第123話 西川柚希の趣味事情
私の名前は西川 柚希!
今年度から福浦西高校に入学しました。
中学生の時から吹奏楽部でトランペットをやっていたので、絶対に高校でも吹奏楽部に入ってトランペットを続けたいと思ってます。
トランペット希望者ぴったりの人数だといいなぁ…希望者多すぎて別の楽器にコンバート、も全体のこと考えたらしょうがないいんだろうけど、でもやっぱりできればトランペットやりたいなぁ。
逆に希望者私一人だけだったら寂しい。
程よい感じに収まるといいよね、こういうの。
ちなみに趣味はいわゆる「オタク」趣味で、「腐ってる」方もかなりいけるクチであります。
休日はファンアートを描いてSNSに細々とアップしたりしていますが、バズるまでは全然いかないです。
ただやっぱリポストや「いいね」が複数つくと嬉しいもんですよ。
今までいろいろなアニメ・マンガを貪ってきましたが、最近の自分の中での急に流行りだしたのは「特撮」になります。
どちらかというと「巨大特撮モノ(光の巨人系)」がマイブームです。
「等身大特撮モノ」ももちろん履修はしておりますが、どちらかというと今のブームは光の巨人です。
奴らは凄いですよ?
人間が変身するのは当たり前なのですが、その人間だけではなく光の巨人自体が自我を持ってしゃべっているのですよ!
しかもそれぞれキャラも「お兄さん系」「悪ガキ系」「お坊ちゃん系」「神秘系」等いろいろ揃っており、その光の巨人達がペチャクチャしゃべったりしゃべらなかったりするんですよ!
彼ら自身の独自のコミュニティがあるんですよ!
しかも私のお気に入りの「ゼノ様」っていう「悪ガキ系」キャラなんですが、昔はワルくてオラついていたけど最近は後輩が増えて段々と大人になってリーダーとしての自覚が出てきてたりしてさ!後輩みんなに慕われてさ!なんだこれ!
しかもマルチバースでそれぞれの作品の世界が繋がっており、過去作のキャラも現役ってとこが凄い!
「〇〇の息子」なんて関係性もあって、うちのお父さんもおじいちゃんも観てたとのことで、3世代で楽しめるコンテンツなのです!
最近はたまにヒーローショーとか握手会・撮影会にも足運んでます!
もちろん子供たちの邪魔にならないように後ろの方でね!
子供たちが目を輝かせながらショーのお姉さんと一緒にする掛け声、あれでしか摂取できない栄養分がある!!!
…。
すみません、話を最初に戻します。
じゃあ吹奏楽部じゃなくて漫研とかそういうとこ行かないの?って思われるかもしれませんが、吹奏楽も大好きなのであります。
そこは別腹なのです。
福浦西高校に入学し、いよいよ今日から部活見学が始まります。
入学式の時のチラシも貰ったけど、貰うまでもなく吹奏楽一本で考えてます。
トランペットやれるといいなぁ。
で、みんないい人だといいなぁ。
で、オタク趣味に理解ある(というかバカにされない)といいなぁ。
入学式で聴いた演奏のトランペット音色綺麗だったし、楽しみだ!
