、ブルーウォーターに送り申す。」
「ええ、エドワード様。ロージイさん、ご機嫌よう。」
みんなが出ていった。
気が抜けて座り込む。
「驚いたな…でもセピアさんは無事なんだ!良かったな!ロージイ。」
「ええ、兄さん。」
「俺達も嬉しいでがんすよ。」
「そうでやんす。なんのかんのと一緒にいたでやすからね。」
ヤッキーやガリーも頷く。
横でリラさんやブランさんとビルさんも。
セピアさん。貴方はみんなに受け入れられて、心配されてるの。
早く良くなってね。
「多分事情聴取もあるだろうから、すぐに会えないだろうが…そのうち見舞いに行かなくてはな。」
ケイジ兄の言葉に頷いた。
その夜。ラージイ兄が顔を出した。
「アラン様のところにアンディ様が顔を出して、ご報告をされていた。
セピアさんの意識は戻ったそうだよ。」
「良かった…。」
「ロージイ、ケイジ。コハク国がまず、シードラゴン島に影を送り込んで、そしてそれを暴いたウチの国の影と騎士をマナカ国で痛めつけたんだ。
それなりの騒ぎになっている。」
「…ええ。」
「ラージイ兄さん。騎士って。まさか。」
嫌な予感がする。
「ジークさんだ。セピアさんと一緒に任務にあたっていた。」
「そういえば一緒にご挨拶されましたね。出かける前に。」
ケイジ兄の顔も引き攣る。
「そうか、彼もここに来られたのか。重症だ。白狐様の加護のついた腕輪のおかげで生きている。
その腕輪は彼の義妹である許嫁が作ったもので、彼女の気持ちが込められているんだ。無事に帰るように、と。それで帰ってこれたんだよ。」
「まあそれは。ラージイさん。セピアさんのペンダントみたいですね。」
リラさんが目を潤ませて感動している。
それなのに。
彼の為に腕輪を作ったのに破局したのか。
……その腕輪で生還できたというのに。
その二日後。
「お願いだ!彼女の!マージの行方を占ってくれ!
シードラゴン島を出ていって行方知れずなんだっ!」
ロッキー・ロック王子が現れた。
…彼の髪色は青い色がすっかり落ちて銀髪になっていた。




