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第12話 ナイナイばっかでキリがない

現状はそんなんで。


本日は定演の第二部、太河ドラマの曲の一曲目と二曲目、「真田虫」と「龍馬、で~ん」の全体合奏。

俺としては太河が吹けるだけで満足なんだけど、なんと俺この二曲両方1stなのだ。

ってか1~4曲目まで1st続くんですけど…1年生にこの仕打ちは酷すぎる。

まぁ邦人作曲家マニアなんで譲らないけど。

というわけでこの二曲をいっしょに1stをやっていただくミズホさんと、全体合奏が始まるまでパート練をやることになった。

正直カナさんやシオさんとはよく話すんだけど、ミズホさんは横でいつもニコニコ笑って見てる感じなんであまり直接話したことがないんだよね。

ドキドキ。



「んと、じゃあまず「真田虫」からやろうか?」


控えめながらミズホさんが練習を進めはじめた。

カナさんやシオさんのガンガンいく進行とは正反対、あぁ、癒される。

メトロノームに手を伸ばし、テンポを合わせ、メトロノームがカチカチと鳴り始める。

アイコンタクト、俺が頷くと、


「1、2、3…」


ゆっくりと曲を吹き始める。

この曲はボリュームは控えめながら綺麗な旋律が続き、最後にドカン!とメインのメロディが来るタイプ。

もちろんトランペットもなるべくやさしい音で、ただし埋もれないように(といっても主張されすぎても木管に嫌な顔されるんだけど)。

う~、このゆったりした旋律を2人で合わせるのはなかなか難しいな。

2人息を合わせて…2人の共同作業…ポッ。


「え…っと、レイジ君、いいかな?」


「は、はいいいぃぃぃぃいいいいぃいぃいいいぃぃ!?」


「私が吹いてるとこで変なとこでもあった?なんか考え事してたみたいだけど」


「い、いやいやいや、全然そうじゃないっす!すみませんっす」


「あ~、でもいろいろ言ってくれると嬉しいかな。私よりレイジ君のが経験年数多いし」


エヘヘ、と笑うミズホさんは美人なんだけど、なんか変。

2年も上なんだから、もっとボロクソに俺のこと言ってもいいのに(むしろ言って欲しい)。

「いや、全然そんな俺なんか…」と言うのが精一杯でしたが、なんてーの?この奥歯にスルメが挟まって、舌や人差し指でぐりぐりしてもなかなか取れない感じ。

経験年数って今気にするところかな。

高校から始める人はやっぱ気にしちゃうところなのかな。

多少の疑問を感じたまま練習は進んでいった。

その後もミズホさんはたびたび「~はこうしたほうがいいと思うんだけど、どうかなぁ?」とか「ごめんね、今のところ私ミスっちゃった」みたいな感じの言葉を発し、終始控えめな感じでパート練は進んでいきました。

なんかこう、控えめな性格とは違う何かがあるんだけど…?



本日の練習が終わり、シオさんに今日のことを聞いてみました。


「あ~、ミズホは高校からペット始めたじゃん。経験年数なんかもあって自分の音に自信ないんだわ。だからお前達1年にもあんな強く言わないんだろうね」


「んー、全然ヘタじゃないと思うんですけど…むしろ凄くキレイな音だと思うんですけど」


「そーなんだよなー。本人が思ってるほどヘタじゃないんだけどなー。前もって「レイジのこと、泣かないくらいにボッコボコに言っていいから」って言ってあったんだけどな」


「そんな残酷なこと言ってたんですか…」


なんとか解決できないものか、と悩んでみますがよく考えたら俺だって自信持ってないし。

自信ってなんだろーか?

なんかやっぱ褒められたら嬉しくなるし、何回も練習して出来るようになったら嬉しくなるし。

そんなことの積み重ねなんだろうけど、なんかよくわかんない。

完璧な根拠のある自信なんてものはプロでもなかなか持ってないだろうし。

実感があるかないか、くらいなんかな?