…
「よく来た!君は今年のトランペット希望者第一号だ!ていうか初日から一人も来なかったらどうしようかと思ってた!マジでありがとう!」
なんかめちゃくちゃテンション高くてトランペットパートっぽい先輩がニッコニコでこちらに向かってくる。
となりにはもう一人、すごくクールでイケメンな感じの女子の先輩。
テンション高い先輩は私の手をグイっと掴んで強制握手しながら、
「ようこそ福浦西のトランペットパートへ!私はパートリーダーの益田加奈です!お名前は!?どこ中出身!?トランペット経験はある!?」
いきなりめっちゃグイグイ来るのでびっくりして何も答えられず…アワアワしてると横のイケメン先輩が助け舟。
「いきなりそんな質問責めしたらびっくりするだろ?ごめんな、こいついつもこんな感じなんで気にしないで」
「は…はひぃ」
「私はペットパート3年の唐川夏樹といいます」
「あ、えと、西川柚希です。黒木中でトランペットやってました…」
「おぉ!黒木中!魂の演奏!黒木中ってことは…金管で言うとテューバの藤原の後輩か!あと妹のこよみんとか!」
「あ、そうです。藤原さん達の後輩になります」
「なるほどなるほど!藤原から聞いてたんだ!黒木中のトランペット経験者が1人ウチ入学したって!もちろん入ってくれるよな!?いや、もしかして今他の部活と迷ったりしてる?」
「いえ全然。枠があるのであれば、ぜひとも入部してトランペットやりたいです」
「よしよし!まずは1人ゲット!うちは今3年2人、2年2人の4人体制なんだ。1年生も2~3人は入ってほしいから、もう今から入部届出しなさい!」
「でも私以外にもトランペット希望者いっぱい居たらどうしましょう…私そんな全国大会経験者でもなんでもないですし…」
「がはは!それはその時!自信を持てー!」
「パートリーダーがこういうノリなんで最初は疲れるかもしれないけど、悪い雰囲気ではないよ?」
「お!いつもポーカーフェイスのナツキが珍しく愛想よくしようと頑張ってるな!もっとスマイル!藤原と二人っきりのときみたいに!」
「うるさい!」
藤原と二人っきりのとき???
「え、まさか!?」
「おぅそうだ!ナツキは藤原と付き合ってんだぞ!」
う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
あの中性的で大人しくて優しい藤原さんにこんなイケメン彼女が!!!
いいカップリングだ!い~いカップリングだ!
てかカップルのビジュ良すぎ!
「私のことはどうでもいいだろ!」
「おーい、ユリ!レイジ!1年生の入部希望者が1人きたぞー!あ、あの2人がペットパート2年生ね」
向こうから2人近づいてくる。
あの2人が2年生の先輩か。
「2年の松川由梨です。よろしくお願いします」
「あ、2年の佐々木玲人でっす」
「西川柚希と言います。よろしくお願いします」
「ねー、2年生は2人とも真面目なの。もっとスマイル!ナツキだって藤原と二人っきりにのときみたいな笑顔にしようと頑張ってんだから!」
「だから私のことはどうでもいいだろ!ていうか主役は西川さんでしょ?」
「おぉそうだった!」
それから5人みんなで少しの時間私の中学時代に演奏した曲や経験を話した。
「へぇ~、私もその曲やりたかったー!」とか「マーチングやってたんだ!あれ難くね?」とか「あの先輩知ってるー」とか。
話してみたけど、すごくいい雰囲気。
私このパート、やっていけそう!かも?
…
「ちなみに趣味は何なん?」
「あー、えーっと…そのぅ…アニメとか、マンガとか観るのが好きで…」
「ほうほう、最近だとどんなん?」
あー、難しいぞこれ。
お茶を濁したりウソついて後でボロが出ると気まずいし、かといって洗いざらい全てを(オタク特有の早口で)話して引かれるのも辛い。
いい塩梅で…しかも「特撮」ってなかなか説明が難しいんだよな…。
ちなみに描いてることは絶対内緒にする。
恥ずかしいというわけじゃなく、これに関しては匿名でネット世界でやり続けたいので。
どうすっかなぁ…このパートで居づらくなるのは絶対に嫌だけど、趣味バカにされたり引かれたりするのも嫌だ。
うーんと、うーんと。
「あ、それゼノ…」
はい見つかったー!鞄につけてたゼノ様のゼノスラッガーのアクリルキーホルダー佐々木さんに見つかったー!
キャラ自身じゃなくてアイテムだからさりげなくて大丈夫かな、と思ったけど、やっぱわかる人にはわかるのよね。
ていうか理解者見つかるの早すぎ!
あぁでも待てよ?男子なら理解してくれるか!?逆に理解されすぎてキモい感じにならないか?
どうする?どう返す?てかどう被せてくるのか?
