第30話 恋バナリベンジャーズ
レイジ君、最近キャッキャした浮わっついた話題ないの~?」
本日の部活が終わった後、俺が楽器をダラダラ片づけているとミズホさんが急に思いついたようにそう言ってきた。
急なことでびっくり。
でも横にいたシオさんはヤレヤレという感じで…
「また始まったよ、ミズホの恋バナしたい周期。レイジは知らないかもしれないけど、ミズホは定期的に誰かの活きのいい恋バナを摂取しないと情緒不安定になるんだよ。そして話題がないと1週間程度これを言い続けるんだよ」
「…そうなんですか…」
「で、昨日私たち、特にユリが標的にされて大変だったんだよ」
「え、ユリ恋バナあるんですか?」
「お、気になるかね?少年。でも残念。特にネタはなかった。でもミズホの先走り妄想で発作は落ち着いたと思ってたんだけど…ねぇミズホ、昨日のユリのじゃ満足できなかったの?」
「ん~、ユリちゃんに聞いたから、やっぱレイジ君にも聞いとかないとね~」
「おかわりかよ」
「なんかいつものミズホさんと違う…」
「そう、この時だけミズホはヤベー奴になっちゃうんだ。レイジ、ターゲットになっちゃったからにはすまんがちょっとだけ耐えてくれ」
「はぁ…」
「レイジ君、キラキラして初々しい感じの話題ないの~?」
ミズホは手と足をバタバタさせて恋バナをねだる。
いつもの落ち着いていて優しいミズホさんがこんなになっちゃって…当惑。
「は~いよしよし、恋バナほちいでちゅよね~。今レイジがいい感じの持ってきまちゅからね~」
「いえ…特に無いですねぇ」
「そんなわけないでしょ!!!」
ミズホさんはバーンと机をたたき、スッと立って俺の方にヤベー表情で歩いてきた。
「レイジ君。今は入学してちょっと経ってみんなある程度お互いを理解してきて人間関係作られてきているころなんだよ?クラスとかで何も起きないはずないでしょ?そんな仲良しクラスで3年間いいと思っているの?」
「…ミズホさん…なにいってるか、わ、わかんないッピ…」
「男子と女子の不器用で初々しい駆け引き!そういうの無いの!?」
「く、クラスのヤツの話でもいいんでしょうか…?」
「私が知っていれば可。感情移入しやすいから」
「…じゃあ、ダメです」
「だめじゃないの!何かないの!?」
「そんなこと言われても…」
「ていうかレイジ君、ユリちゃんのこと好きでしょ?わかってるんだから」
「へ?」
「同学年、同じ部活、同じパート。何も起きないはずがなく…」
「え?え…?」
「言い合いながらもなんだかんだ仲良くやってるじゃない!わかってるんだよ。バレバレだよ。レイジ君がユリちゃんのこと気になってしょうがないってこと!」
「はぃい~~~~~~!!!???」
おぉ、昨日の続きで再度自ら甘酸っぱい恋話を創造し、自らのエサとする。
自給自足か!
やっぱり昨日のユリの回答じゃ満足できなかったんだな。
ユリはああ言ってたけど、じゃあレイジのほうはどうなんだ?と。
もしかするともしかするかも、と。
すまない、発作を止めるためなんだ!
