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第十六話「敵は誰だ」

「ん〜と、なになに?地図によると……?」


 アーリャは母から渡された地図を凝視していた。


 どうやらカニカニ村から数キロ程度先に、温泉付きの民宿施設があるらしい——

 母はそこに一日目は泊まるといいとのメモ書きを地図に残していた。


「ドメルワッカ民宿、か……、行ってみるか。」


 青紫色の羽をバッサバッサしながら、移動を始めた。


 そして一時間程、空を移動している最中、上空からでもよく見える、何か干からびた物体が地面にあった——


 「あれ?あれなんだろ。ちょっと降りてみるか。」


 移動の途中だったが、好奇心からアーリャは地面に降り立った。


 そこには、……、なんと!先程おとずれていたカニカニ村の、一族の姿形をした物体があった——


「え?これ、死んでるの?ねぇ、生きてる〜?お〜い?」


 しかし、しかばねからはなんの応答も無い——


「死んでんのかあ〜、ひどいな、こりゃ。」


 しばらく立ち尽くしていたアーリャだったが——


「んん〜〜、ま、あちしがここに長居しても、このカニさんが生き返るわけでもないし、そろそろ行くか……、じゃ〜ね、カニの死骸さん」


 「ま、待てカニ……」


 アーリャはドキッつ!とした。


「ええ?!生きてたの!?大丈夫?カニさん!!」


 そう、その死骸、かと思われたカニ族はまだわずかながら息があった。


「何があったの?誰にやられたの?それとも旅の途中の野垂れ死に?」


 カニはゼーゼー言って、


「酷いこと言うカニな〜。ゼーゼー。いわゆる勇者一向にやられたカニ。」


「勇者一向?もしかして、さっきカニカニ村の住人の一人が言ってた村をめちゃめちゃにした連中のこと?悪名高いなあ〜、でも、カニさん、生きてて良かった。」


「わしももう長くないカニ。最後に言っとくカニが、今、勇者一向はドメルワッカ民宿に滞在しているカニ。」


「えええっ!どうしよう!!あちしいまソコ向かってた!このまま行ったら殺されちゃうかな!?」


「いや、奴らは人間は襲わんカニ。同族はな、カニ。むしろよくしてくれるだろうカニ。」


 アーリャは不安そうに——


「でも、悪いことしてるのは明らかに人間族である、勇者一向だよね?あちし、虐殺なんて、許せない!」


「変なことは考えん方が身のためカニ。奴ら、異種族である我々に味方する人間がいたら、容赦なく殺すかもしれんカニ。そして、奴らは強いカニ。でも、ここでひとつ聞きたいカニが、人間にとってカニ族はあくまで“食べ物”カニか?」


「え?」


「いいんだカニ。体裁取り繕わなくても、……カニ。どうなんだ?カニ??」


 アーリャは言いにくそうに、


「うん、カニさん。正直に言うよ。あちしも、最初はカニカニ村って聞いて、カニ料理食べれる〜〜って喜んでた。でも、あなたを含め、カニカニ村のどのカニさんも人格があると言うか、人間と変わりないもの。食べようなんて思わないよ。これは絶対嘘じゃない。」


 カニは息も絶え絶え、言った——


「それを聞けて嬉しいカニ。ドメルワッカには、結局行くのかカニ?」


「ちょっと考え中。話し合いが通じる相手かはわからないけれど、一応やってみる。殺されない程度に戦ってもみるよ。」


 フフ……、とほほえんだ後、カニは死んだ——


「待ってろ、勇者一向!行くぞ〜〜!!」


アーリャは青紫の羽を全開にしてばっさばっさとドメルワッカに一直線に向かって行った。

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