「ゼノかぁ。俺も昔映画観に行って変身グッズ買ってもらったなぁ。今でも十分通用するカッコよさだよなぁ。何気に今期のオマガも観てる」
「あ、これ特撮のもんなん?」
「そうっす!ゼノはブーム終わって停滞していたシリーズを一人で支えて盛り返したといっても過言ではないのです。長期に渡って活躍してるので、人気が幅広いんです(若干の早口)」
「へぇ~、西川さんホントは特撮好きなの?」
「あ、いやそのマンガアニメが好きなのは本当なんですけど、最近は特撮ブームが来てるっていうか…」
「はぇー、ごめん。私は正直特撮はまったくわからん」
「えー!カナさん特撮と言ったら広くいったらあれですよ。カナさんがこの前かっこいいって言ってた高橋光哉、あの人特撮出身ですよ?ゼノワン」
「え!そうなん?つーかユリ詳しくね?あぁそういやユリ高橋光哉好きだったよな」
「…偶然ゼノワン目に入って一目ぼれして…そっから追っかけてます。テレビシリーズと映画も観ました。そのあとも出てるドラマとかほとんど観てます」
「マジかよすげぇな。完全に推しじゃん」
「ライダー系はシュッとしたイケメン俳優が多いんですよー。ゼノワンはサブの人もかっこよかった。あぁ、西川さん的にはそういう俳優目当ての見方は邪道?」
「そんなことないです!私も特撮出身の若手俳優さんが後々活躍してるとテンション上がります」
その後何だかんだ特撮系から俳優の話でそこそこ盛り上がってしまった。
カナさん→特撮はさっぱりわからないけど、特撮出身俳優の雰囲気は好み
ユリさん→ゼノワン以降ライダー系をちょくちょく観ている。高橋光哉が推し
レイジさん→光の巨人系ガチ勢
そしてナツキさん→意外にも小さいころ戦隊系をちょくちょく観ていたそう
よかった、否定されることもなかったし、微妙な空気になることもなかった。
カナさんは「特撮全くわからん」スタンスだけど、話を聞いてくれて、程よく関心持ってくれて、話してて楽しかった。
私のことを尊重してくれて、居心地悪くない。
ここでみんなと吹奏楽出来たら、楽しそう。
でも私も暴走だけはしないようにしないとな!
…
「げ!もうこんな時間!いろいろ話しすぎちゃった!つーかここは特撮研究会じゃないんで!吹奏楽部なんで!」
「確かにー」
「どうよ西川さん、いきなりこんだけ関係ない話しちゃったけど、まだトランペット希望に変わりは無い?」
「無いです!ぜひ、入部したいです!ていうか今から少しでも楽器吹けたら吹きたいです」
「だよなぁ!見学初日に特撮話して終わったらわけわかんないよな!」
「はい!」
音楽室に置いてある予備のトランペットを借りて久々に少し吹いた。
自分の楽器とは少し感触が違うけど、この抵抗感が懐かしい。
部活引退後は受験勉強で全然吹かなかったなぁ。
いや、ちょっとは家で吹いたけど、こんなに堂々と音を出したのはすっごく久しぶりだ。
やっぱ私トランペット好きだわ。
またこれからトランペット吹けるといいな。
いや、ぜひとも吹きたい!
希望者がいっぱい来たって、簡単には手放さないぞ。
ホワイトホールがぁ、吹き荒れるぜぇ!!!
「明日も見学来ていいですか?」
「もちろん!てかもう迷い無いなら毎日来な?明日自分の楽器持ってきちゃえば?」
「はい!」
さすがにちょっと早すぎる気もするけど…そう言ってもらえてありがたい。
明日以降トランペット希望者がわんさか来る可能性だってあるから、できる限り毎日来よう!
で、居場所キープすっぞ!
…
ということで、家に帰ってから自分のトランペットを久々に出して、洗って、オイルとワックスでメンテナンスした。
最近放置しててごめんよ。
この感じ懐かしいな、また明日からキミを吹くことができそうだ!
まだトランペットパートって決まったわけじゃないけど…明日からまたよろしくね!
私のビッグバンは誰にも止められないぜ!