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スイソーガー~小坂県立福浦西高等学校吹奏楽部~  作者: 闇技苔薄
一年生編

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第43話 #地区大会反省会

吹奏楽コンクール福浦地区大会結果発表後のくじ引きにより、俺たちの県大会の順番は18校中13番目になった。

この18校の中から4校が県大会の上の東海越支部大会へと進める。



地区大会翌日、7月30日。

前日の疲れも想いも残ったまま俺たちは朝9時に音楽室に集まった。


「おはようございます。昨日の地区大会はお疲れさまでした。まずは地区大会突破おめでとう。私もひとまずホッとしています。でも、昨日の自分たちの演奏を経て、また福浦高校や他校の演奏を聴いて、みんな思うことはあったと思います。今日は全体合奏はしません。とりあえずまず私が審査員の講評を読み上げるので、各自メモ取るなりして聞いてください。その後各パートに分かれて個々の感想や反省を言い合ってください。そうそう、言い合うだけじゃなくて県大会までの練習の方針なんかも決めてください。ちなみに私の反省は本番を想定した通し練習を多くできなかったことです。通しの意識を植え付けきれなかったことで、バテてしまった人や前のめりになっちゃった人がいたこと、これが反省です。明日からは通し練習も増やしていきたいと思います。それじゃあ講評読みます」


井口先生はそう言い、5人の審査員の講評を読み上げ始めた。

大まかにまとめると以下のようなことが書かれていた。

・木管、なかなか揃っているがおとなしく金管にかき消されてしまうことがある。

・金管、人によって音はよく出ているが、個々の音が混ざり合っておらず、あべこべに聞こえる。

・パーカッション、ボリュームバランスなど正確でよいが、細かい個所の縦の線がばらけている。

・全体、情熱的な演奏でよい。ただ情熱が前に出すぎて後半演奏が前のめりになってしまった。


中畑先生が講評を読み終えると、パートごとに分かれていった。



「昨日はお疲れ様でした!無事地区大会突破できてよかったよ!ではでは早速、まず一人ひとりやれたことや反省点とか思ったこと、今後の練習方針なんかを教えて頂戴。まずは私から。講評にもあったけど、パートとしての音の融合が足りてなかった。講習会の時(第36話参照)のこと思い出して、もう一回県大会までに見直したいね。個人としては、後半テンション上がっちゃって音が乱暴になっちゃったかな。福浦高校みたいに最後までクールにいかないとね。これは回数こなして落ち着いてできるようにするってことなのかなぁ」


シオさんはそう言った後、「ほい次ミズホ」と言ってミズホさんにバトンを渡した。


「全体的に音が小さくなっちゃった。あと音の出だしが弱くなっちゃった。緊張していたせいか、大きくブレスが取れなかったから、もっと練習して大きいブレスを当たり前にできるようにしたいです」


「そうだね、ブレスが小さいと音も出せないからねー。音の出だしは、練習あるのみだね!」


次はカナさん。


「講評であった通り、音の混ざり合いがうまくいきませんでした。もっとシオさんに合わせるよう意識するべきでした。音の大きさなんかは悪くなかったと思います!ただ後半バテてアタック汚くなってしまいました。唇のスタミナやペース配分、気を付けたいっす」


「音の混ざりに関してはパート練習で意識してみんなでやっていこう。もう一度イチからね!」


次はナツキさん。


「2nd同士での意識はできていたんですが、1stや3rdへの意識が足りていませんでした。そこは改めたいです。あとは両方の曲で刻みの部分はまだ粗いと思います。旋律以外の部分のパート練増やしたいです」


「刻みが粗いの私も同意!音だけじゃなくてそういう面でも混ざり合ってないのかも。そこもパート練だね」


次はユリ。


「緊張して音が固くなってしまいました。ミズホさんと同じように大きくブレスが取れなかったことで音が悪かったように思います。あと後半アタックへの意識が薄れてしまったので、いただいた課題ももう一回取り組みたいです」


