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ロージイの話。〜ずっとあなたが好きでした。だけど卒業式の日にお別れですか。のスピンオフ。  作者: 雷鳥文庫


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お土産。

「こんにちはロージイさん。これ、お土産です。」

その二日後ホテルの受付に座っていたら、ニコニコ顔のセピアさんが現れた。

「あら、セピアさん。ブルーウォーターに行っていたのでは?」

「ええ。マーズ様の結婚式の警備と、その後王妃様の護衛をして、グランディに戻って参りました。」

と言うことは王妃様は今こちらにいらっしゃるのか。


「それでね、マーズ様の式の引き出物のお菓子なんですけど。

どうせ俺1人じゃ食い切れないから皆さんで。コンドラ本舗のものですよ。」

可愛いパッケージのお菓子だ。

フタを開けると中にズラリと焼き菓子が並んでいる。

「あら、すみません。美味しそう。」

隣にいたブランさんが相好を崩して受付とった。


「ロージイさん。マーズ様の式はお楽しみ抽選会がありましてね。鳥さんが持ってきたカードに書かれてる番号のものがいただけるンです。

それがネモ様のすごいところでね、私ら護衛の分までちゃあんとあるんですよ。」


そして今度は薄い箱を私に差し出す。

「俺には勿体ない。ロージイさん、使ってくださいよ。」

開けると美しい薄荷色の絹のハンカチが入っていた。


でも、これは?この滑らかな光沢は?


「ま、まさかこれは、幻のソレイユ産のシルク!

または別名、モスマンシルクではないですか?」


ビルさんが声をあげる。


「ダン様が入手するのにとても苦労した事があって!

……あるご令嬢の結婚式にですけどね。二年がかりで用意したのです。

今度は、サリー様の式のため探されてます!

でも最近なかなか手に入らないんですよ。」


「そうなの?そんな貴重なものなんですか。」

「うーん、コレはね。多分新郎新婦の衣装の余り布なんですよ。それをハンカチにしたのだと。」

セピアさんが頭を掻く。

「ええ、聞いてます。マーズさんの目の色の薄荷色に染めたんですってね。最高のシルクを。

ネモ様が弟夫婦のために手に入れたと評判です。

その一部でも貴重ですよ!」

ブランさんも興奮している。


そんなに大層なものなのか。

ん?緑色の光が薄っすらとまとわりついているようだわ。

「何か緑色の光が見えませんか?」


私の言葉にセピアさんは目を丸くする。


「 ! ネモ様は土地神の守護をお持ちです。こないだの式でもその光を時々纏われてましたよ。

緑色の光ですが。そのハンカチにもご利益があるのですね?

残念ながらハンカチの光は私には見えませんけど。」


確かに。清浄な気を感じる。

「それなら、尚更貴方が持つべきよ。危険から守ってくれるんじゃないかしら。

危ないお仕事でしょう?」


私の言葉にセピアさんの目つきが真剣になる。


「…いえ、貴女に持っていて欲しいンです。

オレが近くにいられないときもあります。

あのシードラゴンのロッキー王子は島に戻ったけど、追い払らわれたという話です。王位継承権も失って。

神獣の怒りをかったからです。

またここに来るかもしれない。」

「えっ。」

「ロージイさん、貴女は自分がどれだけ魅力的かわかってない。

あのバカ王子は貴女に恋をしてますよ。

何もかも失った男は、ナニをするかわかりませんよ。」

えっ、洒落?

「……確かに。ヤケになるかもな。」

ケイジ兄がいつのまにか近くに来ていた。


「ね、私にはこのお守りがありますから。」

セピアさんが胸元から引っ張りだして見せたのは、あのトパーズのペンダントだ。


「いつもね、ここを温めてくれるンですよ。」

胸に手をやるセピアさん。

「役に立ってるのなら、いいのだけど。」

私の言葉にニコリと笑って、手を伸ばしてくる王家の影。


ピシッ!

「あたっ!」

その手を払うのはケイジ兄だ。


「油断も隙もない。すぐにロージイに触ろうとするな。ナチュラルに抱きしめようとしただろ!」

「ええー、親愛と御礼のハグなのにー!」

「ハグされることのどこが御礼だっ!」


「ははは。厳しいですね。

ところでダンさんがサリーさんの為にモスマンシルクが本気で欲しいのなら、サードさんを通じて、レプトンさんからネモ様に頼んでもらえばいいと思います。

サードさんはレプトンさんの仲良しのご兄弟。

レプトンさんは公宮で働いていたから、ネモさんやマーズさんとも仲が宜しい。

こないだマーズさんの式で友人代表でスピーチを読んだくらいだ。

モスマンシルクはね、UMAのモスマンが作ってるんですよ。

ネモさんはモスマンと仲が良いと聞いています。」


「なるほど。ダン様にお伝えしましょう。」

ビルさんが頭を下げる。

「サードさんはね、悪い人じゃ無いけど、多分ドレスのことは言わなければわからなかった、と思いますよ。」


「貴方は随分と気が回るのね?」

「フフフ、ロージイさん。私はサリーさんとも馴染みだ。

綺麗な花嫁さんになって欲しいだけですよ。

あ、ところでメルヴィン姉妹はあのアパートは引き払ったようですね?」

「ええ、とりあえずここのホテルの一室をお貸ししてるの。」

「格安で?」

ニヤリと笑うセピアさん。

「貴方達兄妹も人が良い。」

「だって、あの王子が私に会おうとして怪我をしたようなものよ。

それに、ラージイ兄はリラ様を気にいってるわ。

ここにいる方が護衛もいるし安心よ。」


「まあ、そうですね。」

そしてセピアさんは私の手を取って握った。

「こら!」

「怖い兄さんがいるから、今日は握手だけ。

また会いに来ますよ、ロージイさん。」


そしてあっという間に消えた。


「まったく。調子が良いヤツだ。

なあ、もうあのバカ王子が失脚したなら仮の婚約者役は要らないんじゃないか?」


「ケイジ兄さんったら。ヤケになって押しかけてくるかもって言ってたじゃない。」


プンプン怒るケイジ兄を見ながらも、しばらくはこのままでいい、と思う私だった。






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