トパーズ色の瞳には。
誤字報告ありがとうございます。
「つまりなんだ?セピアにその…過去の出来事が関わってこんなことになったってか?」
アンディ様が声をあげる。
「…すみません。そこまではわかりませんけども。
先程からトパーズの色のイメージを強く感じるのです。」
「…そうか。」
「アンディ様、多分そうですわね。
…今、小さな女の子が来ていますわ。」
メアリアン様の声が響き渡った。
その目は半眼になって何かをとらえている。
「ええっ!」
…小さい女の子が来ているですって!?
そして水晶玉を指差す巫女姫。
「訴えてますの。『ワタシの名前はチル。お姉ちゃんのマージが、ごめんなさい。』と。トパーズ色の瞳を涙でうるませて。水晶玉の上にいますわ。」
確かに。水晶玉がトパーズ色に点滅したように…見える。
蛍の光のように儚く。か弱く。
「チルか…間違いなくホンモノだ。その名前が出るとはな。
あの日、セピアのやつがオレに縋り付いて泣きながら叫んでいた名前だよ。」
アンディ様の顔が歪む。
「ね、ねえ。メアリアン。魂下ろしをする?」
ランドさんがメアリアンさんの袖口を引っ張る。
「…いいえ。それはセピアさんが見つかってから。
彼と彼女を会わせてあげましょう…」
メアリアンさんは慈母の様に微笑み、水晶玉のちょっと上を見つめる。
「うむ。それには土地神様のお力が必要でごわすな!
ネモ様にお願いして立ち会ってもらいましょう!
長丁場になったら拙者だけでは荷が重いですな!」
エドワード様はウンウンと頷く。
「そうだな。エドワード。これは洒落にならない話だ。ネモさんにも聞いてもらわなくては。
もしかしたらリード様にもご同席を願うかもな。
…側妃絡みの事件だ。」
十年くらい前にあった、リード様暗殺未遂事件。
第三王子の母である側妃が首謀者だった。
その時王妃様はリード様を庇って深い傷を負われた。
側妃達は逃げたが、彼らは途中でセピアさん達の住んでいる忍びの里を襲って、強奪と殺戮をした。
数少ない生き残りがセピアさんだと言う。
(セピアさんの家族同然で許嫁のような少女もたった10歳で命を落としたのだ。)
そして、側妃派の残党狩りをしたのがアンディ様だと言う話だ。
「おう!ネモ様は可哀想な女性に弱い。きっとチカラを貸してくれるでごわすよ。」
「マージって。こないだのシードラゴン島の奴らですね?」
ケイジ兄がポツンと言う。
「……ああ、かなりの因縁だぞ、これは。」
アンディ様は頭を抱えた。
「チルは言ってますわ。『お姉さんは私が死んだのはグランディのせいだと思ってる。一緒に育ったのに、自分だけ生き残ったセピアに憎しみを抱いてるの。』と泣きながらね。」
「セピアは悪くないでござろう。奴だってその時10歳の子供だったでごわすからな。」
エドワード様が憤慨する。
彼のようにまっすぐな人間にはわからないのだ。
やり場のない怒りをぶつけてしまう気持ちが。
「メアリアンさん、チルは他に何か言ってないか?」
「…『お姉さんがセピアを殺そうとしてる。黄色い光と海竜様の金貨のチカラが守ってるけど、死にそうなの、早く助けて!!』と。」
「何だと!なあ、ロージイ!場所を占えないか!
セピアが捕まっている所だ!」
素早くカードを手繰る。そしてめくる。
「中央」「西南」「洞窟」
「ここから、西南の方向。マナカ国の洞窟ですわ!」
「そうか!」
アンディ様が立ち上がる。
「アンディ殿、行くのでござるか?」
「当たり前だろう?エドワード。」
その目と髪は吊り上がっている。
「落ち着くでござる!
闇雲に行っても見つからないでござるよ。
しかも他所の国だ。王家の影が大勢で押し寄せたら国際問題でござろう。」
エドワード様が必死でアンディ様を押さえている。
「ロージイ、もう少し絞りこめないか、頼む!
セピアは死にかけてんだろ…早くしねえと。」
頭を掻きむしるアンディ様だ。
クマの様にウロウロと歩き回っている。
「あのアンディ様がこんなに理性を無くすとは。」
ケイジ兄が立ち尽くす。
「ええ、ケイジ様。セピアさんは大事に思われてるでやんすね。」
ヤッキーやガリーも目を丸くしている。
「そうだ、ネモ様に連絡を取ってみるでござるよ。
動物達の目を使って探ってもらうでござる。
マナカ国の洞窟とわかっていればすぐに判明するでごわす!
何、拙者達の希望を無下にするネモ様ではござらぬ。」
「そうだな!エドワード!その方が早いか!」
私も必死でカードをめくる。何か手がかりは出ないか。
「石」「湖」「グランディ」
えっ?
そこに走りこんできたのはヤマシロさん?
「アンディ様!海竜様と神龍様のお力で、セピアを確保しました!」
「ホントか!?ヤマシロ!」
「ええ、レイカさんのお力ですよ!ニ神獣に頼んでくれたんです。
石に包まれたセピアはグラン湖に運ばれたんです。
神獣様たちのチカラで命は取り留めました!
今病院に運ばれたところです。」
満面の笑みのヤマシロさんだった。
「ブルーウォーター公国物語」の「214話 真打ち登場」にリンクしてます。
どうぞ、そちらも合わせてお読みください。




