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スイソーガー~小坂県立福浦西高等学校吹奏楽部~  作者: 闇技苔薄
一年生編

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第59話 ナツキ様の大事件

どうも、トランペットパート2年生のナツキです。

夏休みも終わり2学期に突入、吹奏楽部も新体制での活動が始まりました。

先輩方がいなくなって最初はバタバタしていましたが、最近はちょっと落ち着いてきました(相変わらずカナがひっかきまわすけど)。

来年の1月のアンサンブルコンテストまではコンクールなどはないし、この時期は基礎練習を通して自分の音と向き合って音自体を高めることができる期間。

とは言ってもやっぱり何かしら曲は吹きたくなってしまうので、これから練習曲を決めてそれを練習していきます。

ついでにその曲を来年の定期演奏会に使っちゃう、なんてこともあるかも。

そんなことをしながらも1月のアンサンブルコンテストに向けて体制や曲目も決めていかなくてはいけないので、まったくヒマというわけではありません。

でも今までよりもゆったりとした時間が流れていく期間。

自分の音を見つめなおすいい期間です。

でもそんな期間に、私に大事件が起きてしまったのです。



9月下旬。

気温も大分涼しくなってきて過ごしやすく、めっきり秋らしくなってきました。

基礎練習の全体合奏を終えて今日の練習は終了。


「ナツキ様ー!お疲れ様ー!」


ナツキ様ファンクラブ(自分で言うのも恥ずかしいんだけど)のナナが声をかけてきた。

ちなみにナツキ様ファンクラブ(自分で言うのも恥ずかしいんだけど)の会長チナツさんは3年生なので引退、今はナナが会長だそうです。

正直全く意味がわかりませんが、「会長に就任いたしました。よろしくお願いします」と挨拶されました。


「お疲れ様」


ナナ含めた数人がその言葉にキャーキャー言ってる。

そうです。

今までもところどころで述べられていますが、私は男っぽい顔なのです。

またあまりしゃべらない性格や、体型も細身で胸も無いので(くっ…)さらに男っぽく見られてしまいます。

「その辺の男子よりもずっとかっこいい。ていうかナツキ様、ガチでかっこよくない?」ということで、ナツキ様ファンクラブ(自分で言うのも恥ずかしいんだけど)なるわけのわからないものも設立されました。

ちなみに過去3回ほど女性から本気の告白受けてます。

私はそっちの気はないので、申し訳ないのですがお断りさせていただきました。


「ちょっとー!私の旦那に声かけられたからって鼻血出す勢いで悦らないでよー!」


「カナうるさーい!カナがナツキ様の旦那なんて、ファンクラブ会員は誰一人として認めてないんだからね!」


「「「そうだそうだ!」」」


「許可制なのかよwww」


そういうとカナが私の腕に手を回してきました。


「ア・ナ・タ。練習も終わったし、ご飯にする?お風呂にする?それともワ・タ・シ?」


「もう今日は帰るだけ」


「あーん、アナタ冷た~い」


ナツキ様ファンクラブ会員が後ろで「離れろ」だの「変われ」だのブーブー言ってます。

カナは私のことをたまに「旦那」と呼びます。

パートナーと思ってそう呼んでいるのか、ナツキ様ファンクラブをからかうために言っているのかはわかりませんが、これがいつもの流れです。

私はカナの手を振りほどき、ギャーギャー言っているカナとナツキ様ファンクラブ会員を置いて、一回ため息をついて帰る準備をするためにその場を離れていきました。

…まだギャーギャー言い合っている。

本当の男子に向かってキャーキャー言うのはわかるけど、まったく何が楽しいんだか。

やれやれと思っていると、誰かが近寄ってきました。


「唐川さん(私の苗字)、えっと…お疲れ」


顔を上げるとそこには藤原航治(コージ)君がいました。

藤原君は私と同じ2年生でチューバを吹いています。

実は彼も、私と同じような被害にあっているのです。

彼は私と反対にとても中性的な顔をしている美少年、また性格もおとなしく優しいので、一部女子から「フジきゅん」と呼ばれ可愛いがられています。

3年生が引退したので落ち着いたのかとも思ったけど、同期や後輩からも「可愛い可愛い」と言われています。

一部1年生からは「フジきゅんさん」とわけのわからない呼ばれ方をしています。

それでも怒らないでニコニコしている藤原君、すごい。

そんな藤原君を見てるとたまに「私と藤原君の体、入れ替わればちょうどいいのに」なんて思ってしまいます。


「お疲れ」


たまに用事があるとき話したりはするけど、そんな仲良しとまではいってないので、急に声をかけられちょっとびっくりしました。

藤原君はその後「んーとんーと…」と言い、何かを言いたいようでした。


「何か用事?」


「え、あ、うん…。ちょっと相談したいことがあって」


「相談?私に?」


「そう、唐川さんに」


パートも違うし、仲良しとまではいってないのでまたちょっとびっくり。


「…わかった。なに?」


「ここじゃちょっと…」


「…そんな深刻な相談なの?」


「…うん」


私そんな相談受けるようなキャラでもないのでまたまたびっくり。

正直頼られて相談受けるなんてちょっと嬉しいかもです。

でも…相談内容が全然想像つかない。

なんか彼と私共通の悩みでもあるんでしょうか?

あ、「フジきゅん」て呼ばれるのさすがにイライラしだしてきたとかかな。

そっか、私も「ナツキ様」と呼ばれてるから、仲間と思ってるんだな。

なるほどなるほど。

それはちょっと人前で相談するの恥ずかしいかも。

つうかオドオドしながらも一生懸命話しかけようとする藤原君、くっそかわいいな。

あー入れ替わりたい。



私と藤原君は部室の裏の外にあるスペースにやってきました。

秋になってこういう建物の影は日陰になってちょっと肌寒い。

時間はもう18時なので余計に寒い。


「で、相談ってなに」


「んーっと、えっと」


「…」


「モゴモゴ…」


「…「フジきゅん」て呼ばれるの、我慢の限界なんでしょ?」


「へ?」


「わかるよ、私も「ナツキ様」なんて呼ばれてからかわれてるし。でも、ホントに嫌ならちゃんと言うべきじゃないかな」


「えっと…」


「後輩からも言われると、さすがの藤原君も怒るよね」


「…」


「ちゃんと、言ったほうがいい」


「…違う、違うんだ」


「え?」


「そういうことじゃないんだ」


え、違うの?

じゃあ何?

全然想像つかない。

藤原君が私に相談って…?


「んーっと、んーっと」


「…」


「んーっと、んーっと」


「…」


「んーっと、んーっと」


「…言わないんなら、帰るよ?」


「え!ご、ごめん。言う!言うから」


「じゃあ何?」


さすがに長すぎてちょっとイラっとしたからキツく言ってしまった。

私の悪いところ。

でも私、もしかしてからかわれてるのかな。


「えっと、唐川さん…あの…俺…」


「…」


「俺、さ…」


「帰るよ?」


「ごめん!言うから!」


「ふぅ…」


「…俺、俺!唐川さんのこと、好きです!…つ、付き合ってください!」


「…へ?」


「うん…」


「…へえぇぇぇぇええええぇぇぇぇえええ!!!???」


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