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スイソーガー~小坂県立福浦西高等学校吹奏楽部~  作者: 闇技苔薄
一年生編

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30/125

第28話 (野球応援で全力で吹いちゃ、)いかんのか?

いかんでしょ。

今月末はコンクール地区大会ですよ、音割れたらどうするんですか?

でも野外で、しかもあんな広い開放的な場所で吹いたらさぞかし気持ちいいだろうね(ニッコリ)。



本日は快晴、腹立つくらいの快晴、しかも蒸し暑い。

こんな日に文化祭の片づけをしなくて済むのは嬉しいけど、今日は野球応援なので太陽の下で楽器を吹くことになりました。

福浦西高校の野球部はハッキリ言って弱い。

部員は18人で紅白戦がギリギリできるくらい。

去年は初戦で13-2で5回コールド負けだったらしいので、野球に全く興味のない吹奏楽部女子は喜んだらしい。

あまり勝ち進まれると自分たちのコンクールに支障が出てくるし、コンクール出場できない部員で2軍を作れるほど部員はいない。

また野球応援頑張ったところでコンクール時に野球部が応援に駆けつけて、率先して拍手したり「ブラボー!!!」言ってくれるわけでもない。

おまけに肌も焼けるし、汗もかく。

とまぁこんな感じで福浦西高校の吹奏楽部の大多数はそこまで積極的に野球応援したいとは思っていない。

全国の野球部のみなさんごめんなさい、こっちも大会あるんです…。


「っしゃー!!!青いビニール傘もオレンジのマフラータオルもメガホンも持った!楽器も持った!準備ばんたnべし!!!」


「レイジうっさい」


「シオさんテンション低いですね♪」


「すっげーな、定演の時よりもイキイキしてるんじゃないの?」


「そんなことないっすよ、んふふ♪」


俺はこれまでにないくらいテキパキとバスに楽器搬入をしている。

ユリに「それいらない。置いていきなさい!」とキツネの耳と謎の魚人形を注意されたとき以外は満面の笑み。

仕方なく最小限の応援グッズのみを持ってバスに乗り込み、いざ試合の舞台である小坂県オーリンビッグスタジアムへ向かう。

第二試合なので午前中に試合開始、すでに日差しは強く気温も高い!

みなさんも熱中症には気をつけましょう。



バスが球場に到着すると楽器等を降ろし、内野席の外に待機。

スタジアム内部を見てみると第一試合は8回表、少しの時間があるので部員はそれぞれ応援の準備や各々の応援曲の確認、また女子は入念に日焼け止めクリームを塗りこみました。

「○○ちゃんは肌白くてうらやましいね」「えー、でも日焼けすると目立つし、日焼けしても赤くなっちゃうから…日焼け止めしっかり塗らないと!」という女子力アップトーク、それを耳にした男子達はそれぞれ「よーしじゃあ俺が日焼け止めクリーム入念に塗りこんであげちゃうぞー!」と思いましたが危険なので口には出しません。

女尊男卑のこの世界は、一言で居場所を失うのです。


アッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーホアァァッーーーーーー!!!

試合開始のサイレンが鳴り響き、いよいよ福浦西高校野球部の夏が始まる。

福浦西第一回戦の相手は福浦工業高校、去年は3回戦敗退と強豪校とまではいきませんが福浦西よりも戦力は断然上だ。

長打はないが俊足の選手が多く、盗塁やエンドラン、バントやスクイズを多く仕掛けてくる。

一方福浦西は打線に繋がりがありそこそこ得点はできるが、守備とメンタルに不安がある。

投手が崩れ始めると連鎖的に守備にもミスが出てしまうため、ランナーを極力出さないことが勝つための絶対条件。

客席の応援団から「さぁ試合開始です!応援の方も、吹奏楽部の方も暑い中ありがとうございます。応援オナシャース!」との一言があり、いよいよ試合開始。

さぁ先攻は福浦工業、福浦西のピッチャー渡辺、第一球を投げました!


