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スイソーガー~小坂県立福浦西高等学校吹奏楽部~  作者: 闇技苔薄
一年生編

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第54話 結果発表ゥー!

記念撮影を終えて感想をもっと言い合いたい気持ちもあるけれど、楽器の片付けと積み込みがあるのですぐにとりかかった。

テキパキと終わらせて会場の入り口まで戻ってみると、もう最後の18番目の学校が演奏中だった。

最後くらい生で聴きたかったのだけど、演奏中の途中入場はできないのでしょうがない。

みんなロビーで中で演奏している音を聴いた。

これで、残るは審査発表のみ。



18番目の学校の演奏が終了し会場に入ると、会場の空気は期待と不安で入り混じる独特のものになっていた。

席はほとんど埋まってしまっていたので立ち見で審査発表を待つ。

18校中4校が次の県代表として東海越大会に進める。


「小坂県の高校の部の勢力図ってどうなってるんですか?」


俺は隣にいたナツキさんに聞いた。


「福浦高校と橋本深川高校はほぼ毎年県代表になってるね。残りの2枠は団子状態で毎年コロコロ変わっている。だからそこに潜り込めるかってところだね」


「はたまた大波乱が起きるとか?」


「うーん、起きるかな。今日の福浦高校の演奏は聴けてないけど地区大会のときは凄かったしね。ほら定演の時にすでに凄かったでしょ?まぁ福浦高校は盤石かなぁ」


「むむむ」


確かに地区大会のときの福浦高校は頭ひとつ抜けてるって感じで凄かった。

そこからさらに2週間、いったいどんな演奏に進化しているのか…。


「橋本深川高校はそんなにうまいんですか?」


「去年全国大会銀賞だよ」


「Oh…」


「しかも橋本深川高校も福浦高校と同じく県内トップレベルの公立進学校でね」


「うーむ、神様は不平等だ」


橋本市は小坂県内で第二位の人口の都市、ちなみに第一位は福浦市。

この2つの市は昔から仲が悪く、ことあるごとに対立してきたらしい。

今は日常ではそこまで感じないけど、そういう対立構造は今はプロサッカーに色濃く出ている。

プロリーグ3部の橋本川雅FCとAC福浦バルセイロのサポーターはアツくお互いをライバル視している。

一時期橋本川賀FCが押せ押せでプロリーグ1部まで昇格して完全に突き放していたんだけど、今はお互い3部で両者とも2部昇格を目指している。

たまに行われる小坂ダービーの盛り上がりはハンパない。

そんな2市のトップ進学校の2校が高校吹奏楽界でも凌ぎを削っているとは…因縁めいたものを感じるよ。


「あ、審査員が出てきた!」


審査員と連盟の理事さんたちが舞台に並び、各校の生徒代表も登壇してきた。

審査員のあいさつと講評を若干ウズウズしつつ聞き、いよいよ審査発表。

まずは各校の賞の発表が始まった。


「1番…」



「12番、橋本風悦高校、銀賞シルバー」


あぁぁとため息が聞こえる。

次だ、次が俺たち福浦西高校の番だ。

金賞ゴールド!金賞ゴールド!金賞ゴールド!金賞ゴールド!金賞ゴールド!金賞ゴールド!


「13番、福浦西高校…」


ゴクリ、息を飲む。

ドクンドクン、心臓の音が聞こえる。


「金賞ゴールド!」


「きゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


俺も「よっしょあ!」と声を上げてガッツポーズをした。

来た!来た来た!

金賞ゴールド!

ユリと目が合う。

俺もユリも一瞬笑顔で見つめ合ったあと、お互いなんだか恥ずかしくなってプイッと目を逸らした。

…何はともあれ金賞ゴールド!

カナさんとナツキさんは笑顔でハイタッチしているし、シオさんとミズホさんは抱き合って喜んでいる。

2人の目が少し涙目になっている気がした。

審査発表は続いているため、すぐにみんなおとなしくなったけど、みんな興奮していた。

ドクンドクン、まだ心臓の音が聞こえる。

さっきまでの緊張の鼓動ではなくて、興奮の鼓動。

行けるんじゃないか!

あんなに練習したじゃないか!

本番あんなに楽しかったじゃないか!

そんな雰囲気が俺の周りを覆いつくしていた。



賞の発表が終わった。

18校中金賞は7校で、もちろん福浦高校と橋本深川高校も金賞を受賞している。

リコピンさんのいる福浦東高校は、銀賞だった。

ウチら含めた7校のうち、4校が東海越大会に進める。

結構な確率で進めるじゃないか!というあまり意味の無い計算も気持ちがいい。

そう考えるとさらにいける気がしてきた。

いける。

まだ終わりじゃない。

明日からまたみんなで練習するんだ。

演奏は終わっているので今からは何もできない。

でもなにかしたい、しなくては、という気持ちの高ぶりで体が前のめりになる。

つい座席の背もたれに手を置いてしまい、そこに座っていた女の人の肩にちょっと触れてしまった。


「?」


「あ、ご、ごめんなひゃい」


その女の人(女子大生?結構美人)が振り向いてきたので、俺はびっくりして変な声を出してしまった。

クスクスと笑われた。

カナさん達にももちろん笑われた。

くっそ恥ずかしい。


「すみません、ウチのが」


「いえいえ。福浦西高校のみなさんですよね。演奏、よかったですよ。アツい感じで」


「ありがとうございます!」


ほら、ちゃんと観客の心に響いてる!

うれしい。

こうやって自分たちの演奏を褒めてくれるのを聞くと、本当にうれしい。

吹奏楽やっててよかった。


「あ、ありがとうございましゅ!」


興奮して噛んでしまい、またクスクス笑われた。

そんなこんなのやり取りをしていると、ついにこの時間が来た。


「続いて、来る8月28日に行われる全日本吹奏楽コンクール東海越大会への出場校の発表です!」


来た。

ついに来た。

俺たちの運命の…分かれ目。


「東海越大会へ推薦する4校を、演奏順に発表していきます!」


ドクンドクン。


「1校目、4番、橋本深川高校!」


「きゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


順当に橋本深川高校が選ばれた。

強豪校でもやっぱ「きゃああああ!!!」って言うんだなあ。

「次行けて当然」みたいな余裕があるのかと思ってたけど…いや、むしろ常連校だから「次行けないとヤバイ」的なプレッシャーがあるのだろうか。

これはこれで大変だよなぁ。

つーか橋本深川高校の演奏、聴いてみたかったなぁ。

去年全国ってことは福浦高校よりもうまいかもってことでしょ?

ぜひとも聴いてみたかった。

発表は続く。

頼む、次13番!次13番!次13番!次13番!次13番!次13番!


「2校目、8番、八代高校!」


「きゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


8番まで飛んだ!

13番が近づいてくる。

頼む、次13番!次13番!次13番!次13番!次13番!次13番!

ドクンドクン、鼓動はまた緊張の鼓動になる。


「3校目」


来い!

来い来い!

今のメンバーでもっと吹奏楽、続けさせてください!

もっとこの6人、この51人でこの課題曲と自由曲演奏したいよ。

大変なこと、苦しいこと、いっぱいあった。

でも、楽しかった。

まだ楽しみたい。

俺たちの夏はまだ…

息を飲む。


「15番、福浦高校!」



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