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第7話 アワイ通商条約 上

「こちらアメリゴ連邦第七艦隊旗艦『アマデウス』未確認要塞『仮称X』、応答せよ。」


「未確認要塞、応答せよ。」


「ダグラス大佐、『仮称X』より通信来ました。」


「全体モニターに出せ。」


空中に3Dメインスクリーンが淡く発光し、人物が映し出される。


画面の向こうには、長い銀髪を背に流した男が立っていた。年齢は三十代前半と見えるが、その表情は冷静で感情を読ませない。


彼の背後には、明らかにアメリゴ連邦製ではないデザインの制御パネルが並び、無機質な光がちらついている。


「バベル・エデン宙間企業の所有者にして、同じ人間種。」


男はそう名乗り、ゆっくりと続けた。


「オーナー・Y・メッセンジャー。オーナーと呼んでほしい。」


その声には抑揚がなく、まるで事務的に名刺を差し出すかのようだった。


サリエリ少佐は一歩前へ出て、応じる。


歩きながらの交渉——それはこの世界の一般的な交渉技術のひとつだ。


異種族との交渉では表情を読むことができないため、身振りや歩調のリズムが意図や感情を伝える重要な要素となる。


主人公であるオーナーが、ゲーム見たいにデホルメされていると阿保みたいな感想で、叩き上げの軍人や大企業の商人、やり手の官僚の表情を、隠してる感情ごと読み取っている事は異常なのだ。


「こちら、アメリゴ連邦第七艦隊所属、サリエリ少佐。我々は我々の作戦区域に現れた貴要塞の意図を確認するために通信を行っている。」


「意図? なるほど、確かにそれは確認すべき問題だな。」


オーナーと名乗る男はサリエリ少佐を見つめた。彼の瞳は冷たく、その言葉は何かを測るように鋭い。


「だが、貴官も理解しているはずだ、我々は好き好んでこの宙域に現れたわけではない、災害に巻き込まれた被災者の様な物だ。」


サリエリ少佐は共感を表現しつつ会話の主導権を握りにかかる。


「そちらの境遇にはひどく同情するが、アメリゴ連邦に所属する軍人としては突然現れた武装組織が脅威でないかを確認する義務がある。」


「脅威か……」


オーナーは微かに笑った。


「それは誤解だ、誤解は解かねばならないそうだな、少佐、バベル・エデンは軍隊ではない。我々はあくまで民間企業——商業と経済活動こそが我々の本分だ。」


「……なるほど、貴官らは交易と利益追求が目的だと。」


サリエリ少佐は冷静に頷きながらも、視線を鋭く光らせた。


「だが、貴要塞が保有する戦力は、民間企業の域を超えている。」


サリエリ少佐はオーナーの反応を伺いながら続ける。


「要塞の火力、配備された三隻の大型戦闘艦……重ねて言うがの民間企業の域を超えている。軍の戦略拠点といっても遜色ない規模だ。」


「そこまで言うのであれば、手放す事も視野に入れよう。”いくらだ?”」


オーナーの言葉が高圧的な物になる。

一瞬、何を言われたか解からなかった。


「事業を始めるにも、まずは元手がいる。だが、バグワームの現れたゲートウェイ横の防衛拠点——これほど軍にとって価値のあるものはないだろう? しかも、艦船の整備機能まで揃っている。」


「……なに?」


彼は眉をひそめ、オーナーの意図を探るように問い返す。


オーナーは口元に薄い笑みを浮かべ、無機質な青白い光に照らされながら続ける。


「ああ。これほどの戦略拠点が、しかも軍のお墨付きで『民間企業の域を超えている』と言われるほどのものなら、相応の価値があるはずだ値段は何処までも釣り上げられる。」


彼は軽く肩をすくめた。


「今後の事業展開を考えれば、まずは資本が必要だ。ならば、目の前にある資産を適切に売却し、現金化するのは当然の判断だろう?」


サリエリ少佐は即座に反論する。


「我々は購入の話をしているわけではない!」


「ああ、そうだな、全長12.7キロメートル、最大幅6.7キロメートル、縦長の宇宙コロニー、人口は13万9820名それも五種族全ての人類が暮らしてる。」


「!!」


出される情報にサリエリ少佐は絶句する。


「繰り返し言うがバベルと言う施設は13万と言う人口を抱えるコロニーだ。」


あの規模の要塞を購入するとなれば、本国の判断が必要になる。それに、もし本当に五種族すべての知的生物が暮らしているとすれば、他種族の国家の介入も避けられない……結論は一つだ。経済的にも、政治的にも、この要塞は買えない。


「コロニーの話を軍とするのも可笑しな話だな。」


「……あぁ」


思わずうなずいてしまう、コロニーと認めてしまったと思うもオーナーの言葉は止まらない。


「ならば、この要塞を活かして収益を得る方法を考えなければな。ちょうどこちらには、艦船の修理能力がある。 貴官らの救護者を回収するついでに、損傷した艦船の修理も引き受けようか?」


ここでオーナーは話を止める。


考える時間をやるという事か、今ので軍として軍事施設を警戒すると言う大義が使えなくなった、人員を回収するための手札を奪って人員を返してほしければ艦船修理でお金を落して行けという事か。


いや返してくれると言うならそれに乗ろう。その上で軍の利益だ、相手が企業である事と要塞では無く武装コロニーである事は暴いた。


人口を抱えるコロニーなら代それた事は出来ないはず、なら次に警戒すべきはバグワーム、安全保障を考えれるなら艦隊を万全にすることを優先、損傷した艦は多くアワイコロニーの造船能力を超えている。


どの程度の造船能力かは分からないが、それも踏まえて調査出来る相手の提案は魅力的、壊滅した艦隊の再建を早めて十分な情報資料を手に入れられるなら私の軍人としての手柄は十分。


「損傷が軽微な物から修理していきたい、損傷艦のデータを送るから見積もりを頼む。」


「ああよろしく頼む、そうそう、そちらの通貨を得ても使い道が無ければ意味が無い、修理をする理由も無くなる。それならこのコロニーの経済圏に参入するのが自然な流れだろう?」


「わかった、アワイコロニーとバベルの会談の席を用意しよう。」

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