第五話「前段階」
「とっておき。それはね…、」
ゴクリとアーリャ。
「このウォルシュワ岬の森林に隠れて見えないけれど、大きな塔があるの。そこで見る景色は一生モノよ。お母さんもそれを伝えたかったんじゃないかな?」
「塔?」
看板娘はボディランゲージをして——
「こ〜んなに大きい塔なの!あ、見なきゃ分かんないか。フフッ」
アーリャは目をまん丸にして。
「おっきな塔かあ〜〜、楽しみ。この森の先にあるの?危険はない?」
看板娘はフフフと笑って、
「大丈夫よ。別に猛獣もいないし、危険はない。ただ、…」
「ただ?」
「わんぱくな子猿がたくさんいてね。なにも危害は加えてはこないのだけど、ある一点がね…」
「え?な〜に?」
「なんというか、ここに初めて訪れた観光客とみたら、その子猿たち、荷物を盗むのよ。だから、そこには気をつけてほしいな」
「まあ、あちし、お金さえ取られなければ、大丈夫、かも。うん!」
「まあ、十分警戒してね。ちなみにお姉さんは茶店の仕事があるから一緒には行けないわ。ごめんね。」
「いいの。じゃあね。」
「は〜い。塔の景色は最高よ?楽しんでね〜」
こうして看板娘と別れたアーリャなのであった—