第24話 砂上の宝と海の引き潮
「ねえ、聞いたか?バベル・エデンがコロンブス共和国に全面移転するらしいぞ!」
アメリゴ連邦中央金融街のカフェ
朝の混雑時に、若手金融アナリストが同僚の青年に声を掛けた。
両手にホログラムチャートを表示しながら、興奮した様子で話し続ける。
「何だって?まさか…」
青年はコーヒーカップを置き、目を丸くした。
「公式発表があったんだ。『輸出戦士』なんて言葉まで使って、『コロンブス共和国の再興のために全力を尽くす』とかなんとか」
「アメリゴ連邦経済はこれからだ、それこそバベル・エデンの製造業から好景気が始まり、軍需、企業株、そして土地、そしてこれからは建設だ、すでに政府はコロニーの発注契約をバベル・エデンと結んでるんだ。」
アメリゴ連邦では実体経済から乖離して資産価格が高騰、土地の価格へと流れ込んだ金の流れは次を求めていた。
「単なるPRだろ。あんな巨大企業が本気でアメリゴから撤退するわけがない」
隣のテーブルから、中年の投資家らしき男性が会話に割り込んできた。
「アメリゴ連邦の人間の殆どがこの好景気で資産を持った。いわば民衆への人気が株価を左右する。故郷に錦を何て喜ばれそうなストーリーだ」
ニヤニヤと笑いながら中年の男性は自身の端末をながめていた。
「万歳!バベル・エデンの進出が決まったぞ!」
場面は変わりコロンブス共和国首都の庶民的なバーでは、ビジネスマンたちが祝杯を挙げていた。
店主は急いでモニターを調整し、バベル・エデンの発表を表示した。
物質的に豊かな時代だからこそ、人との繋がりを求めバーに人が集まる。特にこういうイベント事の日は特に
「まさか『輸出戦士』なんて言葉まで使うとはな。あのバベル・エデンが、コロンブスへの愛国心を見せるなんて」
不動産業者の男がビザをたたいて自分のコメントを打ち込む。
「バベル・エデン特区の建設予定地、すでに土地価格が3倍になってるぜ」
若い仲介業者が自慢げに言う。
「今朝、5件の契約を結んだよ。金があればその巡りも加速するもんさ」
「株式市場も狂ってる」
銀行員風の女性が言った。
「『ステラリス・エデン』の新規上場株が初日で取引限度まで上昇した。共和国クレジットも上がり始めてる。明日は更に高騰するだろうね」
店主のは首を傾げた。
「でも、これって健全なのか?あまりにも急激じゃないか?」
「健全?」
誰かが笑った。
「誰もそんなこと気にしないさ。アメリゴ好景気に乗り遅れた人間にとって、共和国クレジットで投資に参加出来る今は金を稼ぐチャンスなんだ。」
「バベル・エデン主導のコロンブス共和国での再開発、こんな機会は滅多に無い」
バーの窓の外では、「バベル歓迎!」と書かれた即席の横断幕を掲げる市民たちが歓声を上げていた。
アメリゴ連邦での好景気に目を奪われ、コロンブス共和国首都の大企業はその規模を縮小、その隙をついたバベル・エデンの大規模開発は邪魔される事なく成功を納めた。




