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スイソーガー~小坂県立福浦西高等学校吹奏楽部~  作者: 闇技苔薄
一年生編

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第91話 理由なきNew Days

アンサンブルコンテスト県大会の演奏が全て終了。

福浦西高校金管八重奏の演奏もクラリネット四重奏の演奏もどちらも凄くいい演奏で、絶対一定のインパクトを残したと思う。

ていうか残した!

観客のリアクション(拍手の感じ)も絶対良かったし!

福浦西高校ここにあり!を見せられた気がしてなんか嬉しかった。

うちらの先輩達、すげーだろ!?



審査員による講評の後、いよいよ審査結果発表が始まった。

参加団体が多いので発表は速いペースでどんどん進んでいき、あっという間に午後演奏した団体の順番になった。

そろそろ、来る。


「福浦高校金管八重奏、金賞ゴールド」


当然のように金賞、会場も「福浦高校なら当然でしょ」という雰囲気。

でもあの大人びた演奏はすごかった。

多分、東海越大会も行くだろうな。


「福浦西高校金管八重奏、金賞ゴールド」


うおおおおおおおおおおおおお!!!!!

カナさん達すげぇ!県大会で金賞だ!

あの演奏はワクワクしたもん、当然っちゃ当然か?

カナさん達もみんな満面の笑みで喜んでいるし、福浦西高校みんな喜んでいる。

なんかすごく、いい!

もしかして、もしかするかも!?


「福浦西高校金管クラリネット四重奏、銀賞シルバー」


くぅ~~~~~、厳しい!

すごくいい演奏だったんだけどな…でも福浦西高校みんな大きな拍手。

会場からも大きな拍手。

たぶん、観客にも福浦西高校金管クラリネット四重奏の熱意は伝わったはず。

クラリネット四重奏のメンバーはすごく残念そうだけど、拍手を聴いてちょっと笑っていた。

やれるだけのことはやってきたのだろうし、やっぱ先輩達すごい!


「福浦東高校金管八重奏、金賞ゴールド」


おおおおおお!!!リコピンさん達も金賞!!!

福浦、福浦西、福浦東の金管が全部金賞だ!!!

なんかすげぇ!

うちらの地区の金管、実はすごくレベル高いんじゃない?

なんかそんなところに居られるなんて…すげぇ!!!(語彙力無し)



金賞!金賞!金賞!

やった!やった!やった!!!

今まであんだけやってきたし、今日の演奏も結構手応えあった!

やってきたことが認められた気がして、すごくうれしい!

リコピンも金賞、やっぱスゲーなあいつらも。

福浦高校はあの演奏なら当然か、大人っぽいすごいかっこいい演奏だった。

身近にいいライバルがいっぱいいて燃えるわ。

後は東海越大会発表のみ…どうだ!!!???

参加チームは50団体、その中で東海越大会に進めるのは5団体のみ。

50団体中金賞は21団体…21団体中5団体…狭き門だけど…どうなる!?


「それではこれより東海越大会に推薦する団体を発表します」


きたきたきたーーー!!!

頼む頼む頼む!!!

まだ、この8人で演奏したいんだよ!!!!


「1校目、12番、橋本深川高校サックス四重奏」


おぉ!やっぱ全国大会の常連!まぁここは固いよなぁ!!!


「2校目、18番、福浦高校打楽器五重奏」


福浦高校来た!ここも鉄板だな。


「3校目、24番、橋本深川高校クラリネット四重奏」


橋本深川2つ目か!やっぱ常連校はすごいや。


「4校目、31番、福浦高校金管八重奏」


福浦高校も2つ目!しかも金管!

あの演奏凄すぎたからなぁ…やっぱ常連校は凄いや。

小坂県の吹奏楽といえば橋本深川と福浦高校って感じだからなー。

てか後1団体か。

ここに…最後の1団体に滑り込めないだろうか。

1年前はグダグダだったけど、1年かけてここまで来たんだ。

私自身充実してたし、先輩にも同期にも後輩にも恵まれた。

アンコンでもみんなついてきてくれたし、やれることはやった。

でもまだ、この曲をああしたいこうしたいがいっぱいあるんだよ!!!


