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スイソーガー~小坂県立福浦西高等学校吹奏楽部~  作者: 闇技苔薄
一年生編

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第93話 仁義なき戦い-お手伝い係争奪死闘篇-

アンサンブルコンテスト小坂県大会が終了し、福浦西高校金管八重奏は福浦西高校吹奏楽部史上初めて小坂県代表として東海越大会に出場することとなった。

今年のアンサンブルコンテスト東海越大会はお隣の初芝県の初芝県文化会館で行われる。

つまり、出場者8人は県外に遠征、お泊りができるのだ。

加えて顧問の井口先生も同行するのだが、それだけでは荷物番などの細々した雑務をこなす人がいないので、サポートメンバーとして4人同行することとなった。

さすがに名門でもない公立校では全員同行させる財力は無いのです。

このサポートメンバー、せっかくの東海越大会、来年のためにも1年生に空気を味合わせたいというメンバーの意向、また当日急な体調不良によるメンバー交代にも対応するため、金管1年生の中から4人(予算的に4人が限界)選ばれることとなった。

急な交代にも対応するため、サポートメンバーに選ばれたら交代できるように事前に曲をある程度練習しておく必要がある。

もちろん1年生は大会前から予備メンバーとしてある程度練習はしているのだが、正規メンバーと合奏を多くしているわけでもないので正直メンバーが交代するような状態になった場合はもう辞退を避けるための参加、演奏の質に関しては最低限になってしまう。

1年生としては舞台に立ってみたい気も全くないわけではないが、そうならないことを祈るのみなのである。

金管1年生の中から4人、つまりブラスオクテット8人の中から4人選ばなくてはならないのだ。

これは、福浦西高校金管八重奏のサポートをするため、また東海越大会に参加するため、さらには合法的に授業を休み県外お泊りをするため…サポートメンバーを奪取するためのブラスオクテット8人による血で血を洗う戦いの記録である。


[タイトルバック] 仁義なき戦い-お手伝い係争奪死闘篇-(てぃりり~~~!てぃりり~~~!※トランペットめっちゃかっこいいけど難しい)



ブラスオクテット8人が揃い、顔を見合わせる。

みんな真剣な、そして気を許したらやられる!というような緊迫した空気。

まずはブラスオクテットのお母さんことユリが口を開く。


「一応聞くけど、サポートメンバーになりたい人挙手」


8人全員挙手。

いつもおとなしい藤原さんも今日は積極的に挙手。

だれも譲る気はねぇってことか、まぁそうだよな。


「まぁせっかくの機会だしそりゃそうだよねぇ。ちなみにさっき井口先生とカナさんと一緒に話したんだけど、やっぱサポートメンバーの編成的にはトランペット1人、トロンボーン1人、ホルン1人、低音1人、が一番現実的かな、と。ユーフォとテューバはまぁ同じ低音パートってくくりだけど…まぁもうメンバー交代無いことだけを祈る感じ。最終的には編成考えずに8人で決めていいって言われたんだけど、まぁ編成的にそうせざるを得ないよねぇ」


全員「ですよねー」という表情。

こっちで決めていいって言われたって、さすがに編成考えずにトランペット2人とホルン2人、とかになったら微妙でしょう。

1年生でもさすがにそこらへんはわきまえている。


「ちなみにこの前言われたと思うけど、サポートメンバーといえど県外遠征になるから今までより費用はかかる。部費から出る分もあるけど多少個人で出すことにはなるよ。そこんとこ親とは話してOKってことで、みんなさっき挙手したんだよね?」


全員無言で頷く。

覚悟を決めたやつらしかここにはいない。


「じゃあやっぱトランペット1人、トロンボーン1人、ホルン1人、低音1人の編成で決めるしかないね。じゃあ各パートに分かれて…」


「ちょーと待った!」


「どうしたの、アイリ?」


「念のため聞く。2年生の金管八重奏って男子藤原さん1人だけじゃん?井口先生も男ではあるけど、やっぱ男子一人じゃ厳しいとかそういう意見出てなかった?だから佐々木君を是非、とかそういう藤原さんからの要望。別にユリに行かないでほしいとかでは全然ないんだけど、念のため」


キタキタキターーーーー!!!

