第4話 コロンブス共和国とは何か
「コロンブス共和国はアメリゴ連邦の影響を強く受けた勢力ですが史実ではバグワームと言う外圧によって人類種の外へと事業を拡げたのが多国籍企業としての進化の切っ掛けになったとアンルール情報参謀は考察していました」
【バベルの時代(未来)のコロンブス共和国】
様々な種族、国家を相手に取引を行う多国籍企業
「何度かやり取りした通信ログを分析にかけておいた、オーナーコロンブス共和国との商談に役に立つだろう。」
メガネをクイッとあげて登場したのはもう一人の副官、竜人種の青年ゲルラッハ。
「連れて来たぜアメリゴ連邦とコロンブス共和国、この2つの関係と推移の解説、これを法的根拠を元に語れるのはコイツしかいねぇ、頼めるか?ニネベイサ法務参謀。」
「ええ任せてください、それと私のメガネは返してもらいます。」
悪い悪いとゲルラッハは人翼種の女性法務参謀、ニネベイサに悪い悪いとメガネを返す。
「コロンブス共和国の前身は、アメリゴ連邦が辺境開発のために設立した「特別経済区域」です。」
手元に資料が送信され、説明が行われる。
【コロンブス特区だった時代(過去)】
アメリゴ連邦の特別経済区域だったコロンブス特区は税制優遇や自治権を背景に多くの企業・政治家が流入、退任した政治家の天下り先としても機能し始め、コロンブス特別経済特区は「第二の首都」とも呼ばれるようになる。
「アメリゴ連邦は対応しなかったのか?」
「真っ先に動いたのは官僚です、アメリゴ連邦の官僚機構は、この「規制逃れの楽園」に強い警戒感を抱き税務署を中心に監査や規制を強化しようとする動きが活発化し、特区内の企業や政治家一族は不満を募らせていきました。」
海賊戦争と独立、年表にはその文字があった。
「この時期のコロンブス共和国は自治領でしかなく、アメリゴ連邦内である以上官僚の力に逆らえませんでした、しかし転機となったのは海賊戦争です。」
工業力を手にしたコロンブス共和国は海賊戦争を契機に、アメリゴ連邦から委任されたセクター管理権を活用し最終的には独立を果たした。
【海賊戦争とは】
海賊戦争とは表向き無法者の取り締まりと言う名目で行われる宣戦布告の無い戦争である。
参加国は下の3カ国
アメリゴ連邦
民主主義を掲げる人間種の国家
コロンブス共和国と言う同種族の事実上の従属国と共同で参戦
宋星獣王朝
血筋を重要視する獣人種の国家のうちの一つ
ゲートウェイ機能停止による分離から、瑞獣王朝から分離した拡張主義国家。
瑞獣王朝と正統を争っているが政治的な抗争に収まっている
ササーン神聖帝国
数学と幾何学を信仰する魚尾種の神権国家、宇宙嵐の影響で大パンテオン家と聖戦士団が独立小戦争状態と問題を抱えているが、この世界最大の勢力
人間種、獣人種、魚尾種の3種族の間にある空白セクター区域を巡る戦争である。
【コロンブス特区の独立】
「アメリゴ連邦が軍事に予算を集中させる必要に迫られた際、税金が増えたことで辺境セクターや海賊戦争で手に入れたセクターは耐えられず、アメリゴ連邦としても負担軽減のためコロンブス特別経済特区にいくつかのセクター管理を委任、これを機会にコロンブス特区は独立を交渉したという流れです。」
「そう簡単に独立出来る物か?」
「海賊戦争の利益よりも軍事費の方が大きくなるとアメリゴ連邦の税金に反発する人間が増加、有力者を中心に世論を動かしたようです。」
大手メディアの資料が表示される。
「コロンブス特別経済特区は、コロンブス共和国として独立、委任された未開惑星や小惑星採掘にコロニー設置、軍需需要とアメリゴ連邦からの移民で繁栄しました。」
【コロンブス共和国の政治体制】
コロンブス共和国は「企業議会制」を基盤とした特殊な国家体制を持つ。巨大企業と政治家一族が議会を構成し、経済・外交政策は企業利益に大きく左右される。
「表向きは民主制を謳いながら、実質的には大企業と政治家一族が権力を握れる「企業議会制」を採用、市民から選ばれた政治家の中から企業議会がコロンブス共和大統領を選ぶ形になりました。」
「企業議会が最終的な人事を握るから、市民が選んだ政治家を操れるわけだな。」
市民は政治家を選んで政治参加するが、決定権は大企業のCEOや政治家一族が握っているのだろう。
「ええ、またコロンブス共和国人には政治よりも金を稼ぐ方が重要と言う風潮のせいで好き放題出来てるみたいです。経済的に豊かなうちはこれがつづくでしょう。」
【アメリゴ連邦からの影響】
「次にアメリゴ連邦とコロンブス共和国の関係です。税制の優遇とアメリゴ連邦の政治家や財閥の擬似的な荘園と言うのは変わらす継続しています。」
アメリゴ連邦の元高官や政治家が要職に就いており、連邦との「非公式パイプ」が常に機能しているのか。
【コロンブス共和国の派閥】
「コロンブス共和国の派閥は主に3つ……」
保守派
経済特区時代からコロンブス共和国に関わる保守派勢力、アメリゴ連邦との関係維持を重視する一方、アメリゴ連邦の官僚からの干渉を嫌う勢力
企業議会議員や旧来の政治家一族、大企業の財閥一族などアメリゴ連邦でも強い力を持つ人間が中核を担う。
拡張派
コロンブス共和国で発生した宇宙開発企業を中心とした勢力
経済拡大は望むが保守派による政治的な介入を懸念、大企業の中でも後発組と中小企業、若手政治家や新領域のコロニー代表が主体中核を担う
実利派
イデオロギーよりも経済的な利益を最優先する勢力
ITや投資家が中核を担い、一部の犯罪組織も所属する
「保守派は企業議会で最大派閥を占め、議席の割合は60%を下回った事が無い、コロンブス共和大統領の指名権を実質的に確保する派閥です。」
「保守派が障害になるな、弱らす方法は?」
「拡張派の強化が適しているかと、彼等は宇宙開発企業と新興コロニーが中心です、造船能力を持つバベル・エデンが手を貸せば大きく成長するでしょう。」
「その通り、むしろやり方しだいではバベル・エデンが拡張派の派閥を乗っ取る事も可能でしょう。」
人間種の男が獣人種の発言に乗っかる様に締めくくる。