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スイソーガー~小坂県立福浦西高等学校吹奏楽部~  作者: 闇技苔薄
一年生編

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第69話 【番外編】テューバマン 第1話「チューバ作戦第一号」

国際宇宙ステーション、ここでは各国の優秀な宇宙飛行士達により日夜様々な実験や研究が行われている。


「見ろよスウェアリンジェン、今日も地球がキレイだぜ(英語)」


「HaHa!そうだな、地球が青かったってのは本当だったんだな、バーンズ(英語)」


「???な、なんだあれは?(英語)」


「どうした(英語)」


「赤い球体が、ものすごいスピードで地球に向かっている…(英語)」


「隕石か?(英語)」


「いや、隕石にしては早すぎる。まるで、自分から意志を持って地球に向かっているような…おい!管制センターに連絡だ!(英語)」


「OK。管制センター!地球に、巨大な赤い球体がものすごいスピードで地球に向かっている!!!(英語)」



午前5時、菊地葵はものすごい衝撃音で目が覚めた。

何が起きたのか、何かが爆発でもしたのか、と窓を開けると福浦西高校の方向の山の頂上付近で火災が発生していた。

山火事か、隕石でも落ちたのか?

周りの家々でも窓を開けて多くの人がその山火事を見ていた。

しばらくすると上空をヘリが飛び始めた。

リビングに行って家族と一緒にテレビをつけると、臨時ニュースが始まっていた。

どうやら福浦西高校が建っている山の頂上付近に隕石が落下したらしい。

周辺区域は立ち入り禁止、今日は休校になった。

朝食を食べながらテレビを見ているとヘリのカメラが隕石の姿を捉えた。

なんだこれは。

見事な球体、丸すぎる。

これは隕石ではない、葵も、家族も、リポーターも、誰もがそう思った。

ではこれは何なのか。

不安と恐怖で背筋が寒くなった。

そして次の瞬間、球体は赤く点滅を始めた。

これは…鼓動?

点滅はだんだん早くなる。

リポーターは恐怖と興奮でもう何をしゃべっているのかわからない。

みんなテレビに釘付け、その間にも点滅はどんどん早くなる。

どんどん、どんどん。

点滅は止んだ。

静寂。

家族みんなが息を飲む、きっとどの家庭も今はそうなっているのだろう。

リポーターが少し冷静に「いったい、何が起ころうとしているのでしょうか」といい、カメラが球体をアップにしたその瞬間、小さな爆発が起きた。

衝撃波で砂埃が上がる。

ヘリは大丈夫だったらしく中継は続いているが、砂埃で何も見えない。

砂埃が晴れていく。

うっすらと影が見える。

影は、動いている。

薄くなった砂埃から恐竜のような手が伸びて…中継は終了した。



怪獣というものが実際に存在するとは、荷物をまとめながら葵はぼんやりとそう考えていた。

これって夢じゃないだろうか、と頬をつねると痛かった。

これは、現実なのか。

テレビでは、30メートルくらいはありそうな怪獣に向かって自衛隊が攻撃をしている。

まるでテレビの巨大特撮モノを見ているようだ。

攻撃は効いているのか効いていないのか、怪獣は暴れ、落石の巻き添えとなって福浦西高校の校舎の一部が脆くも崩れた。

テューバは、私のテューバは…私物じゃないけど私のテューバは…。

吹奏楽やる場所が…部室が…楽器が…壊されてしまう。

気づいたら涙が流れていた。

荷物を作る手が止まり、目の前がグルグル回り、真っ白になってしまう。

…壊されたくない、壊されたくない!悔しい!悔しい!

涙が止まらなくなってきた。

気がつくと目の前は真っ白のはずなのに、赤い光と青い光が灯っていた。

赤い光と青い光はだんだん交じり合い、やがてひとつとなった。

そしてその光の中に、テューバのマウスピースがあった。

光が私の頭の中に直接語りかけてくる。

私は、悔しい。壊させたくない。私は…戦う。

ぼんやりとしながらマウスピースに手を伸ばす。

マウスピースをつかむと、辺りは明るくなり、体がどんどん軽くなるような不思議な気持ちになった。



「ご覧ください!テューバ!手足の生えた大きなテューバが、怪獣の前に突如立ちはだかっています。これはいったい、どうなっているのでありましょうか」

先ほどのヘリとは別のリポーターはもう訳が分からなくなっているようで、半笑いになっている。

手足の生えたテューバは一回自衛隊のほうを向いて頷くと、怪獣に向かって走り出した。

福浦西高校を踏み潰そうとしていた怪獣の手をつかむと、奥の山に向かってぶん投げる。

倒れこむ怪獣に向かって、手足の生えたテューバはジャンプしてのしかかる。※楽器は大切に扱いましょう。

怪獣に跨った手足の生えたテューバは怪獣に向かってパンチを連続でお見舞いする。

突如怪獣の角が光りだし、怪獣の口から光線が吐かれた。

手足の生えたテューバは後ろに吹っ飛ぶ。※楽器は大切に扱いましょう。

倒れこんだ手足の生えたテューバに、立ち上がった怪獣が再度光線を吐く。※楽器は大切に扱いましょう。

間一髪、手足の生えたテューバは光線を避け、立ち上がった。

ポタン、ポタン、ポタン。

手足の生えたテューバからバルブオイルが漏れ出している。※楽器のお手入れはこまめに行いましょう。

手足の生えたテューバはピストンを一瞬気にすると、体を前に倒し、四つん這いの体勢になった。

楽器のベル(アジサイみたいに開いてる楽器の先端のところのことだよ!)を怪獣に向けると、ベルの中が光りだした。

ベルから、虹色の光線が放たれた。

怪獣はその光線をモロに受け、少し耐えたが耐え切れずに…爆発した。

福浦西高校の校舎は守られた。

手足の生えたテューバは立ち上がり、空へと消えていった。



気がつくと葵は福浦西高校の校舎の前にいた。

校舎の一部は壊れていたが、奇跡的にほとんどは無事だった。

こっそり部室のほうに回ってみると、窓ガラスは割れたりしていたが部室は無事だった。

私のテューバも、無事そうだ。

そう思ってポケットに手を突っ込むと、何かが手に当たった。

ポケットから出してみると、手の中にはテューバのマウスピースがあった。

そうか、あれは夢じゃなかったんだ。

あの光も、怪獣と戦ったことも、全部夢じゃなかったんだ。

私は、選ばれたんだ。

強大な力を手にしたことに、興奮と同時に恐怖を覚えた。

この力は、皆を守るために使う。

そう決心し、葵は家へと向かって歩き出した。

もう少し、力を貸してね、テューバマン!


【次回予告】

突如現れたテューバマンは、人類にとって敵か味方か。日本、そして世界は決断を迫られる。

世論の葛藤を受け止める葵は、力を使うか決断を迫られる。

この力は、正義か、悪か。

その時、人類の前に宇宙人が現れる。

葵の決断は如何に?

次回、「侵略者は売って?」お楽しみに。


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