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ロージイの話。〜ずっとあなたが好きでした。だけど卒業式の日にお別れですか。のスピンオフ。  作者: 雷鳥文庫


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30/51

影の男がもたらすもの。

「やあ、こんにちは。ロージイのネエさん。」

それから二日程経った日の事だ。

そろそろ改装も終わってホテルに戻るために荷物を運んでいた。

両手に占い雑貨を持ってホテル玄関のドアを開けようとしたら、すっと黒い影が出てきてドアを開けてくれた。

「セピアさん?」

「へへ、グランディでの用事がありましたからネ。寄ってみました。それ、持ちますよ。」

「ありがとう。」

「占いのお道具ですかア。」

「ええ、この小部屋までお願いできる?」


「おや、セピアの旦那ですかい。」

「やあ、ガリーにヤッキーこんちわ。相変わらず血色良くて元気そうだね。」


久しぶりに見る影の男は相変わらず調子が良かった。

また私達を監視してアンディ様に報告するのだろうか。

今回は黒いネクタイに黒いスーツだ。まるで喪服の様な。

「あ、気になります?うん、葬式の帰りなんですよ。はは。」

「……。」

深く聞いてはいけない気がする。


「このお部屋で占いのお仕事を再開ですか。オレも今度占ってもらおうかな。気になる女性達との相性を。」

「ふふふ、女性()なのね。」

荷物を受け取り並べていく。

「ありがとう、助かりましたわ。……あ。ちょっとまって。」

袋の奥からトパーズのペンダントを出す。


「これ。いつか頼まれたもの。貴方が無事であるように一応?祈りを込めておいたわ。

ま、私の力なんか微々たるものなんだけど。」


目を見張るセピアさん。そして満面の笑みを浮かべる。

「……嗚呼!感激だ。ちゃんと覚えてて下さったんですね!」

「当たり前じゃないの。」

そしてペンダントを手に取る。

「嬉しいなあ。ロージイのネエさんの加護を感じるよ。」

うわあ、うわあと子供の様に喜んで、手にペンダントを握りしめる。


「大事にします!」


屈託の無い表情にこちらの気持ちも明るくなる。

「お代はいかほど?」

「え。いいわよ、お世話になったし。」


「そうですかあ!じゃあ御礼にハグしてあげますねえ!」


にこやかに抱きついて来ようとする。

「それのどこが御礼なのよ!」

「そうだよ!姐さんにお触り禁止!」

後ろにいたザリーが引っ剥がす。


もちろん彼らがいるとわかってのおふざけだ。


「あ、そうだわ。代わりと言っては何だけど聞きたいことが。」

占いの水晶玉をテーブルに置きながら話をする。


「何ですか?オレの好みのタイプですか?」

「もう。ふざけないで。実はどこかの病院に身元不明の若い女性がいないかしら。

墓地の近くの病院かも知れないんだけど。」

セピアさんはポカンとした顔をした。

「それは姐さんの占いで?」

「ええ、そうなんだけど。」


その時、

コトン。


先日メルヴィン様から預かったラピスラズリのブレスレットが床に落ちた。

「あら、紙袋に穴が空いてたわ。」


結局あの後、

「ロージイ。このブレスレットはこちらで預かろう。あまり良く無いんだろう?

彼女の手元に置いておくのもな。」

「ラージイ兄さん。」

その真剣な顔で思ったよりメルヴィン様を気にかけてるんだな、と察せられた。


確かに今までもいわく付きの品を預かったことはある。

その時は使って無い部屋に押し込んで、風通しと日当たりの良い出窓に置いたりした。

「お天道様の光に当てるのですかい?」

「気休めだけどね。」

「そんな、コメに付いた虫みたいに悪いものが飛んでいくでやんすか?」

ヤッキーとガリーは胡散臭そうに言ったが、

少なくとも瘴気や、身体に悪い薬品が塗られてるのだったら日光に晒す事で減る場合がある。

そしてほとぼりが冷めた頃に燃やせる物は(人形とか)焚き上げたこともあった。


今回のブレスレッドもそうやって日当たりの良いところで日光消毒?していたのだったのだが。

さて、これも出窓に置いて…と手に取る。


「…ロージイさん、それはどうしたんですか?」

さっきとは打って変わって真剣な声と眼差しでこちらに寄ってくるセピアさん。

「依頼人から預かったの。なんか悪いものが纏わりついていたんだけど。すっかり取れたみたい?

それに色も薄くなって。」


「へええ、お天道様は偉大でやんすねえ。」

ヤッキーの揶揄する口調を遮って、

「失礼。ちょっと見せてもらえますか。」

セピアさんは真剣な顔でブレスレットを見る。


「……これは、ラピスラズリではなくて染めたハウライト。」

「ええ、私もそう思うわ。」

「これに似た物を見た事があります。」

「行方不明の女性が持っていたブレスレットなの。

その方のお姉様が依頼人でね。

ね、どこかに身元がわからない若い女性がいないかしら。二十歳ぐらいで、見事な金髪で色白。目は青みがかったグリーン。」


それを聞いたセピアさんの口元があがる。


もしかしたら?心当たりが?


「行き倒れみたいになってたり?」

「そうかも。生死は不明なのよ。」


ああー、と頭に手をやる王家の影。

「うん、心当たりありますよ。色々とこれで解決しそうだ。」


そして私の手を取った。


「ありがとう、ロージイさん。貴女に会いに来て良かった。」


セピアさんは満面の笑みを浮かべるのだった。

挿絵(By みてみん)

ブレスレットのイメージです。

これはハウライト染めではないですが。

私の私物です。

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― 新着の感想 ―
こんなブレスレットでしたか。 先入観で、念珠のようなものが思い浮かんでいました。 私のは還暦の記念に。娘たちには健康と無事故を祈ってというもの。 球体だけでなく、ビーズにも角形や筒形があるのに、今一つ…
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