「5校目、35番、福浦西高校金管八重奏」


ーーーーーーーーーーーーーー。

ーーーーーーーー。

ーーー。

静寂。

すごく時間が長く感じる。

なんか体中の熱が抜けた感じがして冷たい。

横のナツキと目が合う。

いつものクールな表情のナツキ。

無言でハイタッチして抱き合う。

瞬間体中に熱が一気に湧き上がる。

熱い、体中熱い。

胸の奥から何かが込み上げてくる。

吐くのかこれ?

でも込み上げてきたものは…小さな「やったぁ」だけ。

体中熱いのになんでこんな冷静なんだろ。

舞台上では藤原達が顔を赤らめてすごく興奮した感じで賞状受け取っている。

視線を客席に戻すと目の前のナツキの表情が急にクシャクシャになる。

クシャクシャに泣いてもイケメンだなこいつ。

周りのみんなもなんか顔を赤らめてたり、クシャクシャの表情だったり。

いろいろ声かけられてるみたいだけど、なんかよく聞こえない。

また胸の奥から何かが込み上げてくる。

吐くのかこれ?

またさらに体中が熱くなってくる。

込み上げてきたものが胸を通って、喉を通って、口元まで来て…


「やった!!!!!!!!!!」


後で聞いたら私も相当顔がクシャクシャだったみたい。

よく覚えてないけど。



日程が全て終了しロビーに出ると、ちょうど表彰式に出ていた藤原達が戻ってきた。

いつも落ち着いている藤原には珍しく、賞状を持って拳を高く挙げてこっちに駆け寄ってくる。

福浦西高校金管八重奏再集結。


「「「「「「「「やったな!!!!!」」」」」」」」


感情爆発。

みんな思い思いに感情を爆発させた(それなりに周りに配慮しながら)。

私もナツキと抱き合い喜びながらわんわん泣いた。

みんな最高!

この8人で演奏出来て本当に良かった!

で、まだ演奏できることがさらに嬉しい!


「みんな、ありがと!!!」


「カナがここまで引っ張ってきてくれたからだよ」


「そうだよ、こちらこそありがとう!」


「~~~~~っ!!!あ゛りがとう!」


なんかすごく報われた気分。

今日、ちょっと大げさだけど今までの人生の中で最高な日かもしれない。


「「カナさんおめでとうございます!!!」」


急に後ろからレージとユリが興奮気味に2人合わせて声をかけてきた。

相変わらず仲いいな!


「あ゛っ、あ゛りがど…」


もうなんかさらに泣きまくってわけわからんし制御できない。

こんな顔後輩に見られたくないのに、どうすることもできない。

めっちゃ恥ずかしい。

レージもユリも顔を赤らめて笑っている。


「すごいです!やっぱカナさん達、すごいです!!!すっごいアツイ演奏でした!あんな情熱的なカンツォーネは今まで聴いたことないです!」


こういうこと言われると、やっぱ嬉しいなぁ。

後輩にこういうこと言われると、「先輩の背中」ってやつを見せられたようでなんかそれも嬉しい。

ユリって超が付くほどマジメなんだけど、かわいいヤツだよなぁ!


「福浦西高校が東海越大会に行くのって、史上初らしいですよ!夏のコンクールとアンコン両方合わせても初めてだそうです!!!」


そうらしいね。

なんか私やっちゃいましたか?

歴史作っちゃいましたか?

って調子に乗って口走りたいけど、泣いててそんな余裕ない。

私も泣いてるし、ナツキも泣いてる。

レージは泣いてはないけど顔は明らかに興奮しているし、ユリも目に涙を浮かべている。

とりあえず私はユリの頭を思いっきりワシャワシャして、


「ありがとう!!!嬉しい!!!」


私もナツキもユリもレージも笑った。

こいつらも最高だ!ありがとう!



