第22話 軍靴と資本の交差点
夜も更けた頃コロンブス共和国首都の高層ホテル最上階、オーナーは静かに宿泊先のホテルのバルコニーに立っていた。
眼下に広がる光の海、コロンブス共和国の首都の夜景が広がる。
人工的な光が生み出す美しさが、その裏に隠された複雑な権力構造を隠している様に見えた。
「リアム、これまでの会合の分析結果は?」
背後に控えていたリアム副官が前に進み出た。
「はい。接触してきた政治家は、典型的な保守派の代表的メンバーですが、完全に忠誠心があるわけではなく、自己利益を最優先にしています。」
「だが逆らえる程では無く、多くの爆弾を握られてる。」
俺も表情から読み取った感情を元に付け加える
「しかしその爆弾をこちらで起爆させれば?」
リアム副官がタブレットを差し出した。画面には政治家たちの秘密資産や不倫の証拠写真があった。
「考える事は同じか、だが発信するためのメディアが必要になるな。」
「ええ、しかし既存の物は手垢が付いているので人間の方を引き抜いて新しく箱を拵えた方がはやいかと」
悪い事を考える物だと互いに笑い合う。
「ウィズナーの情報源については?」
「彼の情報は極めて限られています。表向きは投資ファンドの経営者ですが、アメリゴ連邦の情報機関と繋がりがあるという噂もあります。」
オーナーは夜空を見上げた。
「確かな成績は、彼が過去10年間で複数の宇宙関連企業への投資成功と、アメリゴ連邦軍のコロンブス共和国への軍艦払い下げ契約を成立させていることです」
政治家、大企業、投資家、そしてバベル・エデン、単純な資金力で決着は着けれず、それぞれが独自の利益と目的を持ち駆け引きを展開している。
「我々の戦略は変わらない。表向きは協力的なパートナーとして振る舞い、水面下で着実にバベル・エデンの基盤を固める」
リアム副官は静かに頷いた。
「モジュール取引は予定通り進行中です。拡張派も首都では保守派に追いやられていますが、それ以外のコロンブス共和国セクターでの勢力を拡大中、その過程で首輪もつけております」
バベル・エデンのコロンブス 共和国での成功は、相応な戦略の賜物だった。
最初の数年で、バベル・エデンの重工業製品はコロンブス共和国内に好意的に受け入れられた。
特に拡張派とのコネクションを最大限に活用し、多くの植民惑星とコロニー市場における優位性を確立、そのコネクションはアメリゴ連邦内でも遺憾なく発揮され、アメリゴ連邦の船体部品市場シェアの35%を占めるまでに成長した。
アワイコロニーの農業部門への投資も功を奏し、同様の支援を求める農業コロニーの要請を受け、人類種への影響力を増やしつつ食料自給率向上という政治的な課題への貢献をアピールした。
これによりアメリゴ連邦国民からは「国民の生活を助ける福祉企業」
コロンブス共和国では「投資先にふさわしい優良企業」
というイメージを獲得することに成功した。
「アメリゴ連邦の様子は?」
船体部品が安価で手に入る様になりアメリゴ連邦では軍需産業が急速に発展、バベル・エデンの存在とバグワームとの戦闘は、連邦内の防衛予算を大幅に増加させる口現実となっていた。
「バグワームに対する防衛」を旗印に、アメリゴ連邦軍は今度と新型艦船の発注を行い、軍事企業の入札は史上最高値を更新した。
アメリゴ連邦の一般市民にとっても、「バグワームの戦闘」と「人類の盾としてのアメリゴ連邦軍」という構図はわかりやすく、軍人の社会的地位と人気は急上昇した。
無論その力の殆どは海賊戦争に使われたが、最前線に立つパイロットや宇宙艦隊の指揮官たちが国民的アイドルとして扱われるようになり、 彼らのインタビューや活動記録がメディアを賑わせ、若者の間では「軍人になりたい」という声があった。




