第42話 金賞ゴールド銀賞シルバー
審査員や吹奏楽連盟の理事の方々、そして各学校の代表(福浦西高校は部長のマナミさんと生徒指揮者のアヤさん)がぞろぞろとステージ上に入場してきた。
客席の空気が一気にピリッとする。
始めに吹奏楽連盟の理事長の挨拶、その後審査員代表の方による講評と続いた。
正直耳に入ってるようで入ってないようで、頭の中がグラグラしていた。
結果はもう出ている。
いったいどうなっているんだろう…。
審査員代表の方が話している間に、後ろにトロフィーと賞状が運ばれてきた。
「それではみなさんお待ちかねの結果発表の準備ができたみたいですので、そろそろ講評は終わりにします。ありがとうございました」
それをみた審査員代表の方がそう言うと、ついに結果発表の時が来た。
さらに客席の空気が引き締まってきた。
吹奏楽連盟理事の方の「金賞の場合は「金賞ゴールド」、銀賞の場合は「銀賞シルバー」と言いますので~」のお決まり(?)の注意の後、各学校の結果発表が始まった。
※吹奏楽コンクールの結果発表では「金賞」と「銀賞」が似ているため、聞き間違いを防ぐため「金賞ゴールド」「銀賞シルバー」ということがよくあります。ぬか喜び防止のためですね。
1番目の学校から結果が発表されていく。
金賞の場合の歓喜、銀賞の場合の困惑、銅賞の場合の静寂、それぞれの空気と声が会場の雰囲気をコロコロ変えていく。
「6番、諸積高校。…銀賞シルバー」
「あぁぁ…」という困惑の声。
銀賞の場合、金賞の個数(ダメ金の場合もあるので)にもよるが県大会進出当落線上になることが多いのだ。
※「ダメ金」は、金賞だけど上の大会には行けない場合のことです。なかなか酷ですね。
そしていよいよだ。
俺達福浦西高校は7番、次だ。
「7番、福浦西高校…」
俺は手でぎゅっと拳を握っている。
シオさんは手を合わせ祈るようにしている。
ユリは拳を作って、ぎゅっと目を閉じている。
みんな、思い思いに結果発表を待った。
1秒ほどの静寂なのに、10秒くらいに感じた。
「…金賞ゴールド」
「…っきゃああああああああああああああああああああああ!!!」
福浦西高校から歓声が上がった。
俺も「いよっしゃあ!」と言いながらガッツポーズを作り、両隣のシオさんとユリを見て再度お互いにガッツポーズした。
ステージ上のマナミさんとアヤさんも笑顔だった。
「8番…」
結果発表は淡々と続いていく。
その言葉を聴いて俺たちは冷静になり、ほぼ全員がふーっと息を吐いた。
やった、ひとまず金賞。
次は県大会に行けるかどうかだ。
…
各学校の賞の結果発表が終わったのち、来月開催の全日本吹奏楽コンクール小坂県大会へ進む学校についての発表が始まった。
「2番、福浦吉岡高校」
まだ呼ばれない、7番はあるのだろうか。
「4番、下田高校」
近づいてきた。呼ばれてくれ。
「5番、八代高校」
そろそろだ。
俺は手でぎゅっと拳を握っている。
シオさんは手を合わせ祈るようにしている。
ユリは拳を作って、ぎゅっと目を閉じている。
みんな、ほとんどさっきと同じように思い思いに自分たちが呼ばれるのを待った。
「7番、福浦西高校」
「…っきゃああああああああああああああああああああああ!!!」
福浦西高校から再度歓声が上がった。
さっきよりも大きい。
俺もさっきと全く同じだけど、「いよっしゃあ!」と言いながらガッツポーズを作り、両隣のシオさんと「イェイ!」とハイタッチした。
シオさんは反対側のミズホさんともハイタッチしていたので、そのノリで俺も隣のユリのほうを向いたけど、
「お…」
「え…」
と微妙な感じになってしまい、「えーっと」と言いながら結局俺は手を降ろした。
こういう時、ノリに任せて行ってしまえない俺の弱虫!ウジ虫!
ステージ上ではマナミさんとアヤさんも今度は軽くガッツポーズしていた。
でも、よかった!!!!!
…
俺たちは何とか県大会に進出することができた。
リコピンさんの福浦東高校もナギサの福浦高校も金賞、無事県大会に進むことができた。
俺たちは会場の外に出て集まり、部長、井口先生から挨拶をもらって今日は解散となった。
周りは泣いている人たち、喜んでいる人たち、それぞれだった。
俺たちは明日からまた練習、練習ができるのだ。
夏休みの前半なんてもうほとんど潰れるだろうけど、まだ練習できるんだからそれでいい!
「いやぁ!無事県大会行けてよかったねぇ!」
シオさんが満面の笑みで話しかけてきた。
「そっすね!明日からまた練習大変ですー。夏休み潰れちゃいますー」
カナさんがニコニコしながら口を突き出して言う。
「えー、でもまだこれからも私やミズホと練習できるんだから、嬉しいっしょ?」
「そーですねー、まぁまぁですねー!」
「まぁまぁなのかよ!正直に嬉しいと言えー!」
シオさんもカナさんもテンション高い高い。
大きな声でわいわい小突きあっている。
「私も明日からまたみんなと練習できて嬉しい!」
ミズホさんがいつもと違いちょっと興奮気味に話すと、ユリも「私も嬉しいです!」と続いた。
「ほらー、カナと違ってミズホとユリはカワイイじゃないか!ナツキも嬉しいでしょー?」
「はい」
口数は少ないが、表情はニッコリ。
「ほらほら、ナツキも嬉しいって!カナも嬉しいんでしょ~?」
「もー、しょーがないですなぁ…すっっっっっっっっごく、嬉しいです!!!」
カナさんが拳を上げる。
そして上げた手を振り下ろし、俺のほうにピシッと指差ししてくる。
「レージは!?嬉しくないの?」
「嬉しいです!!」
「そっかそっか!当たり前だよな~!…でもシオさん、一番嬉しいのは、シオさんでしょ?」
「そうだね。私、ミズホ、カナ、ナツキ、ユリ、レイジのみんなで作り上げてきた音楽まだ続けられるの、すごく嬉しい!」
シオさんが満面の笑みでそう言った。
「ですよねー!よーしナツキ、ユリ、レージ!明日からまた頑張って、来月の県大会まで突っ走るぞ!で、1日でも長くシオさんとミズホさんと一緒に練習して、シオさんとミズホさんがなるべく受験勉強できないようにするぞー!」
「「「おー!」」」
シオさんとミズホさんは苦笑いしていたが、みんな1日でも長く練習したいと思っているはず。
「みんな、今日まで私についてきてくれてありがとう。明日から県大会まで、またよろしくね」
シオさんが改まってそう言うと、
「そうじゃないですよ」
カナさんがシオさんにそう返すと、シオさんは「?」となった。
「10月の全国大会までですよ!」
みんな笑顔になった。
やっぱりみんな1日でも長く練習したいと思っている。
まだ夏は始まったばかり、何もない夏休みにはしたくない。
シオさんは、
「うわー、それじゃ10月まで受験勉強できないじゃん。ミズホは大丈夫として、私は浪人確定だー」
と頭を抱えて笑っていた。
正直すごく楽しかった。
今日は気持ちよく帰って寝られそうだ!
「はーい!ということでじゃあ明日はまず今日の演奏の反省会からね!いろいろ言いたいこともあるもんでね!明日までに各自反省点をまとめてくること!」
今日は気持ちよく帰って寝られなさそうだ…。




