第64話 【速報】ナツキ様と藤原が一緒に帰っていた件
ナツキ様ファンクラブ現会長のナナからそんなメッセージが夜私のスマホに届いた。
ほうほうほう、私の旦那であるナツキにスキャンダルとな?
私はすぐさま「明日は緊急合同記者会見ですな!」と返信した。
ニヤニヤニヤ、明日は何やら面白いことになりそうですな!
…
翌日。
授業が終わると真っ先に部室に向かった。
部活が始まる30分前、部室にはもうナナがいた。
「カナ!昨日の件だけど!カナは知ってた?」
「いや、知らない。旦那にスキャンダルとか、妻としてはほっとけないね!」
「あんたは妻じゃないでしょ!でも、ナツキ様ホントに藤原と…ああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「まぁまぁ、偶然一緒に帰ってたってこともないことはないだろうし、とりあえずどっちかが到着するまで待とうや」
ナナはソワソワ、私はニヤニヤ。
まだかなまだかな、藤原かナツキはまだかな。
おっほ、やっべ、ニヤニヤが止まらん。
「お疲れ様でーす」
数分後、藤原が部室に入ってきた。
私とナナはさっそくスマホのカメラを起動し、フラッシュを焚いた。
「藤原さん!昨日の帰りの件で確認したいことがあるんですが!」
「な、な、急に何?」
「しらばっくれてもダメなんですよ!ちゃんと目撃者もいるんですよ!」
「だから何の話だって!」
ナナはすぐさま自分の目を手で隠して、ちょっと声を高くして言う。
「私、昨日、見ちゃったんです。藤原君が、ナツキ様と一緒に下校しているところ」
「!!!!!」
藤原の顔色が変わった。
藤原の顔はみるみる赤くなっていく。
ビンゴ!こりゃー絶対偶然じゃねぇな!
「どういうことなんですか!どういうことなんですか藤原さん!納得のいく説明をしてください!」
「い、いや別にこれは、その」
「別にってなんですか?ちゃんと説明してください!」
ナナはその間に机と椅子を準備する。
「さぁ、記者会見の席を作りましたので、こちらに座ってください」
ナナに促され、放心状態の藤原は抵抗することもなく記者会見の席に座った。
なんの騒ぎかと周りに人が集まってくる。
「えー、ただ今より、藤原さんの緊急記者会見を行います」
「藤原さん、昨日唐川さんと一緒に下校したというのは本当ですか?」
周りから「ええええええええええええええ」だの「おおおおおおおおおおおおおおおお」だの「ナツキ様ーーーー」だの「藤原きゅーーーーーん」等の歓声のような怒号のようなものが沸き、部室は一気に熱を帯びる。
「黙ってちゃわかんないですよー!」
「ほ…ほほ…本当です」
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
パシャパシャパシャ、見学者含めたくさんのスマホのフラッシュが焚かれる。
「お二人は、いったいどういう関係なんですか?」
「…えっと、えと」
「なんですか?」
「うぅ~…」
「かわいく頭抱えて唸ってもだめですよ!はっきりしなさい!」
「むむむ」
藤原の顔はさらに真っ赤になり、汗ダラダラ。
「そんな風にしたら藤原きゅんかわいそうだよー」みたいな声も聞こえてくるが、大事なことなのですよ!
大事なことなのではっきりさせないといけないのですよ!
「お疲れ様でーす」
そこにナツキ登場。
辺りは一瞬の静寂。
「え、なに?」
「もう一人の主役の、登場じゃあああああああああああああ!!!」
「きゃああああああああああああああああああああああああ!!!」
「なに?なんなのこれ…って、藤原君?」
ナツキは小動物のようにちょこんと椅子に座っている藤原に気づいた。
「な…な…」と顔が真っ赤になって声が出せない状態になったナツキを、「まぁまぁこっちに座ってくださいよ」と藤原の隣の席に座るように促す。
「主役が揃ったところでもう一度!お二人は、いったいどういう関係なんですか?」
「うぅ…」
「うぅ…」
2人とも「うぅ…」と揃って声を絞り出す。
すでに仲いいじゃねーかコノヤロー!
