表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

夢を叶える雲の話し

作者: ソラリオン

 あなたはこの噂をしっているだろうか? 丑三つ時に雨の降る神社で願い事をすると、その願いが叶うという噂。 ある人は噂を信じて丑三つ時に雨の降る神社で「プロ野球選手になりたい」と願ったら、みるみる実力を伸ばし、見事プロ野球選手になることができたんだって。 そんなのありえないと思ったし、そもそもどんな原理で夢が叶うんだ? なんて考えていたら一緒に話を聞いていた友達が「じゃあ俺お金持ちになりたい!次の雨の日に願ってくる!」なんて言い出した。 「そんなのただの噂でしょ。信じるなんて馬鹿らしい」と言ってみたが正直ただの噂だと思っていても気になるものは気になる。 友達は「噂なら噂でいいけど、もし本当だったら大金持ちになれるんだぜ!行くしかねえだろ!」と行く気満々だった。 しかしその噂を教えてくれた子が「やめたほうがいい」と話を遮った。 話を聞くとどうやらこの噂は本当のことらしい。 何人か有名人の名前をだして「〇〇さんもこの噂を信じて有名な女優になったらしいよ」と教えてくれた。 「だったら信じて神社に行ったほうが良いじゃん!」と友達はさっき以上にやる気に満ちた表情をしていた。 だが、どうやらこの話には続きがあるようだ。 なんでも、すべての人が願いが叶ったわけどはないらしい。 むしろ叶わない人のほうが多くそのすべての人が不幸な目にあい精神的に病んでしまっているらしい。 「夢が叶う人と叶わないで不幸になる人の違いはなんなの?」と聞いてみると、夢が叶う人は、一日も休まずに努力し続けていて、叶わず不幸になる人は一日でも努力をさぼった人という違いがあると言われた。 「結局は努力した人が報われて、努力しない人は報われないだけの社会のルールみたいなものか」と少しガッカリしていたら、「そういうことなのかもしれないけれど、一概にそうとは言い切れないよ」と話しを続けた。 「願いを叶えた人は努力し続けたから報われたとも考えられるけど、明らかに神様が何かしたんじゃないかってくらい幸運になって、願いが叶わなかった人は、逆に何をしても上手くいかないほど不幸になるんだって。やっぱり願いを叶える雲は存在するんだよ」と彼は興奮気味に言った。 「その願いを叶える雲ってのは何?」と聞くと、雨の日に願いを叶えてくれるから「願いを叶える雲」と呼ばているみたいだ。 そんなことはどうでもいいと友達は「今日雨降るみたいだから俺行ってくる!」と言い出した。 「やめときなよ、一日でも努力さぼったら不幸になるんだよ」と止めてはみたが彼の頭には行かないという選択肢はないようだった。 「何が起きても知らないからね」と言って僕たちは解散した。 次の日学校に行ってみたら、彼は何もなかったと言わんばかりに落ち込んでいた。 「俺昨日の丑三つ時に雨の中神社でお参りしてきたんだけど、今日になっても金持ちになってなかったんだよ!あんなのただの噂だったんだ!最悪だよ!」と若干切れ気味に教えてくれた。 「そんな一日で願いが叶うわけないじゃん。努力しなきゃなの忘れてない?」と言ってみたが聞く耳を持たなかった。


 あれから十年くらいたったころそんな噂も忘れて僕は会社に就職して働いていた。 唐突に同僚がその「願いを叶える雲」の話しをし始めて「その噂聞いたことある、中学生くらいの時にその噂を友達が試したんだよね」なんて話していたら、その同僚の顔は真っ青になり、「その子はその後どうなったの?無事なの?」なんて詰め寄ってきて驚きながらも「何もなかったんじゃない?高校別だから卒業してからはあってないけど、それよりいきなりどうしたの?」と聞くと「俺が一週間くらい前に同じ部署の奴らと飲みに行ったときに、ある子どもが急に話しかけてきて、その噂を話し始めたんだよ。 普通に考えればあんな酒しか置いてないような店に子供なんてくるはずないのに、酔っ払っててそんな噂があるなら試してみたいと俺の一個下の後輩が言い出して、そいつ雨の中歩いて神社まで行って丑三つ時にお参りしてきたんだよ。酒も抜けて冷静に考えてみてその話が本当なら俺の後輩努力とは無縁みたいな奴だから心配してたんだが、連絡しても返事来ないし、連休終わって会社来てもあいつ来てないし何かあったんじゃないかと思って」と早口で言い出した。 「そんなのただの噂だろ?僕の友達も何もなかったし、雨の中神社に行って風邪でも引いてるんじゃないの?家には連絡したの?」と聞くと「家に連絡したけどあいつ帰ってないみたいなんだよ、なあ、本当にその友達はなにもなかったのか?」と言われて「わかったから今日仕事終わったら友達の家に行って聞いてみるよ、だからとりあえず落ち着いて待っとけ」と言って解散しようとしたとき、同僚が「なあ、お前たちは誰にこの噂聞いたんだ?」と言われ答えることができなかった。  


 あの噂を話したこの顔が思い出せなかった。それどころか本当にそんな子はいたのかと思うほどに頭に靄がかかって思い出すことが出来なかった。 不安になって仕事が終わってすぐに友達の家に向かうと友達は真っ暗な部屋の中でただ一人笑いながら泣き続けていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