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ロージイの話。〜ずっとあなたが好きでした。だけど卒業式の日にお別れですか。のスピンオフ。  作者: 雷鳥文庫


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25/62

過去。

誤字報告ありがとうございます。

 その日の昼過ぎ。

「ロージイ!」

サリー様が尋ねてきた。

「どうして!どうして辞めちゃったの!商会からいなくなるなんて。

それにブランも、ビルも!ヤッキーにガリーも!」


わああ、と私に抱きついて泣きじゃくるサリーさん。

「サリー様。」

ブランさんが出てきて背中を撫でる。

「もう、私達は引退する歳なんですよ。」


「お嬢様。サード様との縁談はどうなったのですか?」

ビルさんがサリー様に尋ねる。

「……今までご一緒していたの。父にミッドランド侯爵ご夫妻とサード様が挨拶に来てくださって。

そしてみんなに報告しようとしたら、いなくて。」

「それではもう決まりですね。」

私の声に身を起こすサリー様に、ハンカチを貸す。


「おお、おめでとう御座います、サリー様。」

「本当に。お幸せに。」

ビルさんとブランさんも優しく微笑む。

「ビル、ブラン。二人は私の第二の両親なの。ずっと側にいてくれると思っていたのに。」

「勿体無いことですわ。」

ブランさんの目は赤い。

「だって。小さい頃はお父様はお仕事で。お母様はご静養なさっていて。

二人が私を育ててくれた様なものだもの。」

「ええ、私達も自分の娘の様に思っておりました。」

ビルさんの顔にも慈愛の笑みが浮かぶ。

「私のせいなの?ブランがっ、ビルのお嫁さんになるって聞いて、お嫁になんか行かないでっ!って言ったから?それで私のことをずっと怒ってたの?それで辞めるの?」

ぐずぐずと泣きだすサリー様。


おや。そんな事情が?


「いいえ、違いますよ。あの時お嬢様はまだ五つ。お寂しくて言ってしまったのはわかってますの。」

ブランさんがサリー様を優しくなでる。

「こほん。旦那様ですよ。」

ビルさんが苦笑する。

「せめてお嬢様が、もう少し大きくなるまではブランに乳母代わり、ばあやかねえや代わりをやってくれと。三年待てとのお約束でした。」

そこでブランさんも、

「私が我が子をもてば、お嬢様への関心が薄れると思われたのでしょう。」

と苦笑する。


「そんな。私弟や妹も欲しかったの。ブランの子がいたら可愛がったと思う。」

サリー様はベソを掻いている。自分のせいで二人を引き裂いた罪悪感が彼女を苦しめてる。



「え。でもその後も、お二人は御結婚なさってなかったで、がすよね?」

ヤッキーがおずおずと切り出す。

「オホホ。それはビルが待ちきれずに浮気したからですわ!新しい女性従業員に。」

横目でジロリとビルさんを見るブランさん。

「……やめておくれよ、ブラン。」

肩をすぼめるビリーさんだ。

あら。色々あったのね。


ビルさんをは汗をハンカチで拭う。

「ビル。最低。」

「サリー様…そんな。」

目をショボショボさせて俯く。


「あの頃は人の出入りが多くって。沢山若い子が入って来ました。指導をしているうちに仲良くなって。」

「でも、結果振られたの。二股かけられてたのよね。」

ブランさんが片方の口元をあげて笑う。

「面目ない。」

「だけどね、その彼女も二股?もっとかしら。かけられていたの。やはり一緒に入ってきた若い男にね。」


「えっ。」


「その男が付き合っていたひとりが私の妹だったの。」

「それは、私に似てるとと言う?」

「ええ、ロージイさんに。赤い髪も。トパーズの瞳も。その頃商会に出入りしていたの。私に会いに。

まさか、あの男にたぶらかされるとは思わなかった。」

深いため息をついたブランさん。


「それでその女ったらしと、ビルさんの恋人はどうなったんでやんすか?もうここにはいないですね?」


「そうだよ、ヤッキー。その男はある日突然辞めたんだ。独立するといって。そしてね、女子従業員をごっそり連れていった。」

「私の妹も付いていったの。だけど、ある日ボロボロになって帰ってきた。身体をこわして。男は夜逃げ、他の従業員の行方もわからないけど。」


「……ふーん、聞いていたら商売仇が仕組んだと思われますわね。」

「リーリエさん!」


そこには王家の影の女性がいた。


「サリーさんの護衛に付いてきたのですよ。

ふふふ、私はね本当はハニトラ専門のクノイチ。」


うふふと妖艶に身をくねらせるリーリエさん。

片手を頭の後ろに回しての投げキッス。凄い色気だ。

今までと人が変わったようだ。


「うおおおお?」

ヤッキーやガリーの目は釘付けだ。

「その話を聞いてピンと来ましたわよ。

その男も女もグルでダイシ商会を引っ掻き回しにきたんだわ。」


「えっ、ハニトラ専門の方がサード様の近くに?」

サリー様の顔が強張る。


リーリエさんはきょとんとして、

「おほほほ!心配ご無用ですわよ!私はルララ王妃様に命を救われた者。リード様やアラン様のお言いつけでサード様の職場の女性達の護衛をしていただけですわ!毒姫ほどではないけど、面倒なお姫様がいましたから。」

「あっ、噂には聞いたことあります。王妃様の姪っ子の方ですわね。ルルゥ姫とか。」

サリー様が、目を見開いた。

「ええ、神獣様たちに始末されました。

そのルルゥ姫はサード様がお好きだったのですが、サード様にその気はなくて。グイグイくる女性に辟易されていたのですよ。あの方はどこか女性が苦手でしたわね。でも。」

そう言ってリーリエさんは微笑んだ。


「サリー様、貴女には惚れ込んでらっしゃいますよ。ご安心くださいませ。

それに私はこれでも一児の母で未亡人。ふふふ。あんなお坊ちゃまには興味ございませんわ。」

手を口元に当ててコロコロと笑うリーリエさん。


凄いな。じっと見つめる。


「あらあ、ロージイさん。私みたいに大人の魅力ムンムンの女性になりたいの?フフ。ご教授してあげても、良くってよ?貴女にはその資質があるわ。」


えっ。


「やめて下さいよ!ウチの妹を誘惑するのは!」

ケイジ兄がいつのまにか来ていて、声をあげる。


「そうだよ、リーリエ。ふざけるのはやめなよ。

ロージイネエさんはこのままでいいんだよ。」

そこに来たのはセピアさん?

「あら、セピア。」

「仕事だぞ。今、レイカさんとメアリアンさん、ランドさんがこっち、グランディに来てるんだ。

一応ネモ様がご一緒だがね、護衛をしろとアンディ様からの御命令だ。」


するとリーリエさんが真顔になった。

「わかったわ。すぐに行くわ。サリー様、こちらの護衛には騎士団上がりの夫婦がおりますわね?

失礼しますわ。」


「じゃ、ロージイさん。またね。」


そうして慌ただしく2人の王家の影は出ていった。



「つむじ風のようだったわ。」

「そうですな。サリーお嬢様。お話しておきますが、私とブランは正式に結婚しました。」

「ま、まあ!そうなの?おめでとう。良かった。」

「ありがとうございます。そしてね、古株の私達が他の従業員に煙たがれて来たのも事実なんですよ。」

「そんな。」


「サリー様。」

ブランさんが優しい笑みを浮かべる。

「これからはサード様と協力して商会を更に大きくなさいませ。私達の願いですわ。」


サリー様は黙って二人に抱きつくと帰っていった。



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