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ロージイの話。〜ずっとあなたが好きでした。だけど卒業式の日にお別れですか。のスピンオフ。  作者: 雷鳥文庫


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少しずつ進んでいく。

 私とケイジ兄との説得?説教でラージイ兄はリラ様にプロポーズした。

夜景が見えるレストランで。

場所を教えてくれて、押さえてくれたのはビルさんだ。

もちろん上手く行った。


その結果を次の日、伝えに来たラージイ兄。

「おめでとう、兄貴。」

「おめでとう。ラージイ兄さん。良かったわ。」


「ありがとう…」

珍しいことに今日ホテルの客は少ない。常連が数人だけだ。

手早く仕事を済ませて、みんなで夕食のテーブルを囲む。


「良かったでやんすね。」「まったくでがす。」

ヤッキーもガリーも強面の顔をほころばせている。

「ありがとう!良いワインを持ってきたからね、みんなで開けようか。」

ラージイ兄がテーブルの下のカバンから赤ワインを出す。

歓声があがった。

ヤッキーとビルさんが頷く。

二人は飲まずに夜当番をやってくれるんだな。

後で何か差し入れなくては。


「おめでとう御座います。ふふふ。ビルが私にプロポーズしてくれたのもそのレストランなんですよ。」

ブランさんが優しく微笑む。

「…ええ、先日やり直しのプロポーズをね…」

「そうだったの。貴女方は一度別れて遠回りをされたのですものね。」


なんだかいい話を聞いた気がする。

お互いに労わる気持ちはきっと続いていたのだ。


「本当は洒落た店や場所にお詳しいのはサリーお嬢様なんですけどね。教えていただいたのです。」


サリー様。ご無沙汰しているがお元気でいらっしゃるだろうか。

彼女の婚約者のサード様は私を蛇蝎のように嫌ってらっしゃる。

もうお会いすることは出来ないのだろうか…。


「ロージイさん。ダン様もサリーお嬢様も内心貴女の事は気にかけておいでですよ。」

ビルさんの表情も優しい。


「それですぐにお式をあげるのですか?」

「うーん、どうかな。彼女のお仕事の事もあるし。」


煮え切らない兄。婚約するだけで精一杯でその後のお話まで出来てないんだわね。


「あっしらはすぐにご結婚して、リラ様がホテルをおやりになると思ってたでがんす。」

ガリーがワインを飲みながら言う。

「そうでやんすな。オレら二人が交代でひとりずつ、本館と別館に見張りに行くとおもっていたでやんす。」

ヤッキーも頷く。


「そうだな、その場合ララさんも良ければ住み込んで働いて貰おうと思ってはいるんだが。」


「そうだね。ラージイ兄さん。それが安心だ。

女性のひとり暮らしではね、何かと物騒だし。

ホテルに彼女達が住み込むなら兄さんもそこに住むんだろ?

今の家を引き上げて。」

ケイジ兄がワインをラージイ兄に注ぎながら言う。


「うん、そうなるな。少し改装、増築しなくてはな。」

「じゃあ今の護衛を兼ねた従業員のガーデン夫妻も、新居というかホテルにも付いて来てくださるの?」


元騎士の40代の夫婦。ラージイ兄さんへの護衛としてアラン様が紹介してくださったのだ。

今は兄が直接雇用している。


「うん、そうだね。快諾してくれたよ。

ホテル業務も手伝ってくれるって。」


「じゃあそっちの護衛は無しでやんすね。姐さん。」

「かもね。」

ヤッキーに頷き、ラージイ兄に向き直る。

「新婚家庭と同居だとララさんが気まずくないかしら。こちらに住んでもらっても良いのよ。」


「ロージイ。」

ケイジ兄が微妙な顔をする。

「それはどうかな。オレが思うにララさんはな、オマエにライバル意識を持ってると思うな。」


「え?」


「同級生だったろ?両方とも美貌で有名だった。それにオマエは侍女試験にすんなりと受かったろ?」

「そんな事はない…と言いたいけど、第三者から見ればそうかもね。」


他人の心は複雑だ。


「その辺の事もリラさんに話さないとな。侍女の仕事を辞めてもらえるか。ララさんもホテルを手伝う気があるのか。」

真剣な顔のラージイ兄。


「そうね、こちらが良かれと思ってもララさんにはララさんの人生があるのだから。

でも兄さん、リラ様には最初、転職のお誘いというかお仕事の話はしてたんでしょう?

リラ様はそれはわかっているわよ。」

ワインを口に含む。芳醇で美味しいワインだ。


「そうだな、ロージイ。ララさんはあちこちの店の売り子の手伝いをしてはいるが、正式には勤めてないんだろ?

リラさんがいなくなったらひとりで家賃を払う事になる。それくらいならと思ったんだけどねえ。」

ラージイ兄はため息を深々とついた。


多分リラ様は侍女を辞めてホテルを手伝ってくれる気はある。

先日の占いと言うか話し合いの感触でわかる。

お城の侍女はそれなりにギスギスした職場だ。

本人も長年の疲れが出てくる頃だろうし、ララさんが侍女を勝手に辞めたことで風当たりも強いはずだ。


それに。見目麗しく、将来性もあるラージイ兄さんとの婚約だ。妬まれることもあるだろうし。


「ホテルの改装と増築が済むまではここを手伝って頂いたら良いと思うの。研修代わりになるだろうし。」

「うん、仕事の流れもわかるということか。」


それに、怪我をしたララさんとリラ様をしばらく泊めていた。一緒に暮らしてはいたし、気心も知れて来ていたとは思う。


リラ様はともかく、ララさんは違ったのか。



「宜しくお願いします。」

五日後。仕事を辞めたリラ様が来られた。


ララさんは来なかった。



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