第27話 崩壊の津波
コロンブス中央共和国金融区
「何が起きているんだ!」
巨大スクリーンには、絶え間なく落下する経済指標の数値が並んでいた。
企業議会から派遣された緊急対応チームのメンバーたちが、青ざめた顔で数字を見つめている。
「我々の通貨準備は?」
「中央底をほぼついてます」
銀行代表が怖い声で飽きる。
「アメリゴ連邦政府が全てのコロンブスクレジット取引を停止した!!」
中央商業地区、ガード隊と市民の間で小規模な衝突が起きていた。
数時間前、デパートは問題としてコロンブスクレジットでの支払いを拒否し始めた、売り惜しみだ、特にアメリゴ連邦からの輸入品の価格は際限なく上がり、それにつられる様に全体の物価が上がる。
絶望が、経済崩壊がコロンブス共和国を襲った、それは大企業と呼ばれる怪物ですら例外ではない。
重苦しい沈黙が、コロンブス共和国で最も豪華と言われる会議室を満たしていた。窓の外では首都のネオンサインが虚しく明滅しているが、室内の空気は凍てついていた。
中央の巨大な円卓の上座には、保守派の上位大企業でもトップを走る大企業の会社が怒りに顔を歪めていた。
「グループに流れるアメリゴドル、エネルギーセルなどの通貨として扱える資源、一切使ってはいけません、決済が迫っているアメリゴ連邦との取引から整理すべきです」
「……」
側近の言葉に沈黙で答える。
「会長、もしやコロンブス総理と連絡を取られた事が?」
何故その人物の事を俺に聞くのか?と考えその答えを察する。
「避けられているのか?」
側近は会長の言葉にうなずく。
「お前からの電話が私からの物だと気が付かない筈がない!!」
それは怒りの発露
「議会の人間も理由を付けて避けているそうだな!!」
大企業の影響力、経済・社会・時には政治に至るまでた強大な支配力
グループ内で資金循環をさせることで外部に頼らずに資金調達が可能と言う特性も、
製造業・鉱業・金融・不動産など多様な分野に発展し、ある分野が振れずに他の分野でもリスクを補うことができる特性も、
コロンブス通貨危機と後に呼ばれる経済崩壊を前には無意味!!
「銀行連中は手持ちのコロンブスクレジットを出すつもりも、アメリゴドルを交換すると言う考えも無いそうだな」
経済大国コロンブスの銀行の貸し渋り、それも大企業相手に、明らかな終わり、崩壊の足音
「物産と電子、各部門に連絡しろ。輸入取り引きを全て停止、今日から入ってくる輸出代金は入ってくるままアメリゴドルで保管、それから建設、海外プロジェクトは30⋯⋯いや半額まで許す入札しろ、代わりに契約金だろうが中途金だろうが一日でも早く受けとれ、それと海外投資は違約金を払ってでも回収!!」
「会長、それではあまりにも損失が……」
「利益が……」
睨まれたカエルの様に静かになる。
「黙って全て回収しろ」
「会長、少し落ち着いてください、既に万全の準備を整えています」
「それでは足りん、手足の一つは失う覚悟で対策しろ、……お前らの耳は飾りか直ぐに行動しろ」
これが最適解、だがこれは先を見る眼か、単純に目の前の出来事に合理的な行動が出来る人間が、独裁的な経営権を持っている場合だけ
だが悲しいかな耐えれない。
何故ならそう言う相手には買収競争を仕掛けて流動資金を削っている。
場面は変りバベル特区の管制塔最上階。
「小細工も逆転の一手も残してはいない、今のコロンブス共和国にこの経済危機を乗り越えられる企業は我々バベルのみだ!!」
竜人種の様に笑う男がいた。
「大部分はコロンブス共和国という経済大国が崩壊するなど考えない、だから次を考える」
一面の窓から見下ろすコロンブス共和国首都の夜景は、かつての輝きを失い、随所で暗闇に沈んでいた。
「奴らに耐える体力はそもそも無い!!」
お前達に生き延びる可能性は残っていないのだ!!
「随分と調子が良いなゴア」
人類種の男性、アケブラ・ナガスト総合交易会社副社長ゴア・D・ゲオルギウス。
「これはオーナーお恥ずい所を、ええしかしこの計画が上がって来た時この仕事は成功させると決めるので」
「思う所はあるか⋯⋯、いや余計な詮索は、それでアメリゴ連邦の反応は?」
失礼とゴアがモニターを操作する
「過剰に反応してますね、連邦政府の内部文書を手に入れられたので分析しました、ニュースも世論も含めて考えれば⋯⋯」
そこには「コロンブス共和国の金融崩壊による連邦経済への影響評価」と題された報告書が表示されていた。
「コロンブス共和国に現状を打破する能力は無く、アメリゴ連邦は支援どころかむしろ切り離し、回復し始めた自国経済を守る為に過剰に動いています」
経済格差の問題は、一時の経済崩壊でうやむやになったが、好景気だった頃に手に入れた資産をコロンブス共和国に逃がした人間は少なくない。
「他人が豊かになる事をリスクと捉えるか、民意は操作するまでも無く望む通りに動いているが……、嫌だなこういう足を引っ張り合う記事は、だがもう一息だ」
銀行が売りに出された時、バベル・エデンの廃品回収が始まる。