ひとしきり泣いて笑って興奮して、ちょっと落ち着いてきたところでクラリネット四重奏の4人がこっちに来た。


「みんな金賞と東海越大会進出おめでとう!」


「あ、ありがとう!そっちの演奏もすごい良かったよ!…ってなんでぽかんとしてんの?」


「いや、カナのことだから「当然っしょ!君らとは格が違うのだよ!!!県大会銀賞おつ~」とか言われるかと思って」


「あんたらは私のことどんだけクソ野郎だと思ってるの」


「うそうそ冗談だって。ホント、おめでとう。うちらもやれることやってきたから満足はしてるけど、やっぱ悔しい。でも金管八重奏が東海越大会進出出来て本当に嬉しい。うちらの分も頑張ってな!」


「おう!任せとけ!!!」


「なんか今日カナやたら素直じゃない?」


「あんたらは私のことどんだけ捻くれてると思ってるの?…でもこの金賞は福浦西高校みんなのものだよ。アンコンに取り組んだみんなが本気だったから私たちも負けじと頑張れた。クラリネット四重奏とかめっちゃいいライバルだったよ。それに大会出られなかった1年生も本気だったのも本当によかった!福浦西高校みんなが本気だったからこその東海越大会出場だよ!」


「…まじで今日のカナどうしたの…」


なんか自分でも不思議なくらい気分が晴れやかだ。

思っていることをすごくストレートに言うことができる。

なんというか、自分自身が一皮むけたというか、進化したというか…トランペット奏者として、パートリーダーとして、金管八重奏として、生徒指揮者として、なんかものすごくポジティブな気分で全てを捉えられているというか、全部やってやろう!って感じ。

ここにいるみんな、そして先輩たちのおかげ。

先輩…?

そーだ!!!



「おいマジか!マジで東海越大会行ったのか!?」


「すごい!おめでとう!」


トランペットパートのグループに「【速報】金管八重奏東海越大会決定」と打ったら、すぐにシオさんとミズホさんからグループ通話で着信があった。


「マジでーす!福浦西高校初の東海越大会出場、やっちゃいましたー!」


「すげー!マジですげーよ!本当におめでとう!やったな!!!」


「ありがとうございまーす!」


シオさんもミズホさんもちょっと目を潤ませながら興奮している。


「シオさんとミズホさんのおかげです」


「いやいやナツキ、みんなが頑張ったからだよ!」


「いやでも、ホント2人のおかげです!シオさんとミズホさんがいろいろ教えてくれたから、ここまで来れたんです!ありがとうございます!」


「…」


「え?」


「お前本当にカナか?そんなキャラだったっけ?お前のことだから「いや~、シオさん達あっさり超えちゃいましたー。時代はやっぱ私達なんですねぇ!シオさん達は安心して受験してください!あー、私は東海越大会で忙しい!あー忙しい!」とか言われるかな、と思ってた」


「やっぱりみんな私のことなんだと思ってるんですか」


「冗談だよ!そう言ってくれると嬉しい」


「私も!なんか自分たちのことのように嬉しいな」


「まぁ東海越大会とか福浦西高校からしたら未知の領域だからさ、うちらももうちゃんとしたアドバイスとかできないけど…やれること一生懸命準備して楽しんできなよ。で、満足する演奏できりゃ大成功じゃん。その時は話聴かせてくれよ?」


「もっちろん!」


「つーか今日の演奏聴きたかったなー。音源入手出来たら聴かせてよ」


「すっごい演奏だったんですよ!!!カンツォーネなのにすっごい情熱的で、でも形はしっかりしてて、でですね…」


ユリが興奮気味に割り込んできて、延々と私たちの演奏を嬉しそうに絶賛する。

それをシオさんとミズホさんは嬉しそうに聞いている。

なんかすごく恥ずかしいんだけど、すごく嬉しい。

みんな笑顔。

金賞、東海越大会進出はもちろん嬉しいんだけど、この今の光景が最高に嬉しい。

金管八重奏のメンバーも、同期も、後輩も、先輩も…私は周りに恵まれてるなぁ。

本当にみんな、ありがとう。

おめでとう!!!!!


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