藤原さん何でもします!荷物も全部持ちますし、背中も流します!なんでも貸します!

是非、お供させてください!!!!!


「あー、なんかそういう意見出たらしいんだけど、藤原さん的には「居てくれたら心強いのは確かだけど、それを理由に決めなくていいよ」って藤原さんが言ってた」


「ちょちょちょちょちょ!!!ででもやっぱ多少孤立しちゃうとかあるんじゃあななないでしょうかあ???」


「可能性が見えてきたとなったら急にがっついてきたな。そういう意見もあったにはあったらしいんだけど…でもレイジ、考えてみて。もし藤原さんがナツキさんと一緒に行動したとしたら…あんたが孤立だよ?」


「「「「「「確かに~」」」」」」


あああああああああ!!!確かにそれは地獄かもしれん。

藤原さんとナツキさんが付き合っているから、そういうパターンもあるのか!!!

もしそんな時間があって、俺が孤立したら…うわあああああああああああああああああああああああ!!!!!


「それかレイジが孤立しないように、藤原さんが気を使ってナツキさんと行動しないようにするとか…そういう状況も…」


「あああああ!!!かわいそう!俺もかわいそうだし藤原さんもナツキさんもかわいそう!」


「ってことで、そういうのは気にしなくていいよってことだそうなので、フラットに決めましょう。じゃあ各パートに分かれて決めて!」


各パートに分かれる直前に、中森さんにすっごいゲスい顔で肩をポンッと叩かれた。

「まぁもうこういう話題出ちゃったら「俺サポートメンバーになりたいです!」とか言いづらいよな。わかる。気持ちはわかるぞ。辛いよな。まぁその、頑張れよ」という憐みの表情。

しかし俺は…おう、おれは佐々木…あきらめの悪い男。

これしきのことで東海越大会の演奏を生で聴くというチャンスをあきらめるわけには行かないんだよ。

静かにしろい この音(?)が…オレを甦らせる。何度でもよ。


■低音パートの場合


「さてヤヨイちゃん、どうしようかね」


「アオイちゃんも、行きたいんだよね」


「そりゃそうだよ!こんなチャンスめったにないもん!」


「だよねー。私たちの場合楽器も違うから2人とも行かしてもらえないかなぁなんて思ってたけど、予算の問題もあるからなぁ」


「そだね。運搬・移動・宿泊…いっぱいお金かかるしねぇ」


「うーん…アオイちゃんが行きたいってことなら、私は遠慮しようかなあ…(チラチラ)」


「ほぅ(ゴクリ)…いやいやでもヤヨイちゃんも遠慮しちゃダメだよ!ここで遠慮しちゃもったいないよ。ヤヨイちゃんだって先輩の演奏も、他校の演奏、特に県外の高校の演奏聴きたいでしょ?」


「そりゃまぁねぇ…でもそしたらいつまでたっても決まんないよ」


「…もう…じゃんけんしかないか」


「それが一番後腐れないかもね」


「よし…!恨みっこなし!」


「うん…」


「「最初はグー、じゃ~んけー~ん…ぽん!!!」」



■トロンボーンパートの場合


「さてコヨミ、どうしたもんかね」


「アイリちゃんも、行きたいんだよね」


「そりゃそうだ!こんなチャンスめったにないし!」


「だよねぇ。2人とも行かしてもらえたら最高なんだけど、予算の問題だからなぁ」


「そーだなー。自分たちで出せるのだって限界あるし。公立校は辛い!」


「うーん…アイリちゃんが行きたいってことなら、私は遠慮しようかなあ…(チラチラ)」


「ほぅ(ゴクリ)…いやいやでもコヨミも遠慮しちゃダメだよ!ここで遠慮しちゃもったいないよ。コヨミだって先輩の演奏も、他校の演奏、特に県外の高校の演奏聴きたいでしょ?」


