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第9話 「女子だもん、オシャレだって楽しみたいよね(ハート)」

どうも、俺です。

4月も中盤に入り、だいぶ吹奏楽部にも学生生活にも慣れてきた感じです。

ただもう来月後半には初めての中間試験があり、再来月には定期演奏会…うかうかしてられない。

定期演奏会の曲は楽譜が用意できているものに関しては練習し始めているので、頑張って足を引っ張らないようにいい演奏をしたい。

しかし定期演奏会はお客さんを呼んで行うものなので、ステージ装飾であったり、衣装であったり、パフォーマンスであったり、吹奏楽を詳しく知らない方々も楽しめるように「視覚」の演出が必要。

ちなみにウチの定期演奏会は入場料は取らないスタイルで、地域のお店や企業様からいただくスポンサー料で活動資金をまかなっている。

スポンサー集め、結構大変なんだよ~。



「…ということなので明日までに2部の衣装のアイディアをパートごとにまとめて案を出してください。よろしくお願いします」


演出係の先輩が帰りのミーティングでそう言った。

ミーティングが終わると各パートごとにワラワラと自然に集まっていき、俺も誰に言われるでもなくパートリーダーのシオさんの所に向かった。


「んー、なんか微妙に難しいんだけど、アイディアない?」


確かにシオさんの言うとおり難しい。

今年の2部のテーマは太河ドラマのメインテーマ。

つまり一番みんなが真っ先に頭に思い描くのは重そうな甲冑や十二単。

でもそんな費用どっから出るねん!ってことで、結構難しい。


「やっぱ、着物とかしか浮かばないよねぇ…」


とミズホさんが苦笑いしながら言い、みんなを見回しました。


「ぃや~、ミズホさんの着物姿、見たいっすねぇ」


デレデレした表情でカナさんが話を続けます。


「ミズホさんスタイルいいから何でも似合いますよ~。てかペットパートの女子はみんな細いから、みんなかわいいと思いますよ!ユリとかお尻から脚にかけてのラインがたまんねぇ~から、太もも出した感じのとかさ…」


「なんで定演で太もも出さなきゃなんないんすか!短い着物着る必要性が無いでしょ!座ったら大変じゃないですか!」


「見たい人はいっぱいいるだろーが!」


「居るわけないでしょ!だれっすか!?」


「…んー、たとえばレイジ…とか?」


「とか?じゃねぇーーー!」


と俺が横槍。

なぜかユリは俺の方を見て「…うゎ…」とつぶやきながらドン引き。


「あー、じゃあレイジがバカ殿やってさ、ユリの腰の帯を引っ張って「良いではないかごっこ」は?ユリがノリノリで「あ~れ~~~」って言ったりとか…?」


「「とか…?じゃねぇーーー!」」


今度は俺とユリの二重音声。

声が合わさった瞬間ユリと目が合い、顔を真っ赤にしてプイッと向こうを向いてしまいました。

カナさんは向こうで「ホントに仲いいのぅ~」とナツキさんに耳打ち。

ナツキさんもミズホさんも苦笑い。

シオさんは表情を引きつらせながら…


「そ…そろそろ先進んでもいいかなぁ…?」


はいすみませんでした。

シオさんの表情を見た俺とユリとカナさんは無言で正座しました。


「んと、やっぱりプリントTシャツが無難だと思います。なんかロゴをデザインして」


ナツキさんがなんとか空気を戻してくれました。


「そだよねぇ、それくらいしか正直ないよねぇ、お金もないし。…しっかし、まともに意見してくれる後輩がいておねーさんはよかったよ…」


ナツキさんの肩をポンッと叩いたシオさんの目は心の汗が光っていました。


「でもロゴも難しいよね?太河っぽくしたほうがいいかもしれないけど、そうすると色なんかも限られちゃうし、英語なんかも使いづらいよね」


ミズホさんがつぶやくとカナさんが、


「えー?可愛い方がいいっすー!グレーとかネイビーとか地味ですー!漢字で「吹奏楽」とか毛筆で書いたっぽいロゴなんてイヤっすー!」


「え、でもそれ結構かっこ良くないっすか?」


珍しく俺が参加。


「やだー!別にかっこよさ求めてないー。フェミニン系ー!大人可愛い系ー!ロリータ系でもいいですよー!男臭いのイヤー!」


「Tシャツで太河でロリータ系ってさらに難しいな、オイ!」


シオさんがツッコミ、あっさり却下。


「でも太河でフェミニン系は…いいのかなぁ?普通の感じのロゴみたいのが無難な気も…」


「ぶー、つまんないー!オシャレしたい年頃っすー!」


「でも結局太河っぽいものもフェミニンっぽいものもTシャツじゃ難しいよ。なんか安っぽくなっちゃうよ」


と、カナさんを諭すナツキさん。

その影で俺はユリに質問。


「なぁ、フェミニン系ってどんな感じの?」


「んー、フリルとかレース軽く使った、ふんわりした感じの…かな?」


「ふーん、ふわふわ…ねぇ。ロリータ系と何が違うの?」


「いや…そこまでコッテリはしてないかな。こう、胸元のアクセントにフリルをつけたりとか…ロリータをかな~り薄めた感じの…」


「胸元…(チラッ)」


デュクシ…!



「あーあーあー!もう各々うるせー!特にカナー!」


「ひぃ!シオさん怒んないでくださいよ~…って怒った顔も可愛いんですけどNE!」


「っとまぁ、じゃあもう校章モチーフにしたロゴプリントTシャツってことでいいか?」


「うぉ!スルーされた!」


他…はーい、いいでーす、うーっす、いいよ…。

カナさんに視線が集まる。


「ぶー…いいですよ。でも…Tシャツの色はカワイイ系がいいっす…」


「んー、太河吹いてるのにピンクとか…か?」


「えー、だって7曲全部男主人公モノですよ?この多様性が重視される時代によくOK出たもんですよ!だったらせめて服くらい女子高生のKAWAII出していきたいじゃないですか?!毒々しいピンクじゃなくて、淡いピンクなら全然大丈夫ですよ」


「まぁ大丈夫か」


おお、シオさんが結論を出そうとしている!


「お、俺もピンク着るんすか…?」


「もちろん!」


カナさんがニコニコととても爽やかな笑顔。


「男のピンクだって、全然大丈夫だよ!かわいいかわいい、レイジ似合うって!」


「う~ん…」


「似合うってば~!そりゃもう女子がほっとかないって!先輩が「レイジ君カワイイ」だの、同学年の子が「レイジ、似合~う」だの、モテモテだって!ユリなんかももう、「れ…レイジ、好き…」とかぁ?」


「「とかぁ?じゃねぇーーーーーーーーー!!!!!!」」



数日後、演出係より集計結果が発表された。

結果は、「真田虫」の主人公の家紋である六十六文銭と「福浦西高校吹奏楽部」と行書体でプリントされたプリントTシャツ(淡いピンク)+ジーンズに決定!

え!まじでピンクに決定したの?

カナさんは嬉しそうに満面の笑みを浮かべていた。


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