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第二十四話「写真家ぺドス」

 アーリャが元の自室に戻った所、急に父からの連絡が——

「聞こえているよ、お父さん!」

 アーリャは急な連絡にも臨機応変に立ち回った。

《いつも連絡が急ですまん。ところで、お父さんが三年前に死んでたってニュース、アーリャの耳には入っているかな?》

「デマでしょ?だって、今、こうして会話が出来ているんだから」

《そこなんだがな、話せば長くなるが、全てハショッて、シンプルに言うと、お父さんは、死んだ。》

 アーリャは驚愕して——

「ええっ?じゃあ今なんで話せてるの?もしかしていま話してるのはお父さんの言いそうなことをプログラムされた、AI?」

《鋭いな、アーリャ。本当に六歳か?鋭いが、ちょっと違う。正確には、お父さんの体は今、自分のものではないが、魂だけ、電子機械を通して、自分のもの、として存在している。分かるか?》

「ん〜〜、よくわかんないな。じゃあ、今お父さんの体はどこにあるの?」

《ある研究施設で保管されている。冷凍されてな。しかも、これは誰かにそうされたのではなく、自分の意思でそうしたんだ。》

「は?なんでわざわざ自分の体を不自由な身に置くの?意味わかんない」

《アーリャ……、これはアーリャどころか、お母さん、そして、世界中のどんなすごい人、頭のいい人に言っても理解できんとは思うんだが、……、分かったんだ。》

「分かった、って何が?」

《笑うなよ?『この世の全て』が……》

 アーリャは笑わなかった。ぺドスが世界一の写真家だということをさっき勇者シグルドからも聞いたし、冗談でこんなことを言う人では無い、ということが、アーリャには分かっていたからだ。

「うん、うんうんうん。この世の全てがね。で、それと凍結になんの関係が?」

 ぺドスは一拍置いてから——

《頭の中にこの世界で一番大きな諜報機関の極秘情報が流れてきた、というか浮かんできたんだ。確かめに、諜報機関に連絡したら、その情報が当たってたらしく、その数日後に何度も狙撃されかけた。つまり、『知っちゃいけない』情報を知ってしまったんだ。》

「お父さんは神になったの?きっかけは?」

 ぺドスは暫く、口をつぐんでから——

《神、と、いうか、『受信機』かな……。頭にどんどん情報が降りてくる。きっかけは——》

「写真だね。」

 アーリャは間髪入れず突っ込んだ。

《そう、ある戦闘地域で、血しぶき吹き渡る惨劇のすぐ近くで、まだ十五くらいの若い娘が自分の産んだ赤ん坊を抱っこしてあやしていた。私はいたく感動と畏れを抱き、その光景を写真に残した。それは素敵で残酷で究極に美しい写真だった。そして——、その時だった。もう写真なんか撮らない、という感覚、達成感、とはまた違う、この世の真理を見た気がしたんだ。それからの生活はしんどかった。人の考えていること、これから起こること、目の前にいる人物の過去、全てが脳内でぐるぐる回り出す。私はノイローゼになりかけていた。そこで、医者に診てもらったところ、燃え尽き症候群だと言われた。そして、あなたはその症状と全能感をはき違えている、と。》

 アーリャは不思議そうにしていた。

「じゃあ、なんで体を凍結したの?いまだに意味分かんない。」

《私を死んだことにするためだよ。そうすれば、機密情報の漏えいの可能性がもう無くなった、と判断した諜報機関、その他、さまざまな団体がホッと肩を撫で落とすと思ってね。さっきテレビで報道された、私の戦死というフェイクニュースで私の計画は、ほぼ完成した。》

「まだ分かんないところがあるんだけど、魂?だけの生命として、凍結された体から分離する作業はどうやったの?まさか、一人ではできないよね?」

《知り合いのマッドサイエンティスト、ティモシー・グネーヴに援助してもらった。もう八十歳に近い老人医師だが、腕は確かだ》

 アーリャはふぅ〜〜、と息をして——

「大体、分かったかも。じゃあ、お父さんは、なんていうかな〜、“電波存在”として魂だけで世界中を動き回っているんだね。でも、直接会いたいな。無理?」

《まあ、大体そういう解釈でいい。直接……、は難しいな。表向きには死んだことになってるから、凍結された肉体を蘇生させる必要も無いし。》

「そっかあ〜」


 アーリャはいきなり、ドキッとあることを思い出した!

「あ、そだ!カニカニ村で戦闘をしてた勇者の人たち、悪い人たちじゃなさそう!正当防衛だって!でね、あちしも一緒に旅に出ないか?って言うんだけど、どうしたらいいと思う?」

 ぺドスはしばらく黙っていたが、おもむろに口を開き——

《もうお前は答えを知っているはずだ》




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