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ロージイの話。〜ずっとあなたが好きでした。だけど卒業式の日にお別れですか。のスピンオフ。  作者: 雷鳥文庫


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24/58

報告。

 それから何日も忙しくして過ごした。

ホテルの改修工事も進んでいる。

私とケイジ兄はラージイ兄の家に移り住んだ。

ビル・メナードさんとブランさんは、籍を入れて夫婦になったそうだ。


「それはおめでとう御座います。」

「今までと特に変わらないんですけどね。」

頬を染めて微笑むメナード夫妻。


そして二人は正式にダイシ商会を辞めた。それでダイシ商会の寮には居られないので来てもらった。二人でひと部屋で悪いけど。

「狭いけどね。ま、くつろいでくれ。

そうだ、紹介しよう。うちに住み込みで働いてくれてるガーデン夫妻だ。掃除や食事を作ってもらってる。」

ラージイ兄の声に奥から人が出てきた。

「初めまして。ケイジ様、ロージイ様。メナードご夫妻。」


40代くらいのご夫婦だ。ああ、この人達は。

この感じは。まさか王家の影?

「気がつかれましたか?アラン様のご命令で護衛を兼ねております。」

穏やかな表情の中にも鋭い目付きの二人だ。


「ふふふ、私達は元騎士です。特にアンディ殿の部下という訳ではありませんから。ご警戒なさらず。」


「……はい。」


確かに鍛えられた、がっしりとした体格の人達だ。

兄は随分とアラン様に重く用いられているんだな。


その時、ガーデン夫妻が立ち上がった。

殺気がほとばしる。

「誰だ!」


そこにすっと姿を現したのは。

セピア色の髪と、目をした青年だ。


「そんなに警戒しないで下さいよ。ロージイ姐さんにご機嫌伺いに参りました。」

「なんだ、誰か来たと思ったらセピアの旦那か。」

ヤッキー達も小走りでやってきた。

「アンディ様の使いですか?」

元騎士の夫婦の声は硬い。


「まあ、そんなところです。先程アアシュラ様をマナカ国へお送りした帰りですよ。

こちらの様子を見にきたんです。」

人好きのする笑みを浮かべる王家の影。


「そうですか。では居間にどうぞ。」

兄が誘う。




「ヤッキーさん、ガリーさん。ディックさんはね、先日メアリアンさんが除霊してくれましたよ。」

コーヒーを啜りながらセピアさんは目を細める。

え、そうなの?良かった。

「そうなんでやんすか。」「もう心配いらないでがすね。」

二人とも顔を綻ばせる。


「ただね、随分と手こずられてましたよ。流石に毒姫というべきか。

神獣の白狐様が手を貸してくださって、お父上のルーデンベルク氏がとどめをさしたのです。」

「…お父上が。ディック兄貴の。」


「そうですよ、ヤッキーさん。

ディックさんがメアリアンさんに会うまで持ったのは、ルーデンベルク氏のチカラと、ロージイ姐さんのペンダントなんですよ。」


「私のペンダント?」

「ああ!あのトパーズでござんすね!」

ガリーが声をあげる。


「そう。それが無ければ命は無かったと。毒姫に取り殺されていたと。メアリアンさんは言ってました。

あのトパーズには守護のチカラが込められていたと。

ディックさんが怪我をしないように、……幸せになるようにと。」

「ロージイ。オマエすごいな!」

「ケイジ兄さん、そんな。でも、セピアさんそれ本当なの?」


「ええ。」

セピアさんは私を見て憐れみのような慰めのような、複雑な表情をした。


「貴女の祈りのチカラは本物だった。」

「たまたまよ。ジャック、いえディックには色々と助けてもらったから。あの、お礼にと。守護の祈りを込めては見たけど。私はただの占い師だから。メアリアン様みたいな本物の巫女姫とは違うわ…。」


それでも。彼のチカラになれたのか。誇らしさが浮かんでくる。


「ディックさんもね、感謝してました。ただ、負荷がかかったのか相打ちみたいに割れてしまったのです。」

セピアさんは目を閉じた。


「え、割れたの?トパーズが?」

「ええ。もう()()()姿()()()()()()()()()残念ですが。」


「そんな。でも構いません。解呪の手助けになったのでしたら。」


「……そうですか。」


何でセピアさんの方が泣きそうな顔をするの?


「あの美しい宝石が。もうこの世界にないなんて。残念です。」


そんなにトパーズが好きなのか。ならば。

「あの、同じだけのモノが出来るかわかりませんが、セピアさん。貴方にもお守りをご用意しましょうか?」

「えっ!」

目を見開くセピアさん。

「色々お世話になっておりますし。でもね、ディックさんへの効果は思い込みだったと思うのですよ。

私にはとてもそんなチカラは。」


「それならば、」

セピアさんは真顔になる。

「貴女の想いがその奇跡を可能にしたのですよ。」

そして私の目をじっと見た。


「ありがとう、いつでも良いですから、守り石を用意してください。

楽しみにしています。」

深々とセピアさんは私に頭を下げた。


そのまま立ち去ろうとして、

「あ、忘れてました。今日の午後にもサリーさんが帰って来ますよ。サードさんご一家と一緒にね。」

「えっ。」

「それって、ご婚約が整うって事ですね?」

ラージイ兄も目を開く。


「ま、ダンさんとの話しあいをされるのは間違いないですね。」


「おめでたいですな。」

ビルさんは微笑む。サリーさんはこの人達にとっては娘みたいなものなんだ。


「彼等のガードの1人として、それから連絡係として、しばらくグランディにいます。またお会いしましょう。」


そしてセピアさんは掻き消すように消えた。






「ブルーウォーター公国物語」の136話の、「割りと良くあるタイプの悪霊よ。」に詳しいです。

そちらをみるとセピアの心境が良く分かります。

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― 新着の感想 ―
ロージィの想いがきちんと昇華されているようでよかった。 このやり取りは彼女が本当にジャック(あえて)を思っていたことの証のようですね。 セピアは・・・励ましたり突き放したり労わったりとまあその・・・ …
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