「…てます」
「ちょーっと待って、今藤原が何か言った!」
「…あっています」
「ん?」
「俺と!唐川さんは!つつつつつつ、付き!合ってます!」
「よく言った藤原ああああああああああ!!!!!お赤飯の時間だあああああああ!!!!!」
「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
周囲は大歓声。
藤原とナツキは顔真っ赤にして恥ずかしそうに俯いている。
「ちなみに、告白はどちらから?」
「お、俺からです…」
「藤原お前男だああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
「いつ頃から付き合ってたんですか?」
「先週からです」
「そうですかああああああああ!!!では藤原はナツキのどんなとこr…」
「はいそろそろ部活始めるよー」
熱を帯びていた空気は部長の一声で一気にクールダウンした。
「部長ー、ナツキの晴れ舞台なんだからもう少しだけ」
「ダメー、私も気にはなるけど、後は練習終了後にね」
「はーい」
嵐が過ぎ去ったように周囲の熱は収まった。
藤原とナツキは「やれやれ」という表情で練習前なのにもう疲れきっている。
ちょっとやりすぎちゃったかな?
「あー、じゃ最後に、ナツキ、藤原」
「?」
「2人とも、おめでと!」
周りも「おめでとー」と続く。
これでナツキも感動して涙流すやろなぁ。
いい友達を持ったって!
いい妻を持ったって!
ワクワク!ナツキの感動の涙、楽しみだぜ!
お、ナツキが立ち上がった。
こっちに向かってくるぞ?
まさか、ハグか?
感動しすぎてハグしてくるのか?
ナツキ、お前ってやつは彼氏出来て大胆になったなぁ!
腕を上げた!
おお、こりゃ絶対ハグだよ!
いやぁみんなの前で照れるなぁ、ナツキ様ファンクラブは嫉妬でギリギリするやろなぁ。
おいで!ナツキ!私が抱きしめてやる!
「うるせええええええええええええええええ!!!面白がりやがってよおおおおおおおおおお!!!」
ボコーーーーーーーーーーーーーーー!!!
ドサッ。
私は次の瞬間崩れ去っていた。
あ、ハグじゃなくてパンチでした。
殴られたっぽい。
はい完全に調子乗りすぎましたー。
ナツキぶち切れですー。
ナツキ一回機嫌悪くするとなかなか仲直りできないからなぁ…やりすぎた。
「フーッ、フーッ…行こ、藤原君」
「う、うん」
「ほらみんなも見てないで、部活始まるよ」
「はい!」
ナツキの睨みに周りの皆は怯え、床に崩れ去っている私を置いてさっさと部活へ。
その日の部活、ナツキはとうとうパート練習以外で口を利いてくれなかった。
みんなもやりすぎには、注意ね。
…
練習終了後。
「ナツキ、さっきは本当に悪かった!やりすぎた!調子乗りすぎた!」
「…」
うわ、睨んできてる。
背後の黒いオーラがやばい。
「…ふぅ、もういいよ、怒るのもめんどくさくなった」
「ありがとナツキー!」
「ただ今度このことで同じようなことしたら、完全無視ね」
「承知しました!」
「あぁもう、もっと静かに広がってほしかったよ」
「ごめんごめん、でもナツキ様ファンクラブも公認したし、よかったじゃん。みんな祝福してるよ?私もホント、今更こんなこといっても信じてもらえるかわかんないけど…おめでとうって思ってる」
「ほんとかなぁ?」
「ホントホント。優しい彼氏が出来て、良かったね。なんか自分のことのように嬉しいわ」
「う、うん。ありがと」
「照れてるー、かわいいー」
「うるせ」
「でもさー、告白されたんなら相談してくれてもよかったんじゃない?妻として悲しい!」
「お前に言ったら返事する前に全体に話し伝わっちゃうじゃん」
「信用無さすぎワロタ。でも誰かには相談したの?」
「ミズホさん」
「あーなるほど!絶対私よりいい相談相手だわ!ミズホさんも受験勉強で荒んだ気持ちが癒されてギブアンドテイクだね。ちなみにナツキが付き合うって決めた決め手はなんなの?つーか藤原のどんなとこが好きなん(ド直球)?」
「べべべべべべ別にどこだっていいだるぅおおおおおお???」
「めっちゃテンパってんな!!!お前急にかわいくなりすぎだろ!?」
「…うっさい」
「あーでも先越されちゃったなー、ねー、ユリ」
「は、はい!でもホントお似合いのカップルです!うらやましいです!あこがれちゃいます!」
「ありがとう」
「ユリって結構乙女な部分あるよね、少女漫画好きな系?」
「読むのは好きですねぇ。読んでキャーキャーしてます」
「まぁでもユリには、許婚みたいなやついるし、あーぁ、ホントの一人は私だけかよ」
「許婚なんていませんよ?」
「いるじゃん、レイジが!」
「ちがーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーう!!!」
おめでとう!ナツキ!(強引な締め方)




