第一話「旅立ち」
「じゃじゃ馬に出る幕はないんだよ。」
コッポラおばさんが、アーリャに言った。
彼女はソーニャ・コッポラ。そして今ソーニャにたしなめらたのが、娘のアーリャ・コッポラ。
コッポラ家は写真現像の家業を営んでいた。今回、写真現像の作業を、まだ一度も経験したことの無い六歳のアーリャが写真の現像室にこっそり忍び込んだ結果、この様な結果になった。
「あちしでも、すこしは大人の仕事をしてみたいんだいっ!」
六歳のアーリャが不機嫌ヅラで言った。
ソーニャは、呆れ顔で、
「そうかい。わかったよ。でも、今の私に言えることは、あんたは世界中を旅して、色々な物を見、色んな物を吸収してから、写真にたずさわってほしい。それだけだね。」
アーリャは意味が分からないっといった風な、キョトン、とした顔をして——
「写真のはなしに、旅??関係あるの?」
「大いに関係あるよ。それこそ、中学生にでもなって感性が成熟段階に入っていたなら、旅をしろ、なんて言わないさ。でも、あんたは、アーリャは、たったの六年しか生きてないんだよ?ほんとに写真を生業にしたいなら、これくらいの荒療治は必要さ。可愛い子には旅をさせよ、とも言うしね」
アーリャは少し黙って…
「分かった!あちし、旅に出る!!」
ここはギャラン・テカ・シグマ共和国———
ある、写真家を志した少女がこれから始まる波瀾万丈の物語のことなどつゆ知らず、共和国を出て、新たな旅に出た—