「3rdはもっとどっしりしていてほしいからね。ミズホと2人での練習増やすのもいいかもね。アタック強すぎ問題は、あの課題継続だね」


最後、俺。


「演奏序盤の音の出だしが弱かったです。これについてはいただいた課題を継続します。あとやっぱり後半のテンションに引っ張られているところです。結局テンションに引きずられてしまいました。俺も回数こなして落ち着いてできるようにします」


「…」


「…?」


「…レイジが具体的なこと言ってるーーーーー!!!!!お前ホントにレイジか!?」


「そりゃ言うでしょ!昨日考えてきたんですから!」


「いやー、ちょっと前まで抽象的でフワフワしたことしか言えなかったけど、成長したねぇ。お姉さんは嬉しいよ」


「はぁ…」


なにこれ褒められてんの?貶されてんの?

なんかみんなニヤニヤしてるんだが…一応褒められて、るんだよなぁ?


「まぁそれは置いといて…テンション上がって前のめりになっちゃうことの対策、どうすればいいんかねぇ。全体の空気感もあるから難しいね。でもやっぱり練習時間多ければ多いほど本番は安心して自信もって、冷静になれるとは思うね。それは個人も、全体も」


こうして一周し、再度シオさんのところに戻ってきた。

それぞれ思ったこと、できたこと、できなかったこと、これからどうしていきたいかを共有し、俺たちは再度想いを新たにした。


「ん!各個人の反省点と今後の練習方針はそんな感じかね。それぞれ感じたことを頭に置いて今日からまたやってこう!最後にパートとしてはやっぱり音の混ざりだね。音の質や旋律の吹き方も合わせていこう。あとさっきナツキも言ってくれてたけど、旋律以外の縦の線を合わせたり、そういう短い音の融合も課題だね。長い音は吹きながら合わせられるけど、刻みは一瞬だからね」


「「「「「はい!」」」」」


「それとやっぱレイジも言ってたけど、最後まで冷静に!ってことだよね。福浦高校なんか同じ高校生かってくらい落ち着き半端なかったよね。きっとあの本番も普段通りに吹いているんだろうね。それは井口先生がさっきおっしゃってたけど、通し練習増やしてもらえるみたいだから、そこでなんとか試行錯誤してみよう!」


「「「「「はい!」」」」」


「よし!それじゃー、ペットパート反省会終了!楽器出して、音出し始めてください。後で軽くパート練しようね」


こうして俺たちは、今日から改めて8月10日の県大会、そしてその次へ向けて練習を開始。

個々の課題、パートの課題、全体の課題、これらを楽譜にしっかり書き込みながら、個人練習を始めた。



練習終了後の部長マナミさん。


「じゃあ今日の練習は終了。わかってると思いますが明日からは合宿です!補修に引っかかる人がいなくて私はなんとか安心です。明日に備えて、あまり遅くまで残らず明日の準備してください。明日の集合時間は~…」


そう、明日から2泊3日の合宿が始まるのだ。

俺も何とか補修は免れたので合宿に参加できる。

朝から晩まで吹奏楽に浸れる、こんな楽しみなことはない!

部員と一緒に寝食も共にして仲を深めていく。

そして1日中吹奏楽に没頭しお互いにレベルを高めあっていく。

いかにも青春っぽいよね!部活モノっぽいよね!

おまけにあわよくば満天の星空の元、ちょっと開放的になった女子部員に呼び出され、


「佐々木君、星、綺麗だね」


「そうだね…」


「…」


「あの、相談事って…?」


「あの…ね」


「…?」


「私、佐々木君のこと、好きなの!」


「!!!」


「付き合ってください!(ペコリ」


「!!!!!」


みたいなことやあんなことやこんなことやそんなことやーーーーー!!!!!


「あるといいね!そんなこと!」


「カナさんは人の妄想に入ってくること禁止!!!!!」


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