第八話「もう一枚の写真」
アーリャはバッサバッサと背に生えた青紫色の羽をまたたかせ、子猿を追う——
子猿はまさか!というぎくりとした様子で動揺を隠せない。
そして子猿とアーリャとの距離はとうとう至近距離にまで達した——
そこで子猿はうっそうとした林の中に飛び込んでアーリャをそのまま撒こうとした——その時!
「そうはさせない!」
アーリャは先程とおなじく、一枚の写真を天にかざした。
すると——
子猿の目の前に樹齢何年にも及ぶ大木が立ち塞がった。
「キィ、キィ〜」
その上、その大木は意志を持ち、枝を動かし子猿をがんじがらめにした——
アーリャは笑顔で、
「やったね!」
そう、この森で子猿に財布をスラれる直前に撮った、樹齢何年の大木の写真を天にかざしたことで、アーリャの姿形には変化はなかったが、(後にわかることだが)“召喚系”といわれる写真の効能で子猿を止めることに成功したのだ。
そして、召喚された大木が、捕らえた子猿からアーリャの財布を拾い上げ、その枝の手でアーリャにそれを返した。
「ありがとう。大木さん。一か八か大木さんの写真つかってみたけれど、想像以上に役に立ったな。」
「お父さん、ありがと、助かったよ。」
《……》
——しかし、電子カメラからは反応がない——
アーリャは思った。
(いつでも話せるってわけでもなさそうだ)
しかし、少し興奮気味に、
「でも、すごい。すごい。空飛んだり、意志を持つ大木を召喚したり、あちし、一種の魔法使いじゃない!?エヘヘっ。」
そして財布を取り戻したアーリャの目の前にこの森林の出口が見えてきた——