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ロージイの話。〜ずっとあなたが好きでした。だけど卒業式の日にお別れですか。のスピンオフ。  作者: 雷鳥文庫


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兄の気持ち。

 それから少しずつ占いのお客様が増えた。

完全紹介制の予約のみなのだが、

「リラ様から聞きましたの。」

と言う方や、

「彼女を占って下さらないかしら。」

とリラ様自ら連れて来られる方。


そうしてまた、口コミで広がって行く。


女性専用のホテルもなかなか評判がいい。

「ロージイ。もう一つ建てるというか、経営するのはどうかな。」

自室で私がくつろいでいたら、ラージイ兄が入ってきてそんな事を言い出した。

「別館って事?」

「そうなんだ。ここは王都の中でも良い場所だ。

王宮の東側にある。反対の西側にどうかな。」


東側はつまりマナカ国側で、西側はブルーウォーター国側だ。

「兄さん。いい物件があるの?」

「ああ。もと男爵の別荘でな。売りに出されてる。少し小高い丘の上にあって、グラン湖も見えるんだ。」

腕組みをして考えこむ。

「…ちょっとここと離れているわね。行き来が大変よ。誰か雇わなくては。」


「それなんだが。リラ嬢に任せようと思う…というか、彼女と結婚しようと思うんだ。」

頭を掻いて赤くなるラージイ兄。

その表情は少年の様でいつもの冷静さがない。

「え、いつのまに。」

なんですって?

「兄貴、俺も聞いていないよ。」

ケイジ兄もびっくりして寄ってきた。


「うん、まだ彼女にも何も言ってないからね。」

「はあっ?!先走んなよ!」

「ラージイ兄さん、私もそう思うわ。プロポーズもまだなのね?その言い方では。」

「ああ。」

「…頭痛くなってきたわ。お付き合いは……してるのよね?」

「いいや?」

なんなの?この人。

ケイジ兄もラージイ兄を恐ろしいものを見るような目で見る。

「何考えてるんだ?ラージイ兄貴。」


そこで頭をかかえるラージイ兄。

「いかん、自分でも先走ってしまったな。

こほん。まずここの別館というか、系列にもう一件ホテルをオープンしようと思ったことが発端なんだ。」

「…ああ。」

ケイジ兄が頷く。


それは私も理解できる。

ニーズも多いし、満室続きなのだ。

……リラさん達は流石に引越した。近くのアパートに。

時々、ヤッキーやガリー達に様子を見に行ってもらっている。


「それでそこを任せるには誰がいいかな?と思っていたら、彼女を思いついたんだ。」


なるほど。


「それと同時に彼女への自分の気持ちを自覚した。」

「そりゃねえ。兄貴があのリラ嬢を気に言ってることはわかってたし、あの人はまっすぐな気質の良い人だ。

お相手にはいいと思う。

だけど、1人で突っ走るなよ。」

「ええ、そうよ。彼女の気持ちは?

そりゃラージイ兄に気があるような気もするけど。」


「うん。」

部屋の中をうろうろと歩きまわるラージイ兄。

そしてドサリと椅子に座って腕組みをする。

「とにかく…彼女に気持ちを伝えなくてはな。」

「そうだよ。恋人になってからだろ?その先は。」


「そうよ、それに彼女は侍女の仕事にホコリを持っているわ。結婚して辞めて、ホテルをやってくれる保証はないわよ。」


「…そうか。そうだな。」


まったく。結婚したら問答無用で嫁ぎ先の仕事を手伝うと思っているのかしら。

この兄はこんなにポンコツだったか。


「ラージイ兄貴。」

ケイジ兄がため息をつく。

「兄貴は今まで真面目で。浮いた噂ひとつなくてさ。

俺やロージイの学費のことで苦労をかけて。

そこそこの地位についたら玉の輿狙いの侍女たちにまとわりつかれていたよね。

それで女性嫌いというか遠ざけてきた。」


ラージイ兄も見かけは良い。

侍女や女官の人気が高いと聞いたことはある。


「ああ、まあな。学費のことなんかはオマエたちが気にすることはないよ。

ウチの親がどうしようもなかったからさ。」


「それで女性関係は慎重だったし、女性心には疎いよね。」

しみじみと労るようにケイジ兄が言う。

「私もそう思うわ。とりあえず今度デートに誘いなさいよ?」

「えっ、そうか。指輪を用意した方が…いいかな。」


「気が早いわよ。」

はあっ。

ため息が出た。


 それから一週間後。

「ロージイさん、私の占いをお願いできますか?」

リラ様が私を訪ねてこられた。

思いつめた顔をして。


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