ここからはダイジェスト。

1回表:福浦西の先発渡辺、不安定な立ち上がりから福浦工業先頭バッター赤星に四球、盗塁。

    二番藤本は死球、三番沖原がバントで4番バッター新庄に2点タイムリーツーベース。

1回裏:福浦工業先発の藪が無難な立ち上がりで三者凡退。

2回表:福浦西渡辺がようやく落ち着き、0点に抑える。

4回裏:福浦工業藪にノーヒットに抑えられていた福浦西打線だったが、一番西岡がセーフティーバントで出塁。

    打線がつながり三番今江がライトーオーバーの2点タイムリースリーベース。

    打線がつながりこの回4点をとり逆転。

5回表:福浦工業六番平下が四球で出塁、七番松田バントの構えを見せると福浦西捕手里崎が捕逸。

    その後もサード今江の悪送球などミスが続いてしまい、この回5失点で渡辺は降板し薮田に交代。

    しかし残ったランナーを返してしまい、さらに2点を奪われる。

7回表:薮田が二死満塁のピンチを迎え、小林にピッチャー交代。

    ファーストフランコのトンネルで2点取られる。

7回裏:福浦工業投手を遠山に交代も立ち上がりが悪く連打を許す。

    さきほどエラーのフランコ、サブローが連続タイムリーで2点返す。

9回裏:福浦工業投手を葛西に交代。

    福浦西高校二死二三塁のチャンスを作るが、四番フランコが大きな外野フライで試合終了。


---------------------------------------------

福浦工業:200 070 200|11

福浦西 :000 400 200| 6


勝:藪(福浦工業)

負:渡辺(福浦西)

---------------------------------------------



「よく頑張ったぞおおおおおお!去年のコールドからすげー進歩だあああああ!来年は勝てるぞ!!!」


フェンスにしがみつき福浦西高ナインに激励の言葉をかける俺達数名、熱いぜ!

「あー終わった終わった。暑いし疲れた。つーか点の取り合いで試合時間長かったし」とさっさと片づけを始めるその他。

結局点の取り合いになり試合時間は長引き、それに伴い演奏時間も増えました。

特に福浦西は負けはしたがヒットは打つため攻撃時間は長く、暑い中ヒッティングマーチ等演奏時間も長くなったため演奏者の疲労はかなりのものだった。

作者の都合で試合中の描写はダイジェストになりましたが、疲労はかなりのものなのです。

疲労はかなりのものなのです(迫真)。

コンクールも近いので全員少しセーブしながら吹くことを意識していましたが、野球場という障害物が少なく開放的な場所なので知らず知らずのうちに本気で吹いてしまい、俺なんかはヘトヘト。

試合中何度もシオさんやユリに注意されていましたが、唇もジワジワ。

ただ俺はとても清々しい表情でしたとさ。



帰りのバスにて…。


「な、ん、で、レ、イ、ジ、は、ぜ、ん、りょ、く、で、吹、く、の、か、な!?」


「シオさん、観ましたか?マウンドでは選手たちが全力で戦っていました。彼らは観る者に感動と勇気を与えてくれました。その気持ちに少しでも応えたい、その想いが俺を奮い立たせたのです(キリッ」


「わーすごーい」


棒読み、ドン引き。

全力で吹いたことよりも今のくっさいくっさいセリフはこちら。

ただとても真面目な顔をして話すレイジを見て「もしかして真面目に言ってる?そうだとしたらあまり否定するのもダメかな?レイジが野球好きなのはホントだし、その気持ちまで否定しちゃったらかわいそうかな。そこまで真剣に野球が好きで、純粋に好きで…それで想いが抑えきれなくなって全力で吹いちゃったとしたら…気持ち理解してあげた方がいいかな。しっかし、なんて純粋な少年のような目」と思ったシオリはそれ以上何も言えなくなってしまいました。


「あ、シオさん?ちょっとー、ちゃんとツッコんでくださいよ~。全力で吹いたのは謝りますから、黙らないでくださいよ!ハズカシー」


「実家に帰れ!!!!!」


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