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スイソーガー~小坂県立福浦西高等学校吹奏楽部~  作者: 闇技苔薄
一年生編

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第34話 楽な方に居続けるなよ?

カナとナツキは部室から出て行ったミズホを探していました。

ミズホはすぐ見つかり、部室の裏で独りすんすん泣いていました。


「ミズホさん!」


「…カナちゃん、ナツキちゃん…グスッ」


くしゃくしゃの顔のミズホは、カナとナツキの顔を見ると少しホッとしたようでした。

カナとナツキはゆっくり近づいていき、ミズホの隣に座り、ミズホの顔を覗き込みます。

あー、この人泣いてても美人だわ、ズルいわぁ。

カナはしょーもないことを思いながら、口を開きました。


「大丈夫ですか?」


「ごめんねぇ、ゴタゴタ起こしちゃって。コンクール前なのに、先輩なのに、3年生なのに、ユリちゃん怒らせちゃった…」


「いえいえ。それより何となくは聞こえてましたけど、どうしたのか教えてくださいよ」


カナがそういうと、ミズホは少し沈黙した後ゆっくりと今日の出来事(第32話参照)について話しはじめました。

ユリに指摘をしてほしいと言われたこと、その答えを返せずに黙ってうつむいてしまったこと、そのことでユリを怒らせてしまったこと。

話しているうちに感情が高ぶってきて、また泣いてしまいました。


「私、ひどい先輩だね…」


それを黙って聞いていたカナとナツキ。

ナツキが先に口を開き、


「ミズホさんは、シオさんの言ってたワイガヤな空気っていうの、忘れちゃってたんですか?」


「そうじゃないの、ちゃんと覚えてたの。覚えてたんだけど、あまり言えなかった。なんでかな…ハハ」


「言い出しづらい空気だった、とか?」


「そんなことないよ。ユリちゃんすごい真面目だし、真剣だし。ただ…」


「ただ?」


「ユリちゃんも言ってくれてなかったから…お互いに待ち続けちゃったというか…」


「お互い受け身だったってことですか」


「うん、まぁ。でも私が言わないのにユリちゃんに言えってのもひどい話だけどね。やっぱ私ひどい先輩だぁ」


ミズホは遠くを見て笑い泣き。

それを見ていたナツキが、


「ユリが受け身ってのはまぁ、でも仕方ないことではありますよね。基本的にどこの学校もパート練習って上の人がメインでしゃべる感じですからね」


「うん…そうだよね。それが普通ではあるんだよね。やっぱ私がしっかりしてないから…」


「あ、すみません。そういう意味で言ったんでは…」


ナツキは、しまった、ちょっとキツく言ってしまったかも、とちょっと反省。

その時、カナは見るからに何かに気づいたように、ポンと手を叩きました(あと頭の上に電球)。


「あぁ、そっか!」


「どしたの?」


またこいつ変なこといいだすんじゃないだろうなぁ、とちょっと不安に思いながらもナツキは黙って聞きました。


「今思いましたけど、シオさん4月以降ユリが入部してから「ワイガヤしたい」ってほとんど言わなくなっちゃいましたよね。定演とかで忙しくなっちゃったからだと思いますが。多分ユリは知らないんだろうなぁ、このこと。だからしょうがないっちゃ、しょうがないと思います」


「…そっか、確かに。それで…私も今まで受け身だった」


「ミズホさんも受け身??」


「シオちゃんに注意されてから私なりに意見は言うようにしたの。楽器経験年数が少なくても、私なりに感じたことを、いうようにしたの」


「はい、確かにあの件の後、ミズホさんも意見いってくれるようになりましたよね!」


「うん。でもそれはあくまで話を振られた時だけ。自発的には、なかなかできなくて。あとはカナちゃんやナツキちゃんが主に言ってくれてたから…私、2人に甘えてたね。心のどこかで2人が言ってくれるから大丈夫って、頼り切ってた。今までもシオちゃんが休みの時のパート練習で、カナちゃんとナツキちゃんが率先して意見を言ってくれてたんだよね。ありがとう。でも私はそれに頼り切ってた。それが当たり前だと思っちゃってた。だから、シオちゃんもカナちゃんもナツキちゃんもいないパート練習で、いきなり何も言えなくなっちゃった。何をどうしていいのかわからなくなっちゃった。ごめんね、「楽な方に居続けるなよ?」ってシオちゃんに言われてたのに…」


「なるほど、それで今回の件になったわけですね。でもそれ、ユリと話してる時に言えば、こんなことにはならなかったのでは?」


ナツキは淡々と質問します。

その通りなんだけど、クールだなぁ、とカナは苦笑いしながらミズホの顔を見ます。


「うん。私自身もなんでうまく進められないのか、その時はわかってなかった。今カナちゃんとナツキちゃんと一緒に話していて、話が整理されていって、初めて気が付いたの。ホントにありがとう」


「なるほど」


ミズホ、カナ、ナツキはそれぞれ納得。

カナは一気に声のトーンを上げ、


「んーじゃあもう一気に解決ですよ!ユリは声荒げたことが悪い!ミズホさんは受け身だったことが悪い!シオさんはワイガヤのこと言い続けなかったことが悪い!私とナツキもワイガヤのことユリに伝えなかったことが悪い!みーんな悪い!で仲直り!」


その通りなんだけど、調子いいなぁ、とナツキは苦笑いしながらミズホの顔を見ます。


「でもやっぱり私が全部悪いよ」


「ミーズホさん!そうやって一人が全部悪いってことは、そうそうないんですよ!いろんなことが重なって今回のことになったんです。ミズホさんのそういうとこ、私嫌いじゃないですけど、やりすぎちゃうと嫌味ですよ!そんなに美人でおっぱいも大きいのに、その上謙虚で…」


「何言ってんだカナは。また話が逸れだすからそこらへんでやめとけ」


「なによー、ミズホさん完璧でずるいじゃん!」


「…ふふっ…あはは、あはははは」


「「?????」」


言い合う2人を見てミズホは涙を流しながら笑いだしました。

2人はポカンとしていましたが、まぁとりあえずミズホさんが笑ったから、それでよし!と思い2人も笑いました。


「あはは、ごめんね笑って。うん、ありがとう。そうだよね。私"だけ"が悪いんじゃないよね。でも、ユリちゃんにちゃんと謝りたい。謝りに行くよ。カナちゃん、ナツキちゃん、話を聞いてくれて本当にありがとう。コンクール前にいろいろなことに気づけて良かった」


そういうとミズホは立ち上がりました。

それを見て2人も顔を見合わせ笑いながら立ち上がりました。


「ユリちゃんは、部室かな?」


「あー、あの後ユリも部室出てっちゃったんですよね。でもユリにはシオさんがついてるので大丈夫かと!」


「そっか。じゃあ安心だね」


辺りはもう日が落ち始めて暗くなってきていました。

野球部の練習も終了しています。

夕日を背に3人は部室のほうに笑顔で戻っていきました。

するとナツキが向かいからユリとシオリが歩いてくるのを発見。


「あ、シオさんとユリだ」


「2人も笑顔じゃん!シオさんうまくやったね!!!」


「ユリちゃん!」


そういうとミズホは小走りでユリのほうへ向かっていきました。


「ミズホさん!」


声を聞いてユリもミズホに気づき、小走りでミズホのほうへ向かっていきます。

シオリ、カナ、ナツキも2人を追いかけていきます。

うまく仲直り、できるでしょうか。


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