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ロージイの話。〜ずっとあなたが好きでした。だけど卒業式の日にお別れですか。のスピンオフ。  作者: 雷鳥文庫


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18/52

戻って来ない人、戻って来た人。

誤字報告ありがとうございます

 それから4日程経つ。まだサリー様は戻ってこられない。

「今、マナカ国でクーデターが起こっている。娘には安全なブルーウォーターにいてもらうことにした。」

ダン様がホテルに尋ねてこられた。

丸っこい身体に汗をかいている。


「確かに、今、うちの商会も仮店舗だしサード様と打ち合わせ中だったから開店休業状態ではあるがね。」


「ダン様。では、サード様とサリー様はご一緒に?」

ビルさんが静かに聞く。


「そうなんだよ。とてもウチのサリーをお気に召してね。」


「それはようございました。」

「ありがとう、ケイジさん。で、なんだね?このホテルを改装するのかい?」

その声には何を勝手に、という憤慨の色があった。


「ええ。もうそちらの社員さんはこちらに泊まっていらっしゃいませんからね。

貸切の契約も無しで宜しいでしょう。」


涼しい声で返すケイジ兄だ。


「いや、出来ればこのままお願いしようかと。」

「ダン様。はっきりと申しますが、サード様とご息女の仲が深まっておりますよね。

世間ではもう、婚約間近ではと言われております。」


「そうかもしれないが。」

「サード様がウチのロージイを厭うてらっしゃることは明白な事実。」 

兄の言葉に、

「ですから、私は、もうダイシ商会からお暇を頂きたく存じます。」

私は頭を深々と下げた。


「ロージイ!」

ダン様の顔が歪む。


「その方が宜しいでしょう。サード様との縁談との障害になる前に。」

「ビル!お前まで!」


「ダン様。未婚の娘が殿方と旅行する。私も日帰りで神龍様にご挨拶するだけと思っておりました。

実際、陸蒸気であちらに仕事に通ってる人もおります。」

「ブラン。」

「だけど、もう5日も帰ってらっしゃらない。」

「だからそれは…危険だからだ。

それにあちらにはサード様のご家族がいらっしゃるのだぞ。そこに泊めていただいているのだろうし。

別に二人っきりな訳じゃないんだ。ジーク様や、そしてサード様のところのクノイチも行動を共にしてると聞いてるんだよ。」


「それでもです。もうそう言う仲だと思われていますわ。特にここの若手の従業員には。

ダン様もサード様も、それを承知で外堀を埋めてらっしゃるのでしょう。」

「……。」

ブランさんの言葉は容赦がなかった。


「それに。彼……ジャックでもディックでもこの際良いですが、彼の気持ちはアキ姫さまにあるのでしょう。

サリー様が彼を忘れて、サード様に恋をすれば、それはとても良いことです。

そしてお二人のご結婚で二つの商会は合併されるのでしょう?まったくもって結構な事でございますな。」

「……ビル。」

「サード様との縁談にはロージイは邪魔です。邪険に追い払われるより、潔くここで辞めさせます。」

「……ケイジさん。」


「ダン様。俺らはロージイ様の護衛でがす。」

「二人とも商会をやめて、ロージイ様についていくでがんすよ。どうもサード様には嫌われているみたいでさ。」


「ガリー!ヤッキー!お前達まで!」

ダン様は悲鳴の様な声をあげた。



「それが良いでしょうね。グローリー家と縁づくおつもりなら、彼女達の退職を認めた方が良いでしょう。」


「えっ。いつのまに。」

目を見開くケイジ兄。


「セピアさんではないですか。」


何ですって?

ダン様の発言を聞いて振り向く。


「セピアさん。」

「お久しぶりです。紅の魔女様。」

彼は私を見てニコリとした。

「ん。なかなか面倒な事になってますね。」

「いつからここにいらっしゃったんですか?

それに今までどちらに?」


「ブルーウォーターにいて、リーリエやジークさんとサード様やサリー様の護衛とかお世話してました。」

「おお、それは。お世話になりまして。」

ダン様が頭を下げる。


「娘はどうしてますか?」

「サード様と牧場の見学をしたり、レプトン様のスイーツ工房に行ったりと楽しく充実した毎日を送ってらっしゃいますよ。もちろん龍太郎君との対面も果たされまして、好感触でした。」


「ああ、そうですか!それは良かった。」

ダン様の身体から力が抜ける。安心されたんだな。


「アキ姫さまともお会いになりましてね。お二人並んで見たらやはり似てますね。」


そうなのか。


「私も一昨日からマナカ国の方に参りましたから、その後の事は知りませんが。」


「あちらはそんなに大変なのですか。」

「ええ、でもある程度の片はつきました。

彼を連れてブルーウォーターに引き上げる途中です。

ちゃんとご挨拶したいと言うものですから。」



彼?

「入ってきなよ。ディックさん。」


セピアさんの呼び方でドアの影から現れたのは。


「アニキ!?」

ヤッキーが声をあげる。


そこにいたのはジャック…ではなくてディックだった。


疲れ果てた暗い顔をして。




「ただいま帰りました。ダン様。すぐに戻れなくてすみませんでした。

……あの後、ブルーウォーターからすぐにマナカ国に行くことになりまして、アアシュラ様の護衛に付き、無事にアアシュラ様をブルーウォーターにお連れして、それからマナカ国で父の無念を晴らしてこちらに参りました。

ご挨拶が遅れて申し訳ございません。」


ディックはみんなに深々と頭を下げた。


その姿は立派な大国の騎士だった。




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― 新着の感想 ―
ダンさんもね、ロージィのことを守ってくれてたし一応責任も感じてくれてるんだろうけど。 改装に、勝手なことをというようでは。 慣れ親しんだ配下が、自分を裏切るように気分なんでしょうか。 帰ってきたのはジ…
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