と思いながらシオリは黙って静観することとしました。
「ユリちゃんのこと、いつ頃から気になりだしたの?」
「いやいやいや、別に何とも思ってないです!」
「でも練習の時とかいろいろ言い合いながらも一緒にやってるじゃん」
「そらまぁ、パートのメンバーですから」
「じゃあ好きなんじゃん」
「なぜそうなる!?」
「だって男女でやってたら多少なりともそういう感情になるもんでしょ?」
「なにそれがさも当たり前みたいに言ってるんですか」
「まぁでも確かに、ユリちゃん。いいと思うよ。真面目でしっかりしてるし。レイジ君がが言うようにちょっとキツめなとこ確かにあるけど、そこはこれからどうにでもなるよ!ていうかそういうとこ込みで好きなんでしょ?」
「なんか勝手に話進み始めた!?」
「告白はいつにする?ホワイトデーとかまでいっちゃうと私引退しちゃってるし、急いだほうがいいと思うなー」
「見届けるつもり!?」
「できることは何でもするよ!相談にも乗るよ!しっかし、レイジ君がユリちゃんのこと好きとはねぇ~隅におけないね!」
「既成事実化しようとしている!」
「どんなとこが好きなの?」
「はいぃ???」
「嫌いじゃないんでしょ?一緒にやれてるってことは、認めてるとこはあるんでしょ?」
「…そりゃ…まぁ、俺よりしっかりしてるし、そこはすごいと思います。たまに口悪いけど」
「そんなとこも好きってことねーーーーーーー!!!!!」
「…(無、もう何言っても駄目だ、という表情)」
「同じパート内だって関係ないよ!練習さえちゃんとやってれば、誰も文句いわないよ!ねぇ、シオちゃん?」
「え!あ!…あぁ、そうね」
「だって!もう邪魔するものはないよ!行くしかないよ!当たって砕けろの精神だよ!」
「…いや、その…確かにそういうところは認めていますけど、別に恋愛的に好きってわけじゃ、ないですよ。ないです!」
「は?」
「だから今、告白とかそういう以前の問題で」
「…」
「…」
シオリ「(お、昨日と同じ。これで終わるか?)」
「…そんなわけ、ないでしょ!!!!!」
シオリ「(終わんなかったー!)」
「ユリちゃんだって昨日おんなじこと言ってたよ。でもそんなわけないじゃん!どうして自分の気持ちに嘘つくの?そんなんじゃ本当にあっという間に高校3年間終わっちゃうよ!?2人とも本当の気持ち伝えられないまま終わっちゃっていいの?」
「え、ユリってもしかして…」
シオリ「(あ、単純バカだ)」
「そうに決まってるじゃん。好きでもない男子のこと、あんなに注意したりいろいろ言ってくれたりしないよ!気になって気になってしょうがないんだよ。恋してるって自覚してないだけなんだよ。ていうかそれはレイジ君も同じでしょ?」
「…そう、なのか?」
「そうだよ!」
「そうじゃないでしょーーーーーー!!!」
ユリがすっ飛んできてなぜか俺を睨みつける。
冷静になる俺。
ていうか睨む相手逆でしょ?
「レイジ、別に私は、そういう、恋愛的な感情は、今はないんだからね!勘違いしないでよ?」
「お、おおお俺だって、そういう感情、今は全然ねーし!勘違いすんなよ?」
「ミズホさん、いい加減に怒りますよ!?」
「ごめんなさ~い(涙目)」
「もう!」
「ごめんなさーい、もうしないから怒らないで~」
「ほんとですよ!」
申し訳なさそうに謝罪するミズホさんを見て、ようやくユリの機嫌がなおってきた。
やれやれ、何とか収まったか。
つーか俺も完全に巻き込まれただけの貰い事故じゃん。
ユリにそんな感情、持ってねーし!!!
…
「ミズホ、ユリに怒られて落ち着いたか?」
「シオちゃんも、ごめんね。わたしちょっと暴走してた」
「そうだね、定期的にあるけど今回はなかなかでしたね」
「ごめんなさ~い」
「その割になんかニヤニヤしてるな?」
「だって、さっきの2人、お互いなんて言ってたか覚えてる?」
「そんな感情ないし、勘違いすんな!ってとこ?」
「そう。だけどちょっと違うんだよ。大事なワードが入っていたんだよ。そんな感情「今は」ないし、って言ってたんだよ!しかも2人とも!」
「お、おう…」
「つまり「今は」そんな感情ないだけで、将来的にそんな感情になる可能性を排除しない、ってことだよね!」
「まぁねぇ…」
「うわー、もうこれ確定でしょ?なんとか私たちが引退するまでに進んでほしいなぁ~」
「進むかなぁ?」
「進むよ!ていうか進むように仕向ける!」
「それはやめときなさい」
「えー…」
「仲良くなるのはいいことだけど、そこから先は若い者本人たちに委ねなさい。お節介おばさん!」
(´・ω・`)な顔をしてあきらめたミズホ。
でも2人とも楽しそう。
「2人仲良くて、よかったよね」
「そだな、男子が入るって決まったときはちょっと不安だったけど、よかったよ」
「キョウさんとは違うから?」
「うん、ていうかレイジがちゃらんぽらんでよかったw」
「わかるけどひどーいw」