よくわからん。

って後輩にこんな心配されてるのもイヤだろうし。

う~ん。


「ミズホさんのこと知りたいの~?」


ずいっと横から顔を覗き込んでくるのはカナさんでした。

目をキラキラさせながらこっちを見ています。


「えー業務連絡、業務連絡。パートリーダーのシオリです。申し訳ございません、読者の皆さん。これからカナのせいで話が逸れる可能性がものっすごい高いですが、ご了承ください」


業務連絡終了。

以下、カナさんによるミズホさんの考察とそれに対する俺とシオさんの全く同じ感想。


「でもレイジがミズホさんのこと知りたがるのもわかるわ~。女として超魅力的だもん」


「別にそんな話はしてないんでs」


「いや~、私が男だったら絶対惚れるもん。スタイルいいし、胸大きいし、キレイだし、何よりあの優しい笑顔が…ハァ、たまんないよねぇ」


まぁここは否定しない。


「成績もいいし、甘えさせてくれるし、意外にドジっ子だし、まさにペットパートのお姉さん!」


先輩相手にドジっ子って言うなよ…。


「料理も上手そうだし、仕事から帰ってきたら「お帰りなさい、アナタ。ご飯にする?お風呂にする?それとも…」って言われたい!」


考えが完全にオヤジだ、しかも料理が上手そうってのはあくまでカナ(さん)の想像だし。

実際はどうなのか知らん。

でもめちゃめちゃ上手か、めちゃめちゃ下手か、どっちかだな。

中途半端はダメだ、そうであってほしい。


「あーもう絶対ペットパートのお母さん的立ち位置ですよね!シオさん」


こっちに話振るなよ、しかもさっきペットパートのお姉さんって言ったのさっそく忘れてるし。


「うらやましいわぁ。私に無いもの全部持ってるもん!私もあんな風な女性になりたいわぁ…ハァ」


うん、そうだね。ミズホ(さん)とカナ(さん)はまさに正反対だもんね。


「えー、でも私カナちゃんみたいになりたいよ?」


ミズホさんがそう言いながらこっちに向かってきた。


「え?カナに憧れてるって、ミズホお前何考えてんの?」


「あー!シオさんひどい!私の全否定じゃないっすかぁー!!!」


後ろからシオさんに抱きつくカナさん。

ブーブー言いながら、顔を(`ε´)みたくさせている。

「あーもう、くっつくな!」と言いながらシオさんはカナさんを払いのけようとするがカナさんは離れない。

最初の頃は「マジでケンカになるんじゃないの?」って思っていましたが、最近はもうこの光景にも見慣れてきました。

たぶんじゃれ合ってるだけです(たぶん…シオさんは知らない)。


「カナちゃんみたいな積極的で明るい性格には私憧れるな」


「ミズホ、お前天使か?あの性格を良く解釈しすぎだろ。ただうるさいだけd」


「ひーどーいーでーすぅー!」


さらにギュっと抱きつくカナさん。

たぶん、たぶんじゃれ合ってるだけですって!


「あ、そだ」


そう言って俺のほうを向くカナさん。


「レイジがいくらミズホさんのこと知りたがってても、たぶんもう入る余地ないよ?彼氏いるから」


「そ、そういう話してるんじゃないんですー!…ってマジですか?」


「そだよ。ミズホさんはサッカー部の部長さんとラブラブなんだよ?部長さんがまたかっこいいんだぁ~」


「まさにフク西のスーパーベストカッポー!」とか言いながらキャアキャアとなぜか嬉しそうに話す。

女子ってのはやっぱこういう話好きなんだろうか。

いや、でも若干気になるが…ミズホさんは、その部長さんと…イヤァアアアァアァアアァ…。


「ミズホぉ~、ああいうなんでもかんでもベラベラしゃべる積極性も憧れるのか?」


「ウフフ。ちょっとカナちゃんのこと注意して来るね」


「おつ」



にゃあああぁぁぁぁああああ、ごめんなさいいぃぃ!

そんな、そんな顔しないでくださいぃぃい、いつもの、いつものミズホさんの優しい笑顔見せてくださいよぉおおお!

あ、ああ、あああああ…そんな黒い笑顔じゃないですぅううう…ベラベラしゃべって、す、すみませんでしたぁあああぁああ!!!


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