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第114話 それは、突然、嵐のように・・・

3月終業式前日、もう数日たつと4月に入る。

つまり俺たち2年生になるわけなんだけど、正直まだ実感がわかない。

3月の期末テストも何とか(めっちゃギリギリ補講免れた)乗り切ったので無事に2年生にはなれるのだが、なんかこう、もうすぐ後輩ができると思ってもとなんか実感がわかない。

逆にユリは毎日アワアワしている。

カナさんに「シオさん達に大丈夫って言われてたでしょ!?」と言われても、「そりゃそうですけども…やっぱちょっと心配ですよぉ」と毎日言っている。

4月になって教室が変わったら実感出てくるんだろうか?



今日は練習の前に来年度の定期演奏会の曲をいくつか決め、これでアンコール以外の曲はすべて決まった。

来年度の定期演奏会のプログラムは以下の通り。


----------------------------------------------------------------------------

第20回 福浦西高校吹奏楽部 定期演奏会 プログラム


第1部

1.行進曲「有機野菜を捧げて」(今年度課題曲)

2.吹奏楽のためのラーメント

3.フロンティア・ソニック(今年度課題曲)

4.スッペイン奇想曲


第2部 映画音楽特集

1.デュズニー・ポンティリュージョン

2.ゴズラのテーマ

3.スタジオゼブリメドレー

4.ハリウッゾ・マイルストーンズ


第3部

1.ウェイパーの主題による交響式変容

  第1楽章

  第2楽章

  第3楽章


アンコール

未定


----------------------------------------------------------------------------


第1部は今年の課題曲2曲と過去の課題曲1曲と締めの定番曲。

邦人作曲家の曲が大好物の俺としては課題曲が3曲もできて本当に最高だ。

ちなみに課題曲2曲のうちどちらかが今年度のコンクールの課題曲にするんだけど、まだそれは決まってなくて今後の出来栄えとかで決めていく。

第2部は去年の太河ドラマみたいにテーマを絞らずに、いろんな映画音楽をやることになった。

邦画、洋画、アニメ…いろんなジャンルがごちゃまぜだし大体知ってる曲なので楽譜見てるだけで楽しい。

「ゴズラのテーマ」に関しては、やっぱり去年は「ゴズラ -0.1」の大ヒットもあったし鉄板だよな!ということで吹奏楽部男子のごり押しでねじ込んだ。

あの超有名なテーマ演奏できるの、最高に楽しいわ。

低音パートが大活躍なので、あのいつも静かなテューバの藤原さんがやたらやる気になっている。

演奏の間に誰が「あれが…ゴズラ…」って言うんだろうなw

第3部は大曲「ウェイパーの主題による交響式変容」。

凄く壮大な曲でかっこよく、多数決でこの曲に決まった。

俺は邦人作曲家の曲を希望で出したんだけど今回は多数決で負けてしまったので、来年こそは!

でもこの曲もものすごくかっこよく吹きごたえがある。

カナさんがこの曲すごく気に入ったみたいでめちゃめちゃやる気になっているし、1stももちろんカナさん。

言われてみれば「カナさんみたいな曲」かもね。

ちなみにこの曲が今年度のコンクールの自由曲。

どの楽章を演るかはまだ決まってないけど、曲としてはこの「ウェイパーの主題による交響式変容」で決定。

まぁ第1楽章が鉄板だろうなぁ、とは思うけど!

そういえば去年は俺たち1年生が入ってきた後にいくつか曲を決めたりしてたので、今年はなかなかペースが早い。

井口先生主導でバンバン決めていっている。

みんなでなんとなく「今年は曲決めるの早いよね?」みたいな話をしている。

まぁ曲が決まるのが早い方がうちらとしては練習期間が長くなるので悪い話では無いんだけど…なんか理由があるのかな?



3学期終業式当日。

体育館に集まり、終業式が始まった。

いつも通りお決まりの校長先生のあいさつ。

あぁ、もうすぐこの学校入って1年経つんだなぁ。

楽しいこと、苦しいこと、いろいろあった。

でもホント、吹奏楽部入って良かったわ。

いい出会いもたくさんあったし、吹奏楽部続けてなかったら俺はただの目立たないモブで3年間終わってたわ(別に今クラスの中心人物ってわけではないが)。

入部して、定演やって、コンクール出場して、合宿やって、アンコン校内予選やって…うーん、なんかそこそこ主人公っぽくね?

楽しかっただけじゃなくて苦しいこともみんなで乗り越えてきたから、なんか他のことも頑張れた気がする。

ホント充実してたわ。

後輩もできるし、カナさん達と練習できるのもあと半年だし、来年度も充実させたい。

後は彼女だけだな…。

2年生も頑張るぞ!

そんなふうにこの1年を振り返りつつこの先のことを妄想しているといつの間にか終業式が終わっていた。


「続きまして、離任式を行います」


離任式…あぁ転勤や退職する先生のことか。

授業ではいろんな先生に会ったもんなぁ。

続々と登壇していく先生を見ながら、あ、あの先生異動するんだとか、へぇあの先生定年なんだ、とか軽く考えながらいると、最後に吹奏楽部顧問の井口先生がが登壇した。

…?

へ…?

井口先生、異動するの!?

え…?えぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!???

吹奏楽部員みんながざわついた。



井口先生は小坂県の南のほうの市の高校に転勤することになったとのこと。

入学式の演奏はどうするの?

定期演奏会はどうするの?

夏のコンクールは、どうするの?

部室に行くとそんな空気が部室全体を覆っていた。

やっぱみんな不安だよな。

顧問の先生変わっちゃうんだもん。

今までやってきた感じがガラッと変わるってことだもん。

なんでこんなぎりぎりに…まぁ異動のことだから事前に部員に話すことなんてできないなんてことくらいわかっているんだけど…微妙な怒り。

そしてその怒り以上に感じる寂しさと不安。

井口先生にもこの1年いろいろ教わったなぁ。

口調は強くないけど、厳しい人だった。

でも優しくて、たぶんみんな好きだったと思う。

今年度の定演やコンクールも当然井口先生の指揮でやると思ってたから、すごく寂しい。

ふとユリと目が合う。


「…びっくりしたな」


「…うん」


ユリはなんか寂しそうな目でブスーっとしてる。

ユリもやっぱりちょっとの怒りと多くの寂しさでごっちゃになってるんだな。

他にも何人かと話したけど、やっぱみんな同じ感じで言葉少なめ。

いつもやかましいカナさんでさえいつもよりちょっと静かだ。

悶々とした空気、みんな不安だった。

やっぱ唐突すぎだよな。



部活開始の時間になったので、みんな部室に集まる。

そして井口先生が部室に入ってきてみんなの前に座る。

いつも静かに微笑んでいる井口先生も今日は真顔だ。

何をしゃべるんだろうか。

何を思っているんだろうか。

俺たちはこれからどうしていけばいいんだろうか。

数秒の静寂の後、井口先生はゆっくりと口を開いた。



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