第2話 背後地域への賭け
「バグワーム領域を通過し、ササーン神聖帝国の背後地域に拠点を構える——」
ブリッジのホログラム投影の上で、私は静かに宣言した。一瞬、会議室が静まり返る。
「オーナー、それは...」リアム副官が眉をひそめる。
「無茶な話だと思うだろう。だがキャメロット参謀本部の情報分析から可能であると結論がでた、これが最善の策だ。」
ホログラムが切り替わり、バグワームの活動域と、その向こう側にあるササーン神聖帝国の勢力図が映し出される。
そして建設艦を中心とした艦隊編成、クロード艦隊長官が前に出て、厳しい表情で指摘する。
「建設艦を護衛するのですか?」
「その通りだ。」
「しかしオーナー、建設艦は我々の未来そのもの、それを失う可能性を許容しろと!?」
ゲルラッハ副官が珍しく声を荒立てる。
「かつてのバベルでも4隻、転移後の今は2隻しか保有していない重要艦船」
誰かが呟く。
「あの巨体艦は、一隻あたりの価値が弩級戦艦4隻、この世界でも国家が3〜4隻保有してれば良い方の代物。しかし防御力は...」
「ガラスの城だ」
俺は副官の言葉を肯定する。
「だが、建設艦を企業が所有するというのはこの時代の国家に警戒される原因になる、遊ばせるぐらいなら遠方に派遣した方が有意義だ、それに勝算もある。バベルの高性能エンジンだ。」
ホログラムが再び切り替わり、艦隊編成が表示される。
「護衛艦隊の編成はこうだ」
私はリストを読み上げる。
「弩級戦艦2隻、大型駆逐艦3隻、そして我らの秘蔵である空母1隻。加えて中型、小型宇宙戦闘艦合わせて220隻」
「そして、これが肝心だ」
私はホログラムを拡大した。
「武装貨物船40隻」
シャルル海兵長官が鋭く指摘する。
「貨物船ですか?」
「そうサイズは通常の駆逐艦レベル。うち10隻はバベル製の最新鋭高性能貨物船。これは建設資材と初期入植者を運ぶ」
私はホログラムの別の部分を指す。
「そして残り30隻——これがアメリゴ連邦からただ同然で買い取った中古貨物船だ。見た目は錆びついているが、バベル製の武装システムを搭載させた。特筆すべきは、これらの船を完全に空にしていることだ」
「空ですか?」
リアム副官が不思議そうに尋ねる。
「そうだ。アメリゴ連邦製のエンジンは我々のバベル製と比べると明らかに劣る。貨物を積んだままでは、艦隊に追従できない。だが、貨物室を空にすることで重量を減らし牽引、我々の高速艦隊に遅れずについてこられるようにする。」
「十分な機動力を確保出来ると判断しました。」
白老参謀総長がゆっくりと肯定する。
「なるほど...バベルの高性能エンジンで勝負するわけじゃな。バグワームが追いつけないほどの速度で通過する...」
クロード艦隊長官が竜人族特有の長く太いの髭を撫でながら頷く。
「ええ、そして空の貨物船はいざという時の囮にも出来る。」
俺は微笑んだ。
「バグワームの反応速度以上のスピードでセクターを突破、通常の艦隊では不可能だが、我々のエンジン技術なら可能だ。ただし、すべての艦船が足並みを揃える必要がある。」
クロード艦隊長官ブツブツと呟き始める。
「オーナー、俺は一隻でも艦船を失うつもりはない、直ぐに訓練計画の立案と実行許可を頼む。」
俺はクロード艦隊長官の目を見て言う。
「まかせた」
静かに、しかし強い決意を込めて言った。
「我々の命運を賭けた作戦だ」
リアムが静かに質問した。「オーナー、もし建設艦が失われれば...」
「我々の拡張は大幅に遅れる」私は率直に認めた。
「しかし、成功すれば、ササーン俗世主義者たちに安全な避難場所を提供し、バベルの人員に出来る。」
「オーナー!!」
走りよって来たアンルール情報参謀の肩をつかみ、ファブニール副社長とシャルルコロニー市長、他歴戦の法務部人員やコロニー外交官で彼女を取り囲む。
「えっ?えっ?」
今度は白老将が程々にしとけと言う表情だった。
「君は今日からササーン神聖帝国、神聖枢機卿だ、現場行政官を騙して我々の為に植民船団を造船してもらおう。」
「えー!?」