「そりゃそうだけど…でもそしたらいつまでたっても決まんないよ」


「…もう…じゃんけんしかないか」


「それが一番後腐れないかもね」


「よし…!恨みっこなし!」


「うん…」


「「最初はグー、じゃ~んけー~ん…ぽん!!!」」


■ホルンパートの場合


「よし決めた。ユウカがそこまで言うなら私が行ってくる!」


「何も言ってないんだが」


「将来福浦西高校吹奏楽部を背負って立つ私に経験を積ませようと涙を飲んで送り出すその心意気、しかと受け取った!」


「涙飲んでないんだが」


「あー皆まで言うな!ユウカの分も演奏聴いて、感じたこと経験したことは絶対持ち帰ってくるから心配すんな!演奏楽しみだな!」


「トモが楽しみなのはお泊りとかそっちの方でしょ?」


「いや、病弱なユウカに長距離移動は体に負担だし、私が代わりになるってことだ。決してお泊りやお土産が楽しみなのではない!」


「私病弱設定ないし」


「よし、ユリに言ってくるか!!!」


「…」


「…んだよ?」


「じゃんけんしかなさそうだな」


「ユウカ顔怖いよ…やだ!私じゃんけん弱いから!!!」


「じゃあどうするよ。あみだくじ?くじ引き?」


「いや私が行くって」


「じゃ~んけ~ん!!!!!」


「わかったわかった!!!10回勝負な!」


「多い」


「はいすみません」


「「最初はグー、じゃ~んけー~ん…ぽん!!!」」


■トランペットパートの場合


「さてどうするかね」


「どうするかねぇ。レイジも行きたいよね?」


「そりゃそうだ!こんなチャンスめったにないし!」


「さっきの孤立リスク聞いても?」


「ぐっ…でも…やっぱ東海越大会のいろんな学校の演奏は聴いてみたいし、雰囲気感じてみたい」


「だよねぇ。こんなチャンスめったにないもんね。どーすっかなぁ。私だって聴いてみたいし」


「…里崎堂のケーキで手を打たんか?」


「里崎堂のケーキ・・・モンブラン?」


「うん!」


「ショートケーキも?」


「うん」


「ミルフィーユも?」


「う、うん」


「イチゴのタルトも?」


「う・・・」


「フルーツのロールケーキも?」


「・・・」


「冬限定いちごのレアチーズケーキも?」


「(今日天気いいなぁ)」


「チョコレートの・・・」


「デジャブ感(第16話参照)がすごい!!!」


「いやさすがにこれをケーキだけでは譲れんわ。いくらあの里崎堂のケーキとは言っても」


「そりゃそうだけど…でもそしたらいつまでたっても決まんないじゃん」


「…もう…じゃんけんしかないか」


「それが一番後腐れないな」


「よし…!恨みっこなし!」


「うん…」


「「最初はグー、じゃ~んけー~ん…ぽん!!!」」



結果、サポートメンバーは以下の通り。

低音パート:アオイ

トロンボーンパート:コヨミ

ホルンパート:ユウカ

トランペットパート:ユリ


以下、居残り組の言い分。

ヤヨイ「アオイちゃん、私の分もいっぱい聴いてきてね。感想教えてほしいな」

アイリ「コヨミ、先輩たちをよろしくな!いろんな学校の演奏とか、その場の雰囲気とか、後でいろいろ教えてくれよな!」

トモ「ユウカは絶対後出しした。あいつは汚い。目的のためなら手段を選ばない恐ろしいヤツだ…クソが!!!!!楽しんで来いよ!!!!!」

レイジ「まぁ、孤立しなくてよくなったし…ねぇ。そうだよ。孤立したら辛いし、泣いちゃうし…うん!後で感想聞かせてください…」


こうしてサポートメンバーが決定し、福浦西高校金管八重奏は東海越大会に向けてまた進みだすこととなった。

サポートメンバー4人はいつもの練習をしつつ、カンツォーネも練習している。

東海越大会という未知の領域、福浦西高校吹奏楽部の挑戦が始まった!

うんまぁ孤立したら辛いし、藤原さんも気使わなくて済むよね。

うんそうだ、そうに決まってる。

これはいい判断だったんだ。

うんうんうん…。


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