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スイソーガー~小坂県立福浦西高等学校吹奏楽部~  作者: 闇技苔薄
一年生編

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第35話 雨降って地耕す

「ユリちゃん!」


「ミズホさん!」


2人は向かい合い、見つめ合っています。

シオリ、カナ、ナツキも2人を追いかけてきました。

2人は向かい合っていますが、お互い次の言葉がなかなかでてきません。

うーんと、んーと、と言いながら、どちらから切り出せばいいのか悩んでいます

ユリちゃんに謝りたい。でも何から言っていいかわからない。あぁ、誰か話進めてくれないかなぁ…

その時、


「んひゃあ!」


カナがミズホのお尻を撫でました。


「んー、いい感触。ミーズホさん、こういうのは先輩からっすよ!後輩が言うの待ってちゃダメっすよ!」


カナはニカニカしながら撫でたほうの手をグーパーします。

ミズホはびっくりしたもののカナの言葉を聞いて「そうだね。私、また頼るとこだった」とにっこり笑い、


「ユリちゃん、今回のこと、本当にごめんなさい」


と言って頭を下げました。


「ユリちゃんが「どうして指摘してくれないんですか?」って聞いてくれた時、正直私もなんでかわからなかった。どうしてうまく仕切れなかったんだろうって。でもカナちゃんとナツキちゃんと話しててわかったの。私、みんなに甘えてた。頼り切ってた。結局誰かが意見してくれるだろうって甘えてたから、だからいざ私がメインで仕切るときにうまく指摘できなかった。ごめんね。それから、わからなかったからって黙っちゃったのも、泣いちゃったのもごめんなさい。先輩なのに黙り込んじゃってあげく泣いちゃって、ユリちゃん何が何だかわからなかったよね。イライラしたよね。本当に、ごめんなさい」


ミズホは再度頭を下げました。

目は少しだけ充血していました。

そのミズホの姿を見たユリも既に目は真っ赤。


「わ、私の方こそ、声を荒げて、ミズホさん傷つけるようなこと言ってしまって、すみませんでした。私、ミズホさんがおっしゃったとおり、何も返ってこなくて何が何だかわからなかったんです。ミズホさんの気持ち、わかってあげられてなかったです。だからってイラついていいわけないのにイライラしちゃって、つい大きな声出してしまいました。本当に、すみませんでした!」


そういうとユリも頭を下げました。


「私、もう一回頑張る。引退まで後悔したくないから。間違ったことも言っちゃうかもしれないけど、思ったこと言ってみんなで先に進みたい。それでも…いいかな…?」


「もちろんです!みんなで意見持ち寄りましょう!」


「…ありがとう、ユリちゃん。ユリちゃんのお陰で引退前に気づけた。本当に良かった」


「まだまだ、引退させませんよ!」


2人は再度向かい合い、お互いの目をじっと見ていたらなんだか感情が高ぶってきてしまい、ぽろぽろ涙を流し始めました。

そしてミズホが耐え切れず、ユリに抱きつきました。

その拍子に2人はわんわん泣きはじめ、お互いに「ごめんね」「すみませんでした」と言い合いました。

シオリ、カナ、ナツキはそれをニコニコしながら見守り、「よかったね」とアイコンタクト。

ということで、ユリとミズホは無事仲直りできましたとさ。



数分後2人は泣き止み、2人そろってシオリ、カナ、ナツキに謝罪しました。


「「ゴタゴタしてしまってすみませんでした」」


「いや、元はといえば、私が忙しさを言い訳に「ワイガヤしたい」って4月以降言わなくなったのが原因でもあるし…私もごめん」


とシオリは照れくさそうに言いました。


「私とナツキも、シオさんの代わりにユリに伝えればよかったのに伝えなかった。ごめんなさい!」


カナとナツキも笑顔で謝罪。


「ということで、ユリは声荒げたことが悪い!ミズホさんは受け身だったことが悪い!シオさんはワイガヤのこと言い続けなかったことが悪い!私とナツキもワイガヤのことユリに伝えなかったことが悪い!みーんな悪い!で仲直り!ってことで、いいっすか?」


とカナが言うと、5人はやっと笑顔になりました。

「調子いいやつ!」とシオリは笑いながらカナの頭をわしゃわしゃしました。

ユリもミズホもそれを見て笑っていました。


「やっと、いつものトランペットパートが戻ってきましたね」


ナツキが笑顔で言うと、


「おう!じゃあ改めて…ユリも、ミズホも、みんなこれからはワイガヤパート練で頼むよ!」


「「「「はい!」」」」


シオリの言葉に4人は声を合わせました。


「よしっ!これでペットパートは新たな心でコンクールに向かっていけるね!!!」


「「「「はい!」」」」


「また明日から6人で頑張ろー!!!!!」


シオリの言葉に4人は同時に何かに気づいたようで、顔が一気に暗くなり無言になりました。


「…何よ。私なんか変なこと言った?」


「…」


「…ちょっとー!何か言ってよ!」


「…6人」


「6人、そうだよ6人だよ。それが何かおかしいの?せっかくいい感じでまとまったのになぁ~」


「…今ここにいるのは?」


「ここにってカナあんたねぇ…いち、にぃ、さん、しぃ、ごぉ、ろ…5人」


「5人」


「5人」


「5人!!!」


「5人!!!!!」


「…」


「忘れてたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」



5人はバタバタと部室に戻ってきました。

部室のドアを開けると、部員はちらほらいるだけで大半の部員は帰宅していました。

その中で1人、椅子に座ってぼーっとしている男。

その男は5人の姿を見ると、若干涙目で、静かな笑顔で声を震わせながら言いました。


「5人で戻ってきたってことは、解決したんですよね?いや、その、特にシオさんから呼ばれなかったんで部室にいたんですけど、さすがにペットパートの問題を放置して1人だけ帰るのはないなー、と思って残ってたんです。その、ええ、寂しくなんかなかったですよ?たまにそっちの様子見に行ったりもしたんです。でも途中からいきなり俺入るのも、なんか違うかなー、と思ったりもして…ええとその…」


「「「「「レイジ(くん)、ごめーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!」」」」」


「もーーーーーー!!!もーーーーーー!!!」


泣き顔でスマイル。

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